ブックタイトル「中学道徳 あすを生きる」内容解説資料(別冊) 進化する学びのために

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「中学道徳 あすを生きる」内容解説資料(別冊) 進化する学びのために

3 210 520 15 10 5▲ 基き礎そ研究将来の新たな技術や素材の開発につながる仮説・理論や新しい知識を得るために行われる研究。141 25 iPS 細胞で難病を治したい 25 iPS 細胞で難病を治したい 14025iアイPピ ーSエ ス細さ い胞ぼ うで難病を治したい夢の実現「先生、生えました!」京きょう都と大学の山やま中なか伸しん弥やさんの部屋に、研究員の高たか橋はしさんが飛び込こんできました。それは、世界で初めてiアイPピーSエス細さい胞ぼう(人工多能性幹細さい胞ぼう)ができた瞬しゅん間かんでした―。二〇一二( 平へい成せい二十四)年十二月、一人の日本人がノーベル生理学・医学賞を受賞しました。世界で初めてiアイPピーSエス細さい胞ぼうを作り出した、山やま中なか伸しん弥やさんです。iアイPピーSエス細さい胞ぼうは、皮ひ膚ふや血液の細さい胞ぼうを人工的に「初期化」して作られた細さい胞ぼうです。目の網もう膜まくや心臓の筋肉など、体の中のさまざまな部分の細さい胞ぼうに変化させることができます。これまでは、ある役割をもった細さい胞ぼうを、ほかの役割の細さい胞ぼうに変化させたり、役割の決まっていない細さい胞ぼうに「初期化」したりすることはとても困難だと考えられていました。しかし、山やま中なかさんはそれを簡単な方法で可能にしたのです。山やま中なかさんはもともと、整形外げ科か医いをめざしていました。学生時代に柔じゅう道どうやラグビーに打ち込こみ、何度も骨折した経験があったからです。しかし、ほかの医師なら二十?三十分で終わる手術に二時間もかかるなど、なかなかうまくいきませんでした。また、整形外げ科かで目にした重じゅう症しょう患かん者じゃの姿も、山やま中なかさんに衝しょう撃げきを与あたえました。有効な治ち療りょう法がなく、患かん者じゃの症しょう状じょうが悪化していく現実を前に、現代の医い療りょうの限界を感じました。そうした経験から、山やま中なかさんは、重じゅう症しょう患かん者じゃや難病を根本から治ち療りょうするためには、基き礎そ研究をしなくてはならないと考えるようになりました。大学院に入り直して学んだあと、アメリカの研究所へ留学し、マウスを使ってEイーSエス細さい胞ぼうの研究を始めました。EイーSエス細さい胞ぼうは、iアイPピーSエス細さい胞ぼうと同じく多能性幹細さい胞ぼうの一つです。しかし、EイーSエス細さい胞ぼうは赤ちゃんとなる受じゅ精せい卵らんを壊こわして作られるという問題がありました。そのため、受じゅ精せい卵らんを使わない多能性幹細さ い胞ぼうが望まれていたのです。日本に帰国後、山やま中なかさんは、アメリカと日本の研究環かん境きょうの差や、なかなか研究成果が出ないことを思い悩なやみ、もう研究をやめようかとさえ考えるようになりました。そんな中、山や ま中なかさんは奈な良ら先せん端たん科学技術大学院大学で研究するチャンスをつかみました。山やま中なかさんは大学院の新入生の前で、「受じゅ精せい卵らんを使わず、ふつうの体の細さい胞ぼうから多能性幹細さ い胞ぼうを作る。」と、夢のような研究テーマを語りました。そして、のちの大発見に立ち会う高たか橋はし和かず利としさんたち大学院生らとともに、挑ちょう戦せんを始めました。京きょう都と大学に研究の場を移してからも、山やま中なかさんはアメリカ時代に教えられた「Vision and Workhard(しっかりと目標をもち、懸け ん命めいに努力すること)」という言葉を胸に、研究を続けました。そして、二〇〇六年にマウスの皮ひ膚ふの細さい胞ぼうを初期化して多能性幹細さ い胞ぼうを作れることを報告し、これを「iア イPピーSエス細さい胞ぼう」と名づけました。さらに翌年の二〇〇七年、今度はヒトのiアイPピーSエス細さい胞ぼうを報告しました。山やま中なか伸しん弥や細さい胞ぼうの採取初期化心臓の筋肉や神経などの細さい胞ぼう移植,薬の研究など遺伝子血液の細さい胞ぼう(リンパ球)皮ひ膚ふの細さい胞ぼうi アイPピーSエス細さい胞ぼう分ぶん裂れつ・増ぞう殖しょく分化誘ゆう導どう▼●山やま中なかさんらが作ったヒトのiアイP ピーS エス細さい胞ぼう● iアイP ピーS エス細さい胞ぼうの作り方とその利用例140-143 3-25_iPS細胞で難病を治したい_170327.indd 140-141 2020/02/28 10:28:0710 510 515143 25 iPS 細胞で難病を治したい 25 iPS 細胞で難病を治したい 142iアイPピーSエス細さい胞ぼうの研究には、大きく二つの期待があります。一つは、再生医い療りょうです。病気になったり失われたりした目や心臓の機能を、iアイPピーSエス細さい胞ぼうから作った細さい胞ぼうや組織で補うことができると期待されています。もう一つは、新しい薬の開発です。患かん者じゃの細さい胞ぼうから作ったiアイPピーSエス細さい胞ぼう由来の実験用の細さい胞ぼうを作ることによって、病気になる仕組みを解明したり、薬の効果や副作用を調べたりすることができると考えられています。実用化にはまだ越こえなければならないハードルがありますが、山やま中なかさんをはじめとした世界の研究者が研究を続けています。苦しんでいる患かん者じゃさん一人ひとりの顔はなかなか見えてきません。しかし、iアイPピーSエス細さい胞ぼうの研究は、難病の患かん者じゃさんの皮ひ膚ふや血液の細さい胞ぼうをいただいて研究する仕事です。