my実践事例小学校 道徳

1.学習指導案

(1)主題名 ほんとうの自由とは  A[善悪の判断、自律、自由と責任]

(2)教材名 「うばわれた自由」(出典:日本文教出版「新・生きる力」)

(3)ねらい
 ジェラールの心の移り変わりを考えることを通して、自律的に判断し、責任ある行動をとることを大切にしょうとする心情を育てる。

(4)一人一人への願い(01くん)
 ジェラールの心情の変化を通して、自分自身を見つめながら本当の自由について考えさせたい。

(5)展開の概要

学習活動
(○主な発問 ・予想される児童の反応)

○指導上の留意点 ◇評価


1 自由について思うことを発表する。
○今日の5時間目、自由だったらどんなことをしますか。
・遊ぶ
・好きなことをする
・勉強する

○身近な生活の中で、自由の意味について考えさせる。
○主題名を板書してから範読する。




2 教材「うばわれた自由」を読んで話合う。
○森の中でのジェラールの気持ちは、どうだったでしょう。
・俺を誰だと思っているんだ
・王子だから自由にしてよい
・自由にして何が悪い

○ジェラールの気持ちを通して考えていくことを伝える。範読後、余韻をもつ。
○ジェラールが自由についてどのように考えているのかをつかませる。

◎牢屋で一人になったとき、ジェラールはどんなことを考えたでしょう。
・好き勝手にしなければよかった
・ガリューの言うことを聞いていれば
・王子としての責任が大切だった
・ルールを守るべきだった

○ジェラールがしっかりと自分を振り返っている姿から、ほんとうの自由について考えさせる。
◇ジェラール王子の自由に対する考えの変容を通して、自由についての道徳的価値を深めることができたか。(発言)




3 自分の生活を振り返る。
○このお話を通して、自由について学んだこと考えたことはどのようなことですか。

○自己の生活を振り返ることによって、ねらいとする価値を高める。
◇本当の自由について、自分との関わりの中で振り返ることができたか。(ワークシートの記述)


4 教師の説話を聞く。
○えらいね。自ら考えて取り組んでいるね。

○先生がいなくても、子どもたちが今やらなければならないこと考え、自主的にしっかりと取り組んでいた様子を称え、今後の学校生活につなげる。

2.授業記録

(  )内は教師の発言
【導入】
T あっ、そうそう、今日の5時間目は、テストなし。自由にしよう。好きにしてよし。
C えっ?! おっ やったー! <笑顔と歓声に包まれる>
T 自由だったら、どんなことをしますか。
01くん 本当に何してもいいの。(いいよ) 遊んでもいい?(いいよ)
01くん 校庭で遊ぶ。(いいねー)
02さん でも、他のクラスが体育をやっているから、迷惑がかかるよ。(あっ、そうか)
01くん じゃあ、教室でゲームをする。(あっ、それいい考えだね)
03さん 5時間目は理科だから、理科のまとめをやる。(いいの?自由だよ)うん。
04さん 休み時間は遊んでもいいけど、いくら自由って言っても、授業中なんだから、遊んではいけないと思う。(なるほどね)
05さん 教室で遊んだら、休み時間のように絶対にうるさくなってしまう。(やっぱりー)
01くん ほかのクラスに迷惑かけるし、静かに遊ばなきゃいけない。トランプをするか。あっ、そうだ、賭けする。賭けで勝ったら、給食のおかわり貰えることにする。
06くん もう5時間目だから、食べちゃっているよ。<一同爆笑>
07さん 自由は自由でも、勉強の時間だから。
08さん 遊んでいたり、うるさくしていると、廊下を通ってくる他のクラスに変に思われていやだ。(そうだね)
09くん 低学年が見ていたら、示しがつかない。(ぼくたち高学年だからね)
10さん 授業のときに、ふざけていたり、ほかのことをしたりすると、自分のためにならない。(あっ、自分自身のためにもね。なるほど)
 授業よりも遊びたいという01くんの気持ち。そして、02さんの発言を受けて01くんは、迷惑がかからないように教室で遊ぶことを選択し、さらに、05さんの発言を受けて、静かに遊ぶことにしました。子どもたちは、この2か月間の学級での営みや、高学年という意識を持ち始めたことが表れています。本心は遊びたいところですが、ちょっとまずいのではないかと。
 範読では、01くんはいつもよりも集中して教材に目をやっていました。ところどころで、子どもたちに目をやると、01くん同様、BGMの効果もあって、教材に浸っている姿がみられました。

