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Q

生活科で「思考力・判断力・表現力」について評価するためにはどうしたらいいのか悩んでいます。どう考えればよいでしょうか。

2019.05.29 / 資質・能力の三つの柱、評価、生活科全般
回答者:山形大学 教授 野口 徹

A

まず、「評価」とは何をすることか、ということを確認しておきます。一つには、子どもの学習状況を評価する「学習評価」があります。各学校・各教室では学習指導要領に示されている各教科等の内容に基づいて、子どもや学校、地域の実態等に鑑みて適切な単元として構成し、授業を行うわけですが、その授業で展開された内容が確実に子どもに身に付いたかどうかの評価を行うのがこの学習評価です。もう一つとしては、教師が子どもの「学習評価」を学習目標と照らし合わせてその達成状況を評価し、それ以降の学習指導の改善に生かす「学習指導評価」があります。

これらの評価を適切に行うためには、その方法の妥当性や信頼性を確保することが極めて重要です。評価の方法としては、一般的に、子どものノートやワークシート・学習カードの学習過程において記述された内容、作品やレポートなどの単元の終末段階での表現物、そしてテストによるものがイメージできることと思います。また、授業中の子どもの行動や表情等を観察することや個別に面談などを行うことなど、子どもの内面の状況を評価する方法も知られています。これらの様々な評価方法の中から、その場面における児童の学習の状況を的確に評価できる方法を選択していくわけです。

特に、生活科ではテストを用いる方法ではなく、子どもが活動したり思考したりしているその姿を評価することが重視されています。それは、例えば、子どもが生き物を育てたり、おもちゃをつくったりするなどの、心を動かし、熱中する活動を行っているときや、自分の生活をより良いものにしていこうとしてアイディアを出してみたり、それを試してみたり、また振り返ってみたりするなどの様々な子どもの姿です。これらの場面で子どもはまさに「思考力・判断力・表現力」を含んだ資質や能力を十分に発揮していることが想定されます。ですから生活科の研究授業の学習指導案に示されている評価方法として、「行動観察」「発言内容」などを見かけるのは、道理にかなっている、と言えるのです。

ただ、授業中の子どもの姿を見取り、その内面で立ち起こっている思考を適切に評価することはそんなに簡単なことではありません。四六時中子どもが何か発言をしていることはないでしょうし、活動内容が落ち着いていると、子どもの姿からその思考を読み取ることは難しくなることが考えられるからです。子どもの姿を観察して評価することは、生活科の生命線とも言える大切な方法ではありますが、このことに自身を慣らしてしっかりと見取るのはハードルも高いのです。それだからこそ、これをどうしたらよいのか悩まれる方もおられるのだと思います。

そうしたときに参考となるのが、幼稚園等の幼児教育施設においてポピュラーになっている「ドキュメンテーション」という評価方法です。それは極めてシンプルな方法です。まずは、子どもの活動場面です。そこでは教師が活動に熱中している子どもの様子を観察し、これは、と思う姿を見つけるたびにカメラで撮影するのです。それは何枚もの写真となります。その後、それらの写真を園内に掲示物として貼りだすとともに、子どもと一緒に写真を見ながらそのときに感じたことや考えたことを思い出して話してもらうのです。

教師は写真の横に吹き出しをつけてその言葉を書き出していきます。字が書ける子は自ら書いたりします。これによってそのときの思考内容が活動の文脈として理解していくことができるようになるとともに、子ども自身も自らの活動の意味付けをしていくことになります。幼児教育では「遊び」という活動がメインとなり、子どもがそのときの思考内容をノート等に書いたりすることは通常行われません。だからこそ、子どもの内部に引き起こされた思考を明示していくドキュメンテーションという方法が数多く採用されているのです。

このドキュメンテーションは、生活科における「思考力・判断力・表現力」等の資質・能力を評価する方法としても極めて有効です。むしろ子どもは喜んで自分の活動を振り返って言語化していくことでしょう。このドキュメンテーションと「振り返りカード」の記述とを合わせて読み取ることで、さらに子どもの思考の輪郭がより明確になることと思います。これによって、次なる子どもの活動の予測にもつながることから、教師の言葉かけや準備などもより精緻なものとなることでしょう。

