ブックタイトル令和3年度版「中学道徳 あすを生きる」内容解説資料

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概要

令和3年度版「中学道徳 あすを生きる」内容解説資料

31裏庭でのできごと171 31裏庭でのできごと170裏庭でのできごと学習の進め方問題をつかもう大だい輔すけから「俺おれを出し抜ぬいて先生のところになんか行くなよ。」と言われたとき、健けん二じはどんなことを考えていただろう。問題について考え、議論しよう次の日、健けん二じを職員室へ向かわせたものはなんだったのだろう。グループで話し合おう。自分で考えてみよう健けん二じは家に帰ってから、どんなことを考えていただろう。自分で自分の態度を決めなければならないとき、考えなければならないことは何かをまとめてみよう。自分にプラスワン132学習を深めるヒント雄ゆう一いち、健けん二じ、大だい輔すけの関係を整理しよう考えを深める視点健けん二じの「やっぱり」には、どんな思いが込こめられているのだろう。友達の意見で気になることがあれば、「もっと詳くわしく話してくれる?」のように質問してみよう。健けん二じの「もやもやしていた気分」とはなんだろう。自分の考えを発表する。友達の意見を聞く。再度よく考える。話し合いの例健けん二じボールを蹴けって、二枚目のガラスを割ってしまった。雄ゆう一いちひなを助けようとして、一枚目のガラスを割ってしまった。大だい輔すけ先生にうまく言って、きつく怒おこられずに済ませた。俺おれを出し抜ぬいて先生のところになんか行くなよ。話し合いをとおして、誠実な生き方について考えてみよう。170-171 1-31_裏庭でのできごと_進め方_190304.indd 170-171 2020/02/28 11:23:41510155101520165 31裏庭でのできごと16431裏庭でのできごとチャイムが鳴り、給食時間が終わった。食器を片づけると、校庭に向けて、みんな一いっ斉せいに飛び出していった。健けん二じは、サッカーボールをボール箱の中から取った。「健けん二じ、裏庭でやろうぜ。」大だい輔すけと雄ゆう一いちが誘さそった。「ええっ、裏庭はまずいよ。」健けん二じはそう答えてはみたものの、「またこの前みたいに、先せん輩ぱいにボールを取られたらどうするんだよ。」と大だい輔すけに言われては、返す言葉がなかった。三人で体育館の裏の「裏庭」に行くと、さすがに誰だれもいなかった。とつぜん、大だい輔すけが「あっ。」と声を上げた。「ほら、ほら、あそこ。」大だい輔すけが指さす方を見ると、一いっ匹ぴきの猫ねこが、物置の軒のき下したにある鳥の巣に侵しん入にゅうしようとしていた。巣の中には、まだ生まれて間もないひなが見えた。(ああっ、どうしよう。)健けん二じがそう思うやいなや、雄ゆう一いちがボールを猫ねこめがけて投げていた。猫ねこは、ボールに驚おどろいて逃にげた。しかし、次の瞬しゅん間かん、ガシャーンという音がした。雄ゆう一いちが投げたボールが物置の窓に当たり、ガラスがはじけた。「雄ゆう一いち、よく助けたな。」「でも、どうしよう。」「しかたないだろ。ひなを助けようとしてやったことなんだから。先生に報告しに行けばいいよ。」大だい輔すけは、ガラスを割ったことなどぜんぜん気にしていない様子だった。「じゃあ、先生に報告してくるよ。」雄ゆう一いちは職員室へ行こうとした。「雄ゆう一いち、そんなのあとでいいよ。俺おれたち、ひなの命を救うという、いいことしたんだぜ。少しぐらい遊んでも罰ばちは当たらないぜ。」大だい輔すけは、ボールを蹴けりながら、そう言った。「いや、今行ってくるよ。」雄ゆう一いちは、大だい輔すけを振ふり切って職員室へと向かった。残された健けん二じは、ガラスの片づけを始めようとした。「健けん二じ、ちょっとだけやろうぜ。」大だい輔すけは、健けん二じに向けてボールを蹴けってきた。二人は初め、軽く蹴けっていたが、距きょ離りをとって強く蹴けり始めた。そのうち健けん二じが蹴けったボールが、さっきの物置の方に飛んでいった。