my実践事例小学校 道徳

1.主題名

やっぱり親切っていいな  B[親切・思いやり]

2.教材名

くずれ落ちた段ボール箱
(出典:文部省「小学校 道徳の指導資料とその利用 4」昭和56年3月)[一部再構成]

3.主題設定の理由

(1)ねらいとする道徳的価値について
 人間は一人では生活していけない。家族はもちろんだが、家族以外のたくさんの人々と常に関わり合いながら生活している。その中で、よりよい人間関係を築いていくことが大切であり、それがよりよい生き方につながっていく。
 よい人間関係を築くには、相手に対する思いやりが不可欠である。それが、他人に接する時の基本姿勢となる。思いやりとは、相手の立場になって相手のことを考えて、その自分の思いを相手に向けることである。そして、それを具体的に表していくのが親切な行為である。親切な行為にはいろいろあり、場合によって、温かく見守り接することもあれば、相手に対して励まし手助けをすることなどがある。
 そこで大切になってくることは、「自分にとって」ではなく、あくまでも「相手の立場になって」考えることを忘れてはいけないということである。人間一人一人は考えや性格・置かれている環境も違う。それをしっかりとらえた上で考えていかなくてはいけない。また、思いやりの心を伴った親切な行為は家族や親しい友達だけでなく、だれに対しても行っていくことが重要である。そこで自分の行った親切な行為によって、相手が喜び、また、それが自分にとっての喜びとなっていくことを知り、「やっぱり親切っていいな。」ということを考えさせていきたい。

(2)児童の実態について
 本学級の児童は気持ちの優しい児童が多く、学校生活の中でも、自然に友達のことを考えて進んで手助けをしている場面が多く見られる。また、たてわり活動などでの姿を見ても、低学年の児童が戸惑っている様子に気付き、手を添えて近くまで連れていってあげたり低学年の児童の目の高さに合わせて話をしていたりしている。
 さらに、登下校の際におばあさんが道がわからなくて困っていた様子を見て,何人かで声をかけ教えてあげたことで喜んでもらえたことを嬉しく思い日記等で教えてくれた子もいる。
 親切というのは、相手に認めてもらうためにやるものではない。自分のやった親切な行為が困っている人の手助けになり、それが自分にとっても人のために何かできたという喜びとなるものだということに気付かせていきたい。その上で、なかなか勇気がいることではあるが、相手が誰であっても、困っている人がいたら、相手の立場になって考え、そのままにはしていられない、親切にしていきたいという気持ちを考えさせていきたい。

(3)教材について
 小さい男の子が、狭い通路にあった段ボール箱を崩してしまう。男の子は気にも留めずおもちゃ売り場に行ってしまい、一緒にいたおばあさんは片付けたくても男の子が気がかりで困っていた。わたしと友子さんは、その様子を見かねて、自分たちが片付けると言って片付け始めた。しかし、店員さんに誤解され、厳しい口調で叱られてしまう。おばあさんに後でお礼を言われてもすっきりせずにいたが、後日、店員さんからの謝罪とお礼の手紙をもらい、親切にしてよかったと晴れ晴れとした気持ちになるお話である。
 親切にしたにもかかわらず、認めてもらうどころか誤解をされ叱咤され、「こんなことならしてやらなきゃよかった。」という気持ちは子どもだけでなく、大人でもそう思うことがほとんどである。そのような葛藤場面を考えさせ、親切とは何かと深く考えることができる教材である。
 この教材を通して、知らない人であっても困っている人がいたら親切にすることで、相手が喜ぶだけでなく、自分の心も「親切にしてよかった。」という晴れ晴れとしたい気持ちになるということを考えさせたい。

4.教材分析図

場面

わたしの心の動き

発問

①わたしは友子さんと買い物に出かけた。

・とっても楽しみだなあ。何を買おうかな。
・二人でいろいろ選べて楽しいだろうな。
・ワクワクするなあ。

②ショッピングセンターの裏の段ボールが山のように積んである通路を通っていた。

・今日は混んでいていやだな。
・友子さんと離れてしまいそう。
・段ボールがこんなに積んであって倒れてきたら、大変だな。
・段ボールが邪魔だなあ。

③わたしたちの前を男の子とおばあさんが歩いていた。

・おばあさんと一緒に買い物に来て、とても楽しいんだろうな。
・おばあさん一人で小さい子を連れているのは大変。
・男の子、かわいいな。

④男の子が段ボール箱にふれながら歩いていた。

・危ないな。
・倒れないといいな。
・倒れたら、けがをしてしまう。

⑤段ボール箱が通路にくずれ落ちた。

・やっぱり落ちちゃった。
・危ないなあ。
・通れない。困るなあ。
・だれもけがしなくてよかった。
・おばあさんも注意しておけばよかったのに。
・男の子は、叱られちゃうだろうな。