なお、幼稚園のドキュメンテーションの具体的な取組については、日本文教出版の『生活&総合navi』75号(2018) の私のコラムでも紹介しています。ぜひご覧ください。

山形大学 教授 野口 徹

Q

新学習指導要領で「カリキュラム・マネジメント」の重要性が示されていますが、具体的に何をどうすればいいのでしょうか。

2019.05.29 / 学級経営(教科・領域等を問わず)、カリキュラム・マネジメント
回答者:根室市立花咲港小学校 校長 照井貴幸

A

初めから完全なカリキュラムは存在しないと考えましょう。まずは、自校のカリキュラムを知って、実践しながら見直して、記録して、最終的にその年度が終わって「これがベターかも」と言えるカリキュラムを完成させるのです。そして、それを次の学年に引き継ぐのです。この作業が繰り返されることで、その学校の特色が濃縮されたカリキュラムがつくられていく。そう考えましょう。ゼロからのスタートかもしれませんし、前年度のカリキュラムを受け継いでのスタートかもしれませんが、大切なのは「引き継ぐ」という思考と行動です。

具体的にどのような作業があるか大まかにまとめます。

①1年間に実施するすべての教科・活動等の単元(活動)を一覧表にします。要するに単元一覧表をつくります。

その際、月別に表記することや、単元(活動)毎の時数も明らかにするとより使いやすくなります。

この作業は大変かもしれませんが、合科的横断的な活動はもちろん、その学年の中核になる教科(活動)に気付き、より効果的効率的で、見通しをもった指導につながるので根気よく取り組みましょう。単元一覧表がすでにある場合は、あらためて見直す、引き継ぎ事項を確認するということが大切です。

②定期的に赤ペンで書き込みます。

できれば単元(活動)が終わるたびに評価し、それを単元一覧表に書き込めるとよいと思いますが、最低限、長期休業を利用してこれまでの実践を評価したり、これからの実践を構成し直したりしたことを、単元一覧表に赤ペンで書き込みましょう。余力があれば作成し直してもよいと思いますが、経験上、赤ペン記入で十分です。

③年度の終わりに整理して、次の担任へ引き継ぎます。

赤ペン記入でいっぱいになった単元一覧表だけでもよいと思いますが、できればそれに加え、「次年度はこうするとよいかも」という整理された単元一覧表も引き継ぎましょう。

ざっくりと以上がカリキュラム・マネジメントの具体例ですが、これをする、しないによって学級経営上の視野、学校経営への参画力、児童の学びに対する認識などが大きく違ってきます。一単位時間の構成だけではなく、1年間の見通しをもった教科(活動)間の関連や相互強化を図り、実践を適切に評価する能力の向上にもつながると思います。

根室市立花咲港小学校 校長 照井貴幸

Q

つい、子どもが書いた学習カードや作品の表面的な出来栄えで評価してしまいがちです。子どもの「表現」をどうとらえ、評価すべきでしょうか。

2019.05.29 / 資質・能力の三つの柱、手立て、評価
回答者:根室市立花咲港小学校 校長 照井貴幸

A

表現と言っても「作品」「記述」「対話」「表情」「行動」「プレゼン」など様々な表現があります。また、瞬間的な表現もあれば、最終的な表現もあります。

その多様さゆえ、実際のところ、教師側が設定した表現方法に対して児童の表現力はどの程度かと評価してしまうことが多いと思います。

でも、それは「こんな表現しか見ていませんよ」「今だけ見ていますよ」ということ。確かにそうすれば、その子の表現レベルがわかるので、具体的な指導にも生かされますが、もう少し柔軟に子どもの表現を見取ってください。

例えば、活動の振り返りの場面でノートに書かせることがあると思いますが、その子が表現しやすい方法は「文字」だけではありません。「絵」で表現したい場合もあるでしょう。また、文字や絵で、表現したいことのすべてを表現できるとは限らないことも理解しましょう。すべてを表現できなくて当然です。子どもは最も印象に残ったことを中心に表現する傾向にあります。特に1年生になりたての児童はそういった傾向が強いようです。