31誠実な生き方雄ゆう一いち大だい輔すけ健けん二じ裏庭でのできごと164-169 1-31_裏庭でのできごと_170317.indd 164-165 2020/02/28 11:21:51じゃーん!!すごーい!落ちそうに見える!カズと苦労して撮とったんだ。その写真、私にも送ってよ!あのときの写真!オッケー!そうだ!その夜よく撮とれたなーこの写真。ネットに載のせたら、最近ジロジロ見られると思ったら……。ネットに載のせるなんて言ってなかっただろ!え?俺おれが撮とった写真なのに。これ,俺おれの友達。すごくない!?すげー!!カズってこんなことするんだwみんなびっくりするぞー。一週間後あー読書感想文の宿題ができないよー。なるほど、それはいい!かなあ?そんなの簡単さ。もう終わったよ。インターネットで調べれば読書感想文なんていっぱいあるのさ。大だい丈じょう夫ぶ、ちょっと書き換かえれば問題ないよ。すぐできるよ。でもそれって誰だれかの作品じゃないの?あ!95 17使っても大丈夫?9417使っても大丈夫?17使っても大だい丈じょう夫ぶ?自他の権利と法の遵じゅん守しゅその1その2094-097 1-17_使っても大丈夫_190228.indd 94-95 2020/02/28 10:48:19道徳の時間で長年活用されてきた定番教材から、『あすを生きる』ならではの教材まで、よりよい教材を厳選し、感動・共感・思考を効果的にもたらす誌面で構成しました。p.164「31裏庭でのできごと」1年「学習の進め方」では,登場人物の状況や関係をわかりやすく図で整理しました。p.94「17使っても大丈夫?」1年文章の読解が難しい生徒も理解しやすいよう,漫画形式の教材も取り入れました。定番教材『あすを生きる』ならではの教材よりよい誌面で心に訴える30心動かす多彩な教材51015510152035きいちゃん18635きいちゃんは、教室の中でいつもさびしそうでした。たいていのとき、うつむいてひとりぼっちですわっていました。だから、きいちゃんが職員室のわたしのところへ、「せんせー。」って大きな声でとびこんできてくれたときは、本当にびっくりしました。こんなにうれしそうなきいちゃんを、わたしは初めて見ました。「どうしたの?」そうたずねると、きいちゃんは、「おねえさんが結けっ婚こんするの。わたし、結けっ婚こん式に出るのよ。」って、にこにこしながら教えてくれました。「わたし、なに着ていこうかな?」と、とびきりの笑えがお顔で話すきいちゃんに、わたしもとてもうれしくなりました。それから一週間くらいたったころ、教室で机に顔を押おしつけるようにして、ひとりで泣いているきいちゃんを見つけました。涙なみだでぬれた顔をあげて、「おかあさんがわたしに、結けっ婚こん式に出ないでほしいっていうの。おかあさんは、わたしのことがはずかしいのよ。おねえさんのことばかり考えているの。わたしなんて、生まれてこなければよかったのに……。」やっとのことでそういうと、また、はげしく泣きました。でも、きいちゃんのおかあさんは、いつもいつもきいちゃんのことばかり考えているような人でした。きいちゃんは、小さいときに高熱が出て、それがもとで手や足が思うように動かなくなってしまいました。そして、高校生になった今も、訓練をうけるためにお家うちを遠くはなれて、この学校へきていたのです。おかあさんは面会日のたびに、まだ暗いうちに家を出て、電車やバスをいくつも乗りつぎ、四時間もかけてきいちゃんに会いにこられていたのです。お仕事がどんなに大変でも、きいちゃんに会いにこられるのを一度もお休みしたことはないくらいでした。そして、きいちゃんの喜ぶことはなんでもしたいのだ、と話しておられました。だから、おかあさんは、きいちゃんがいうように、けっしておねえさんのことばかり考えていたわけではないのです。ただ、もしかしたら、おかあさんは、きいちゃんが結けっ婚こん式に出ることで、おねえさんに肩かた身みのせまい思いをさせるのではないか、きいちゃん自身がつらい思いをするのじゃないか、と心配なさっていたのかもしれません。