⑥男の子は気にする様子もなく、おもちゃ売り場に行こうとおばあさんの手をひいていた。

・ひどい。ちゃんと片付けなきゃ。
・えっ!そのままにしちゃうの?
・少しは悪いとか思わないのかな?
・小さいから仕方ない。

⑦おばあさんが整理し始めたが、男の子はおもちゃ売り場に行ってしまった。

・おばあさん一人にさせて、男の子はひどい。
・なんでおばあさんの言うことをきかないんだろう。
・男の子は、迷子にならないかな。大丈夫かな。

⑧周りの買い物客は誰も手伝うことをしなかった。

・手伝ってあげないのかな。
・見ているだけなんて、みんなひどいなあ。
・おばあさん一人でかわいそう。

⑨おばあさんの困っている様子を見て、わたしたちも段ボール箱の整理を始めた。

・おばあさんが困っているのに、何もしないのは悪いなあ。
・手伝ってあげよう。
・みんなでやれば早い。
・おばあさんが一人でやるのはかわいそう。

⑩おばあさんは、男の子が気になって、周りを見回していた。

・男の子が心配なんだろうなあ。
・男の子、迷子になっていないといいな。

⑪「わたしたちが整理します…。」とおばあさんに言うと、おばあさんは、お礼を言って男の子の方へ行った。

・これで、おばあさんは、男の子のことを探しに行けるから、安心できるだろう。
・おばあさんの役に立てる。
・おばあさんに喜んでもらえてうれしい。
・ちょっといいことしたかも。

⑫おばあさんのことを話しながら段ボール箱を一生懸命に整理していた。

・もとに戻ってよかった。
・おばあさん、男の子のこと探せたかな。
・いいことをして、気持ちいいな。
・きれいに直せそう。

一生懸命に段ボールを整理していた時、私はどんな気持ちだったでしょうか。(親切をして気持ちがいいことをおさえる)

⑬店員がやってきて、遊んでいて落としたと疑われた。

・えっ?何のこと?
・店員さん、だれかと勘違いをしている。
・わたしたちは悪いことしてないのに。
・おばあさんのかわりやっているのに。
・人違いをしないでほしい。
・話も聞かずに勝手に決めないでほしい。

⑭周りの人に叱られている様子を見られた。

・はずかしい。
・わたしたちでないのに…。

⑮悪いことをしていないと言い聞かせたのだが、言葉にならなかった。

・堂々としていればいい。
・なぜ、こんなこと言われなくてはいけないの。
・なんて言えばいいの。
・男の子のせいと言っても信じてくれないかも。

⑯それでもむしゃくしゃしながら、最後まで片付けていた。

・何で何も悪くないのにこんなふうに言われなきゃいけないの?
・ひどい。
・手伝わなきゃよかった。

⑰整理は片付いた後、店員さんにまたきつい口調で言われた。

・ひどい。
・勝手に疑って!
・最後まできれいに片付けて、何で、こんな風にいわれなきゃいけないの。
・こんなことなら、おばあさんのために片付けなきゃよかった。
・あの男の子のせいだ。
・おばあさん戻ってきて、説明をしてほしい。

①片付けが終わった後になってまでも、店員さんにきびしい口調で注意された時、私はどんなことを考えたでしょうか?

⑱おばあさんが男の子を連れて戻ってきて、お礼を言われた。

・今さらお礼を言われても…。
・今ごろ戻ってきても遅い。
・もっと早く戻ってきてよ。
・男の子が崩さなきゃこんなことにならなかったのに。
・親切にしたことには変わりない。