【展開前段】
森の中での、ジェラールの気持ちは、どんなだったでしょう。
01くん 動物を殺しているわけでもないし、なんで、こんなにうるさく言われなければならないんだ。(なるほどね)
11くん 王子なんだから、何をしてもいいじゃないか。(王子だからね)
12くん 俺が一番えらいんだ。(あー、なるほど、なるほど)
02さん 酒に酔っているから、いいじゃないか。(そっか)
08さん 王子だから、自分に逆らえるものは誰もいない。(なるほど)
09くん 王子だから、ちょっと悪いことをしてもいいや。(あー、なるほどね)
13くん きまりなんて、守らなくてもいい。(おー、ほ、ほ、ほ、ほ)
10さん 王子なんだから、自由自在に遊んでいればいいし。(あ、なるほどね)
14くん 王子だから、自分はきまりを守らなくてもよい。(うん、うん)
15くん 俺は王子だから、はむかうやつなんかいない。(なるほど)
16くん 俺は王子なのに、何で森の番人なんかに注意されなければいけないんだ。(あー、なるほどねー)
17くん 自分が言うことは全部正しい。(うん)
11くん 王子なんだから、悪いことをしても牢屋には入れられないぞ。(王子だからね)
18くん 何も撃っていないんだから、やったっていいじゃん。(あー、は、は、は、は-)
06くん このくらい、いいじゃん。(このくらい)
T (板書した後)王子は、自由についてどんなふうに思っていたと思う?
19さん 自分が思ったことを、好き勝手にしていい。(ほう、ほう、ほう、ほう)
10さん まわりのことを考えてなくてもいい。(あー、なるほど)
16くん 自由というのは、何をやってもいいということ。(自由はね)
01くん ジェラールがやっている自由というのは悪いことの自由で、ガリューの言っている自由は、悪いことをしないで、幸せな生活をやったりする自由で、ガリューがしているのは悪いことの自由。(ほー、ほ、ほ、ほ、)
人を殴ったり、人を殺したりの自由。ガリューは、善いことの自由、幸せに暮らしたり。(なるほど、善い自由と悪い自由か、よい自由は幸せに暮らせる。なるほどなあ。これは次につながる大切なことだから、左に書いておくね)
13くん 自分さえよければの自由。(自分さえよければ)
18くん 好き勝手にやってもいいという自由。(好き勝手に)
11くん やりたいことは、やりたい放題やってもいいという自由。(やりたい放題か)
09くん きまりを破ってもいいという自由。(なるほど)
02さん 注意されても、言い訳を考えとけばいいや。(なるほどね)
12くん 死ぬまでに、やりたいことをやるのが自由。(やりたいことを)
01くん 全部が全部、やりたいことをやっていいというわけではない。(なるほどね)
全部が全部、やっていいわけじゃない。ルールを破ったり。番人さんに、聞いてやるんだったらいいけど、聞かずに勝手にやるのは犯罪。嫌われていく。
 発問後、01くんの手が挙がりました。01くんに、無言で「うん、ありがとう、わかっているよ。」と、うなずきながら目を合わせました。徐々に手が挙がり始め、01くんに口火を切ってもらうことにしました。
 続いて多くの子どもたちが発言を重ねていきました。「王子だから」という気持ちが、このようなジェラールの行動に至るのだという考えです。そこで、王子の自由についての考えについて投げかけました。すると、3人の発言を受けて01くんは、自由には善い自由と悪い自由があり、善い自由が幸せにつながるのではないかと考えました。この彼の発言には、これまで2か月の間、学校生活の中で、私が01くんに何度も説いてきたことが、ようやくこのときに、01くんの中に整理されたように感じられ、嬉しくなりました。
 01くんの発言後、自分さえよければと好き勝手にしたり、人に迷惑をかけたりする自分勝手な振る舞いがよくないとの声があがっていきました。