「生まれてこなければよかったのに。」きいちゃん家族のきずなきいちゃんおねえさん187 35きいちゃん186-191 2-35_きいちゃん_170323.indd 186-187 2020/02/28 9:38:4230一冊のノート16630一冊のノート167なんだろうと開けてみると、それは、祖母が少し震ふるえた筆ひっ致ちで、日ひ頃ごろ感じたことなどを日記ふうに書きつづったものであった。見てはいけないと思いながら、つい引き込こまれてしまった。最初のページは、物忘れが目立ち始めた二年ほど前の日付になっていた。そこには、自分でも記き憶おくがどうにもならないもどかしさや、これから先どうなるのかという不安などが、切々と書き込こまれていた。普ふ段だんの活動的な祖母の姿からは想像できないものであった。しかし、そのような苦く悩のうの中にも、家族とともに幸せな日々を過ごせることへの感謝の気持ちが行間にあふれていた。『おむつを取り替かえていた孫が、今では立派な中学生になりました。孫が成長したぶんだけ、私は年を取りました。記き憶おくもだんだん弱くなってしまい、今朝も孫に??しかられてしまいました。自分では気づいていないけれど、ほかにも迷めい惑わくをかけているのだろうか。自分では一いっ生しょう懸けん命めいやっているつもりなのに……。あと十年、いや、せめてあと五年、なんとか孫たちの面めん倒どうをみなければ。まだまだ老ふけ込こむわけにはいかないぞ。しっかりしろ。しっかりしろ。ばあさんや。』それから先は、ページを繰くるごとに少しずつ字が乱れてきて、判読もできなくなってしまった。最後の空白のページに、ぽつんとにじんだインクの跡あとを見たとき、僕ぼくはもういたたまれなくなって、外に出た。庭の片かた隅すみでかがみ込こんで草取りをしている祖母の姿が目に入った。夕焼けの光の中で、祖母の背中はいくぶん小さくなったように見えた。僕ぼくは、黙だまって祖母と並んで草取りを始めた。「おばあちゃん、きれいになったね。」祖母は、にっこりとうなずいた。作・北きた鹿か渡ど文ふみ照てる『中学校読み物資料とその利用―主として集団や社会とのかかわりに関すること―』文部省による絵・岡おか田だ知とも子こ510155祖母と並んで草取りをする「僕ぼく」は、どんなことを考えていたのだろう。考えてみよう家族みんなの幸せについて、深く考えてみよう。自分にプラスワン162-167 3-30_一冊のノート_190228.indd 166-167 2020/02/28 10:51:2930一冊のノート16230一冊のノート16330一冊のノート5101520「お兄ちゃん、この頃ごろおばあちゃんの物忘れが激しくなったと思わない。」「うん。今までのおばあちゃんとは別人のように見えるよ。いつも自分の眼鏡や財さい布ふを探しているし、自分が思い違ちがいをしているのに、自分のせいではないと我がを張るようになった。」弟の隆たかしとそんな会話を交かわした翌朝のできごとであった。「お母さん、テレビの近くに置いといた僕ぼくの数学の問題集、知らない。」「さあ、見かけなかったけど。」学校へ出かける時間が迫せまり、僕ぼくはいらいらして祖母に言った。「おばあちゃん、また、どこかへ片づけてしまったんじゃないの。」「私は、何もしていませんよ。」そう答えながらも、祖母は部屋のあちこちを探していた。みんなで問題集を探し始めると、隆たかしが隣となりの部屋から誇ほこらしげに問題集を持ってきた。「あったよ、押おし入れの新聞入れに、昨日の新聞と一いっ緒しょに入っていたよ。」「やっぱり、おばあちゃんのせいじゃないか。」「どうして、いつも私のせいにするの。」祖母は、不満そうに答えた。「そうよ、なんでもおばあちゃんのせいにするのはよくないわ。」母にたしなめられた僕ぼくは、むっとして祖母に言った。「昨日、この部屋の掃そう除じをしたときに、新聞と一いっ緒しょに片づけたんだろう。しっかりしてよ、おばあちゃん。僕ぼくら迷めい惑わくしているんだ。」「そうだよ。