ブックタイトル平成31年度版 内容解説資料(表紙作品・作家紹介)

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概要

平成31年度版 内容解説資料(表紙作品・作家紹介)

池田 学 (いけだ・まなぶ)画家1973年、佐賀県多久市に生まれる。1998年、東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。卒業制作にて丸ペンを使用した細密技法を確立。2000年、同大学院修士課程を修了。2011年より1年間、文化庁芸術家在外研修員としてカナダのバンクーバーに滞在。チェゼン美術館の招聘を受け2013年6月よりアメリカのウィスコンシン州に滞在。「高校生の美術3」の表紙には、画家である池田学さんの作品「誕生」を掲載しています。東日本大震災を受けてこの作品の制作を決めたと語る池田さん。縦3m、横4mもの巨大な画面に緻密な筆致で描かれる、その世界観や技法などについて伺いました。―彼方の地で心揺さぶられ 2011年3月、私はカナダのバンクーバーに移り住んだばかりでした。ですから東日本大震災そのものは体験していません。当時は、災害下にある日本のことを報道を通じて知るという、極めて歯がゆい状況でした。自分に何ができるだろうか、すぐにでもボランティアとして現地に赴こうかと考えたこともあります。しかし私は画家です。画家としてできることは、やはり絵を描くことでした。 震災について表現することへの抵抗感はありました。故郷の惨状を海外で見ているだけだった私が、いったい何を表現できるのかと思い悩んだこともありました。それでも私には描くという手段しかありません。今すぐじゃなくても、いつか誰かの力になる。そう思って描き続けました。―それでも日常は続いていく 「誕生」は東日本大震災そのものをテーマにしたものではありません。世界中のどんな場所であっても起こりうる自然災害とのかかわり方や、自然との共存などをテーマとしています。 最初に着手したのは左下のがれきの山です。それは震災を色濃く映すものですが、がれきの中にも、そこから立ちそびえる巨樹の中にも、私の身の上に起きた様々な出来事や、ふいに思いついたストーリーなどを描き入れています。完成に至る3年3カ月の間には、子どもが生まれたり、親友を亡くしたり、右腕を負傷して神経を痛めたりもしました。震災に呆然としながらも、日常は日常として続いていきます。そうしたすべてのことを、私というフィルターを通して昇華したのがこの「誕生」です。―花を咲かせる意味 巨樹に花を咲かせるかどうかは最後まで迷いました。ですが、日常にあっても非日常にあっても絶えず繰り返される、あらゆる生命の「生」と「死」を予感させるものとして、細かなモチーフを組み合わせて花を描くことにしました。 たくさんの花を描きましたが、実在する花は1輪もありません。多様なモチーフが寄り添うように集まって、一つの花を形づくっています。いったいどんなパーツでできているのか、ぜひ実際にご覧いただければと思います。インタビュー動画もあわせてご覧ください