【中心発問】
牢屋で一人になったとき、ジェラールはどんなことを考えたでしょう。
05さん 悪いことをしなければ、こんなことにならなかった。(なるほど、悪いことってどんなことかな。もう少し詳しく言ってみて)
動物を殺したりすること。(うん)
19くん 思ったことを好き勝手にすること。(なるほど)
18くん ルールを破る。(うん)
01くん 王子だからいいとか思っていたり、ルールを破って、勝手に狩りに侵入したり。(なるほどね)
T じゃあ、もう一回聞くよ。牢屋で一人になったとき、ジェラールはどんなことを考えていたでしょう。
20さん 森の番人のガリューの言うことを聞いておけばよかった。(あー、なるほどな)
14くん 悪い自分に、もっと早く気づいていれば。(あー、悪い自分にね)
21くん もっと、早く気づいていれば、乱れた世の中にならずに済んだ。(気づけばね)
12くん ジェラールがどんどん悪いことを好き勝手にやってしまったから、自分がやったから、皆に影響して、悪い国になってしまった。乱れた。(自分のせいでね、なるほど)
10さん こんなことになるんだったら、ルールを守ってやっていたほうがよかった。(なるほど)
16くん 自分がしっかりしていれば、国を守ることができた。(なるほど、しっかりしていれば、12さんにつながるね)
09くん 王だからといって、好き勝手にやってしまって、こうなって、後悔した。(なるほどね あれ、さっき手を挙げていた22さんは?)
22さん 09くんと同じ。(同じ。いいよ、自分の言葉で言ってごらん。)
今まで好き勝手にしていなければ、国はこんなに乱れることはなかった。(あー、なるほどね)
02さん ガリューが正しいことを言ってきたのに、こんなに長く牢屋に入れられてしまって、自分がしたことのほうが間違えていたのに。(なるほど)
11くん 自分が王だということを使って、調子に乗りすぎた。(あっ、そうか、ははは)
18くん 今までの自分は、なんて悪いことをしていたんだ。(あー、なるほどね)
08さん 自分にとっていいことが、悪いことだった。(あー、なるほど)
05くん 自分は、なんて最低な人間だったんだ。(なるほどね)
12さん 責任感をもっていればよかった。(あー、なるほどね)
16くん ガリューに迷惑がかかるとかじゃなくて、国中の人々の自分の幸せというか、01くんが言ってくれた幸せという善いことの自由。その善いことの自由というものを考えずに、悪いことの自由ばっかり頭に入ってしまったから、国中が悪くなってしまって、国中の人にとって迷惑をかけてしまった。(なるほど)
21くん 人に迷惑がかけてはいけない。夜に皆が、人が寝ているのに、大きい音がしたら迷惑。(なるほど、迷惑をかけてはいけないということか)
自由だからといって、人に迷惑をかけてはいけない。(なるほど)
01くん 人に迷惑をかけないってことは、皆が幸せになれる。(そっかー)
 捕まって後悔したジェラールの気持ち。国が乱れてしまったという王としての責任の気持ち。国民に迷惑をかけてしまったというジェラールの反省の気持ちを、子どもたちは考えました。前の発問で01くんが考えたことについて言及し、黒板の左に書いた善い自由と悪い自由について考え、迷惑をかけることを問題視していきました。最後に、01くんに特に考えてもらいたいことが、01くん自らの口から出て、終えました。
 01くんが教材に向き合っていたように、一人一人が教材に浸っているように思えました。教材を通して考え、多くの友達の考えを聴き合いながら、自分の考えを少しずつ深めていくことによって、心が高ぶっていく。範読の大切さ、聴き合いの大切さを感じさせられました。

3.板書例

4.授業への工夫 ~教材提示の充実~

(1)多いセリフを習得するために
 この教材を音読して感じたことは、セリフ(かぎかっこ)が多いことです。そこで、ジェラールとガリューのセリフを、蛍光ペンを使い、色分けして音読することにより、教師自身が登場人物になりきろうとしました。それでも、音読をする度に毎回どこかで失敗します。ガリューになりきり、「ジェラール王、あなた様も~」と言ったあと、本文中では「低い声で語りかけてきました。」と続きますが、低い声どころか普通の声で読んでしまっているありさまです。今度は、教材に赤ボールペンを使って「低い声で」と書き込みました。文の途中で間を開けたいところには、青ボールペンで印をしていきました。そうこうしているうちに、コピーした教材は、蛍光ペンとボールペンで賑やかになっていきました。
 何度も音読していくと気持ちが高ぶり、ジェラールがガリューに喰ってかかるところやガリューが叱るところのセリフは、大声になっていきました。音読を何度も繰り返すうち、ついには声がかれるようになってきました。私はふと考えました。大声をださなくとも、二人の気持ちが表せるのではないかと。