②「いいえ、いいんです。」と言って、その場を立ち去ったわたしの心の中には、どんな思いがあったでしょうか。

⑲朝会の時に校長先生が、ショッピングセンターから手紙が来たことをお話になった。

・また、文句を言ってきたの…。
・ひどい。学校まで連絡しなくてもいいのに…。
・どんな内容の手紙なんだろう。
・いやだな。聞きたくない。

⑳手紙の内容を聞いた。

・やっとわかってくれたんだ。
・わかってもらえてうれしい。
・おばあさんの手助けをしてよかった。

㉑友子さんも嬉しそうにしていたし、わたしも足取りが軽やかだった。

・やっぱり親切にするっていいな。
・いいことをすると気持ちがいいな。
・あの時、手伝ってよかったな。

③わたしの足取りが軽やかになったのは、心の中がどんな思いでいっぱいになったからでしょう。

5.ねらいに迫るための手立て

(1)座席の工夫
〈教材提示〉教材にじっくりひたらせるために、全員が担任の方を向くように、横の座席の児童は前向きにする。
〈話し合い〉座席をコの字にし、みんなの顔が見て、話し合いができるようにする。
〈振り返り〉前向きの座席の形にし、一人一人がじっくり自分のことを振り返られるようにする。

(2)教材の精選
 各社の副読本で使用されている教材である。内容が、文部省の方が「わたし」の心の様子をより細かく書いてあるので、原作である文部省の教材を使う。ただし、古くから使われている教材なので、現代に合わせるために一部再構成した。

(3)教材提示の工夫
 話の流れがわかりやすい教材なので、教材は手元に渡さずに、場面絵は映像で映したり、実際に段ボールを用意したりし、教師が児童の様子を見ながら範読をする。ねらいに関係なく、今の児童があまり使わない表現のところは少し省いて提示する。手紙は、映像に最初は映さずに読み、主人公と同じようにどんな内容かを考えさせる。

6.本時

(1)ねらい
 店員さんからもらった手紙を聞いて、私の足取りが軽やかになった時の気持ちを考え、だれに対しても思いやりをもち、相手の立場になって考え、困っている人には進んで親切にしようとする心情を育てる。

(2)本時の展開

□学習の流れ ○発問 ・予想する児童の活動

・指導上の留意点


□道徳的諸価値への導入
○困っている人に親切にした後、どんな気持ちになりますか。
・いいことしてよかったなあ。
・喜んでもらえて嬉しかった。
・気持ちがすっきりした。

・児童の言葉をもとに主題につなげる。





□教材を読み、話し合う。

・教材を画像に映しながら、教師が範読をする。横の座席の児童は前向きにする。
・一生懸命に段ボールを整理していた時の気持ちを教師がおさえてから発問に入る。

①片付けが終わった後になってまでも、店員さんにきびしい口調で注意された時、わたしはどんなことを考えたでしょう。
・ひどい。勝手に疑って!
・最後まできれいに片付けて、何で、こんな風にいわれなきゃいけないの。
・あの男の子のせいだわ。
・こんなことなら、おばあさんのために片付けなきゃよかった。

②「いいえ、いいんです。」と言って、その場を立ち去ったわたしの心の中には、どんな思いがあったでしょう。
・今さらお礼を言われても…。
・今ごろ戻ってきても遅い。
・男の子が崩さなきゃこんなことにならなかったのに。
・親切にしたことには変わりない。
・おばあさんには喜んでもらえたからいい。

・お礼を言われても納得いっていないわたしの気持ちと、親切にしたことにはかわらない気持ちが入り混じっている思いを出させ、どちらが強いか考えさせる。
・2人組で役割演技をさせる。

③わたしの足取りが軽やかになったのは、心の中がどんな思いでいっぱいになったからでしょう。
・やっぱり親切にするっていいな。
・いいことをすると気持ちがいいな。
・あの時、手伝ってよかったな。

・疑いが晴れてすっきりしたというような発言が出た場合は、みんなに投げかけ、話し合う。





□自分を振り返る
○相手のことを考えて親切にしたり、自分のことを考えてもらって親切にされたりして、「やっぱり親切っていいな」。と思ったことはありますか?その時のことを書きましょう。
・電車に乗っていて、おばあさんに席を代わって、お礼を言われた時。
・下校の時に転んで困っていたら、近くを通った子が、大丈夫と言ってハンカチを貸してくれた時、とてもうれしかった。

・ワークシートに書く。
・発表したい児童がいれば、発表させる。


○教師の説話をする。(手袋の話)

(3)評価
・親切にしたことを後悔していたが、店員さんからもらった手紙を聞いて、「やっぱり親切っていいな。」と思った主人公の気持ちを考えることができたか。(③の発言)
・誰に対しても思いやりの気持ちをもち、相手の立場を考え、親切にしていくことの大切さに気付き、「やっぱり親切っていいな。」、これからも親切にしていきたいなという心情になったか。(ワークシート)

(4)板書計画

(5)ワークシート