その意味で、一人ひとりの患かん者じゃさんの顔を思い浮うかべながら仕事をする場面も多いです。私たちにとっての一日一か月と、難病で苦しむ患かん者じゃさんや家族にとっての一日一か月との意味の違ちがいを心して研究をしています。「明日、薬を作れるのか。」というと、その力はまだ私たちにありませんが、それに向けて多くの研究者が毎日挑ちょう戦せんをしていますので、希望をもっていただきたいと思います。山やま中なかさんは夢の実現に向けて、走り続けています。●ノーベル賞授賞式でメダルと賞状を受け取る山やま中なかさん山やま中なかさんが中学校二年生のときに行った自由研究は、こうまとめられていました。「この研究は、実験という点において成功である。しかしかならずしも成功=完成ではない。さらに研究を発展させていきたいと思う。」そして、ノーベル賞の受賞が決定したとき、山やま中なかさんは次のように語っています。 私は、『Vision and Work hard』という言葉を大切にしています。『Vision』は明確な目標をもつこと、『Workhard』は一いっ生しょう懸けん命めい努力することを意味します。何かに取り組むときは、がむしゃらに頑が ん張ばればよいわけではなく、頑がん張ばった結果どうなりたいのかという目標を見失わないことが大切です。 中学生の皆み なさんは、これから試し行こう錯さく誤ごながら目標を見つけていく時期だと思います。自分の目標に向かって努力を惜おしまずに進んでいってください。山やま中なか伸しん弥や さんからあなたへ私はもともと臨りん床しょう医いをしていました。臨りん床しょう医いはつねに患かん者じゃさんの顔が見える、「この人の病気をどうやって治すか」という仕事です。それが基き礎そ研究を始めてから、患かん者じゃさんの顔が見えなくなりました。病気の名前は見えても、その病気で夢の実現に向けて走り続けている山やま中なかさんの原動力になっているものはなんだろう。考えてみよう新しいことを生み出すとき、どんなことを大切にすればよいだろう。自分にプラスワン作・編集委員会 絵・加か納のう徳とく博ひろ私の 生き方140-143 3-25_iPS細胞で難病を治したい_170327.indd 142-143 2020/02/28 10:29:00159 29 自分だけ「余り」になってしまう…… 29 自分だけ「余り」になってしまう…… 158自分だけ「余り」になってしまう…… 話し合いをとおして、お互たがいを認め合うことについて考えてみよう。学習の進め方問題をつかもう好よし美みさんの悩なやみを整理しよう。問題について考え、議論しよう「余りの一人」を分かち合うとは、どういうことだろう。また、分かち合うときには何が大切だろう。グループで話し合おう。お互たがいに認め合って生きていくために、大切なことを考えてみよう。自分で考えてみよう重しげ松まつさんは、「ひとりになる」ことについて、どんな捉とらえ方をしているのだろう。学習を深めるヒントホワイトボードを使って話し合いを深めてみよう話し合いでは、意見をたくさん出し合い、そう考えた理由を大切にしよう。・グループ内で出た意見の、同じところや違ちがうところを考えてみよう。・新しく気づいたことや納なっ得とくしたことを発表してみよう。考えを深める視点友達の意見で気になることがあれば、「○○さんの意見についてみんなはどう思う?」のように広げてみよう。重しげ松まつさんが「あいつのほうが、ぜんぜん、おとなだ。」と思ったのはどうしてだろう。どうすれば、お互たがいのことを大切にできるのかな。自分にプラスワン自分の考えを発表する。    友達の意見を聞く。   再度よく考える。     話し合いの例     158-159 1-30_自分だけ余りになってしまう_進め方_190301.indd 158-159 2020/02/28 11:19:13主体的な学び対話的な学び 深い学び基本構成学習の進め方新学習指導要領では、新しい時代に求められる資質・能力の育成を目指し、「主体的・対話的で深い学び」の視点に立った教育が重視されています。学ぶことに興味や関心をもち、見通しをもって粘り強く取り組みながら、自分の学習活動を振り返って次につなげているか。友達や先生と対話し、先人の考え方にも触れながら、自分の考えを広げ深めているか。さまざまな知識を関連付けながら深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題の解決策を考えたり、創造したりすることに向かっているか。?考えてみよう友達や先生と対話しながら考え、深い学びに出合う中心発問例です。→詳しくは内容解説資料p.6→詳しくは内容解説資料p.81 年 p.158「29 自分だけ『余り』になってしまう……」学習の進め方3 年 p.140 ~ p.143「25 iPS 細胞で難病を治したい」主体的・対話的で深い学び『           』が目指す「主体的・対話的で深い学び」学びに向かう力,人間性等育成を目指す資質・能力三つの柱知識及び技能思考力,判断力,表現力等教材の理解を深める動画や画像などの教科書QRコンテンツも用意。写真付きだからイメージしやすい。?主題名、登場人物導入で興味や関心と見通しをもたせ、主体的に学習する意欲を向上させます。問題解決的な学習、体験的な活動を取り入れた授業の進め方を例示し、対話的な学びの実現につなげます。?自分に+プラス1ワンこの授業で学んだことを前向きに自分に生かす発問例です。ホワイトボードや付箋を使った話し合いの工夫などを示しています。多面的・多角的な見方や考え方ができるように、さまざまな視点を示しています。