(2)範読にBGMを用いて効果的にするために
 教材が長いために、BGMは3曲を用意しなければなりません。このクラスで初めてBGMを使用するということもあって慎重に検討しました。BGMと場面がマッチするように、BGMをかけた後、どのあたりから範読をスタートしたらよいのか試行錯誤の連続です。また、文章のどこで間をとると効果的かを考えながら、範読を重ねていきました。次に、BGMの音量です。黒板の下辺りから流れるBGMが一番後ろの席まで聞こえるのか、聞こえすぎないかを探るため、教室の後ろで範読し、耳をBGMに傾けました。結果、ボリューム13が丁度よいことがわかりました。授業の前日の夜、最後の範読が終わったとき、廊下から多くの拍手が聞こえてきました。PTAの仕事を終えられた保護者の方々やお子さんたちが、廊下越しに私の範読の様子を見ていたようです。思わぬ励ましの拍手を受けての授業前日となりました。
 授業当日、範読で初めてBGM使用とあって、子どもたちがびっくりしないように、1時間目にその旨を伝えました。範読する位置に立って、本日の理科のテストのことについて話しながら少しの間BGMを流すことによって、一番後ろの児童にBGMが聞こえるかどうかを確認しました。また、一番前の児童にはBGMの音が大きすぎて邪魔にならないかを聞きました。結果、予定していたボリューム13から15に引き上げることとなりました。

(3)BGMの過去の失敗から学ぶ ~音量をよく考えないと
・児童のいないひっそりとした夜の教室と、児童が実際にいる教室とでは、違う。
・他学級での事前授業と、当日の本学級との授業では、子どもたちの実態によって、違う。
・校庭の状況でも変わる。準備体操(掛け声)のときに丁度範読の時間となる。
・CDプレーヤーの機種により、音量が変わってくる。

5.考察

○01くんが、今後の学校生活において、善い方向へと変容が見られた。
 この授業以来、喧嘩をすることがなくなり、自分勝手な考えや立ち振る舞いが見られなくなった。また、級友同士が喧嘩をしていると、体を張って止めに入り、双方の言い分を聞きながら、解決を図っていく姿が、何度も見られた。
 この授業以来、学校生活のルールを率先して守り、学級の一員であるという自覚と責任をもって、学級を良くするために提案したり、自ら進んで行動したりするようになった。男女問わず、親切に級友に接することによって、慕われている。
 授業でのルール(学習規律)を進んで守ろうとしている。自分勝手に発言せず、黙って挙手する、指名されたら「はい」と返事をし、起立して椅子を入れてから発言する。授業に集中して取り組み、級友の発言を聴きながら、自分の考えと照らし合わせて考えたり、よい考えを取り入れたりしようとしている。

○本教材の範読時には、BGMが有効であることが確認できた。
 授業への工夫にも記載させていただいたように、BGMを用いると効果的である。子どもたちは、教材の世界に引き込まれていくことが、範読しながら手に取るようにわかった。

○正義心の強いガリューを中心に据えるよりも、わがまま勝手なジェラールが変わっていくさまを捉えた方が、より人間理解を通して、価値理解につながると考えた。
 森の番人のガリューは、自分の使命感や正義感において、正しいことを主張している。もっともなことである。しかし、人間は、正しいことであるとわかっていても、よいことであるとわかっていても、ときにはできなかったり、いい加減になってしまったりすることもある。ジェラールは、王子とはいえ、自分勝手に立ち振る舞う姿と、牢屋に入れられて何が大切なのかを深く考えることになる姿から、ジェラールについて焦点を当てて捉えた方が、本授業において、子どもたちの学びが深まるのではないかと考えた。