さてそうなると、ノートに文字や絵を書かせたところで「はて、この子は一体何を表現したのか?」となることがありますが、だから教師は活動中の子どもの姿を心に焼きつけておくのです。一緒に活動するとなおのこと心に残るでしょう。それでも不安な場合はデジカメでその瞬間を撮影しましょう。あとから画像を見ることで、その瞬間のエピソードを思い出しますから。それでも子どもの表現が理解できない場合は「聞いて」みましょう。「これ、なあに?」と聞くとちゃんと説明してくれることが多いです。

「そんなに面倒なのか!」と嘆かないでください。

子どもたちにとって、唯一の理解者は「先生」なのです。表現方法が発達の途中にある子どもの代弁者になりましょう。「うちの子は本当にわけがわからない」と嘆く保護者と一緒になって「本当にそうですね」ではなく、「いえいえ、お子さんは、こんなことを学んで、それをこのように表現したのです」と説明できるように。そのためにも、「この時間は、この子を理解しよう」というようにある程度ターゲットを絞って見取ることも重要です。

そうやって一人ひとりを理解し続けることで、自信や見通しをもった指導ができるのです。一言に「評価」といっても、教師目線ばかりではなく、子ども目線に立つことで、次の的確な指導が見えてくるものです。

「指導」の根拠に「評価」があるのです。もっと言うなら、適切な評価があってこそ適切な指導ができるのです。

根室市立花咲港小学校 校長 照井貴幸

Q

事情があって生き物を飼うことが難しい学校です。なにか打開策はあるでしょうか。

2019.05.29 / 生活科全般、日常生活・地域/家庭とのつながり
回答者:根室市立花咲港小学校 校長 照井貴幸

A

アレルギー、アナフィラキシー、周辺環境、世話の大変さなど様々な要因で生き物を飼うことが難しいケースは多々考えられます。

学習指導要領には「動物を飼ったり植物を育てたりする活動を行う」とあります。その活動を通して、

「生命をもっていることや成長していることに気付く」(知識・技能)

「育つ場所、変化や成長の様子に関心をもって働きかける」(思考・判断・表現)

「生き物への親しみをもち、大切にしようとする」(学びに向かう力・人間性)

という力を育むのです。 ※学習指導要領解説 生活編 p.28参照

動物、植物のどちらか一方のみでは十分とは言えません。また、2年間に見通しをもちながら継続的に飼ったり育てたりすることに意味があります。

教員一人が「どうしましょう」と嘆く前に、学校としての対応をすべきです。そのためには、専門家、獣医師、保護者、地域等との連携が重要になります。そうやって、子どもたちが生き物とふれあう環境をつくるのが学校の務めです。

動物園から「ウサギ」「モルモット」などの小動物を定期的に借りている学校もあります。そのような学校では、もちろんふれあう際はアレルギー対策を万全にしています。定期的ですから、年中毎日ふれあうというわけにはいきませんが、「動物園に行ってみよう」という活動を設定することで、生き物の様子や変化、成長、親しみ、命への気付きをより広くするねらいを設定することも可能です。動物園とまではいきませんが、条件によっては近所で飼っている動物を対象にできる場合もあるでしょう。

私が以前勤めていた学校ではチャボを飼っていましたが、卵からヒナが羽化する場面を全校児童が見ることができて感動的でした。世話が大変でしたが、児童が率先して当番を決めて取り組んだり、近所の住民も協力的にかかわってくれたりする環境にあり、今思えばとても恵まれていたと思います。

様々な工夫や智恵を集結して、子どもたちが生き物とふれあう環境をつくりましょう。

根室市立花咲港小学校 校長 照井貴幸

Q

生活科を家庭に理解してもらうためにはどのようなことがポイントになりますか。

2019.05.29 / 日常生活・地域/家庭とのつながり
回答者:根室市立花咲港小学校 校長 照井貴幸

A

最近の保護者は、生活科を経験された方もいらっしゃるとは思いますが、生活科を正しく認識されているかどうかという不安はあるかもしれません。

まずは先生自身が生活科を適切に理解しましょう。

そうでなくては、保護者への説明もアプローチもできませんよね。

②育成すべき資質・能力の三つの柱(知識及び技能 思考力・判断力・表現力等 学びに向かう力、人間性等)に沿って、子どもの「学び」や「大人が忘れていたこと」などを紹介しましょう。