この前、僕ぼくの帽ぼう子しがなくなったのも、おばあちゃんのせいだったじゃないか。」いつも被ひ害がいにあっている僕ぼくと隆たかしは、一いっ斉せいに祖母を非難した。祖母は、悲しそうな顔をして、僕ぼくと隆たかしを玄げん関かんまで見送った。学校から帰ると、祖母は小さな机に向かって何かを書き込こんでいた。僕ぼくは、そのときの祖母の寂さびしそうな姿が、なぜかいつまでも目に焼きついて離はなれなかった。祖母は、若い頃ころに夫をなくし、女手一つで四人の息むすこ子を育て上げた。そして、両親が共働きだった僕ぼくたち兄弟は、幼い頃ころから祖母に身の回りの世話をしてもらっていた。そんなしっかり者の祖母の物忘れが目立つようになったのは、ここ一、二年のことである。祖母は、自分はけっして物忘れなどしていないと言い張り、家族との間で衝しょう突とつが絶えなくなった。それでも若い頃ころの記き憶おくだけはしっかりしており、思い出話をするときは、目を輝かがやかせていた。ある日の学校からの帰り道。友達の一人がとつぜん指さした。「おい、見ろよ。あのばあさん。」「本当だ。なんだよ、あの変な格好は。」51015家族の在り方祖母僕ぼく162-167 3-30_一冊のノート_190228.indd 162-163 2020/02/28 10:50:17551015きいちゃんが「生んでくれてありがとう。」とお母さんに話したのは、なぜだろう。考えてみよう家族を大切にするとは、どういうことだろう。自分にプラスワン191 35きいちゃん19035きいちゃんおねえさんは、きいちゃんがぬったあのゆかたをきて出てきたのです。ゆかたは、おねえさんにとてもよく似あっていました。きいちゃんもわたしもうれしくてたまらず、手をにぎりあって、きれいなおねえさんばかり見つめていました。おねえさんは、おむこさんとマイクの前にたたれて、こんなふうに話しだされました。「このゆかたは、わたしの妹がぬってくれました。妹は、小さいときに高い熱が出て、手足が不自由になりました。そのために家から離はなれて生活しなくてはなりませんでした。家で父や母と暮らしているわたしのことをうらんでいるのではないかと思ったこともありました。でも、妹はそんなことはけっしてなく、わたしのためにこんなりっぱなゆかたをぬってくれたのです。妹はわたしの誇ほこりです。」そして、きいちゃんとわたしを呼んで、わたしたちを紹しょう介かいしてくれました。「これがわたしの大事な妹です。」式場中が、おおきな拍はく手しゅでいっぱいになりました。なんてすばらしい姉し妹まいでしょう。わたしは、涙なみだがあふれてきて、どうしてもとめることはできませんでした。きいちゃんは、きいちゃんとして生まれ、きいちゃんとして生きてきました。そしてこれからも、きいちゃんとして生きていくのです。もし、名前をかくしたり、かくれたりしなければならなかったら、きいちゃんの生活はどんなにさびしいものになったでしょうか。きいちゃんは、おかあさんに、「生んでくれてありがとう。」と、お話はなししたそうです。きいちゃんは、とても明るい女の子になりました。これが、本当のきいちゃんの姿だったのだと思います。あのあと、きいちゃんは和裁を習いたいといいました。そして、それを一生のお仕事に選びました。作・山やま元もと加か津つ子こ『きいちゃん』アリス館による絵・多た田だ順じゅん186-191 2-35_きいちゃん_170323.indd 190-191 2020/02/28 9:40:10「30一冊のノート」3年p.162発問の場面をイメージしやすいよう,適切な場面絵を添えました。2年「35きいちゃん」p.186クライマックスともいえる場面で原作絵本の挿絵を大きく掲載し,衝撃と感動が伝わるようにしました。「23バスと赤ちゃん」「28旗」「35いつわりのバイオリン」「10海と空―樫野の人々―」「15ネット将棋」「22夜のくだもの屋」「32足袋の季節」「5卒業文集最後の二行」「7命のトランジットビザ」「14言葉の向こうに」「17二通の手紙」3年2年1年その他の定番教材ほか31