作品の写真、ノートのコピーなど、見てわかりやすいものに解説をつけたり、共感的なコメントをしたものを学級通信やホームページに掲載したりするなど。

掲示を工夫しましょう。

もちろん、子どもたちの振り返りや活動のきっかけになることが最優先ですが、保護者が見ても楽しめるように、という意識をもつだけでも掲示がかわってきます。懇談会の際には、それを活用して子どもの学びを説明するなどすると効果的です。

生活科での活動が、家庭での話題になるような工夫をしましょう。

学習活動の協力者として保護者に手伝ってもらう、ワークシートに保護者から一言記入してもらうスペースを設ける、保護者・地域と一緒に活動を企画する、などなど様々な方法があります。いずれにしても、継続的な発信は、家庭の理解につながります。

私が最も効果的だったと思えたのは、保護者・地域と一緒に活動を企画したことです。地域をとりまとめている町内会(保護者も含まれる)の皆さんに、「子どもたちに、将来につながるような職業観のようなものが体験できれば」と話すと、様々なアイデアが出されました。結局は「地域たんけん」になりましたが、駐在所、病院、様々な商店、町内会の皆さんなどたくさんの方々が、子どもたちを包み込むように接してくれたり、見守ってくれたりしました。

その後「来年は、こんな活動もしてはいかが?」と、とても協力的にアイデアを出してくれたり、「あの子、たんけんの時はボーっとしていた感じだけど、最近は挨拶してくれるようになったよ……」というように、子どもたち一人ひとりの成長や変化を楽しんだりする様子も見られました。

理解してもらうことに一生懸命になるのも大切ですが、先生自身が様々な人と積極的にかかわりをもつことも大切かと思います。

根室市立花咲港小学校 校長 照井貴幸

Q

私(学級担任)と子どもの関係は良好なのですが、子どもどうしのつながりがあまりよくないのではないかと感じています。子どもどうしのつながりを強くするためにはどのようにすればよいのでしょうか。

2019.02.19 / 学級経営(教科・領域等を問わず)、学校生活(教科・領域等を問わず)、主体的・対話的で深い学び、評価
回答者:摂津市立鳥飼小学校 教頭 三好達也

A

子どもどうしのつながりを強くするための手立ては様々です。ここでは特別な取り組みではなく、日常の授業を見つめ直す視点から考えてみましょう。

授業を参観すると、一問一答や一部の子どもが答えて進んでいく学習、全体化するために数名が発表して終わる授業などが見られることがあります。

これらの授業は子どもたちから教員へ考えを伝え、教員がそれを評価するといった「評価者=教員」の学習形態となっています。

子どもに限らず、人は自分のがんばりを見てちゃんと評価してくれる人に心を開いたり、つながりたいと感じたりします。

先述したような授業では「評価者=教員」の授業では、子どもたちが「伝えたい」「つながりたい」と思う対象が教員しかいないのです。これでは友だちとつながることはできません。

そこで、子どもどうしをつなぐためには、「評価者=教員」から「評価者=友だち」となるような授業づくりを行うことが、有効な手立てだと考えられます。

まずは簡単なことから始めましょう。例えば、算数の授業で「3×2はいくつですか。隣の人に伝えましょう。」と発問します。すると、子どもたちは、自分の考えを伝え合い、「よくがんばったね!」や「答えが一緒だ!」と互いに同じ考えで互いに正解であると評価しあいます。

例えば、クラスに40人いるとすると、場合によっては40人の友だちと評価しあえます。こういった学習のなかで小さな「つながり体験の共有」を繰り返すことで「安心できる関係性」が構築され、違う意見であっても互いを認め合うことができるような強い絆が生まれてきます。

そのためには、教員が授業でどのような評価基準を設定するのか。また、子どもたち全員に評価基準をどのように共有させるのかが重要です。子どもたちが評価基準をもとに伝え合うことで、学びを深め、子どもどうしのつながりをより強いものにしていくことができます。

学級経営と学習指導は別物ではありません。授業を通して友だちに伝えたい、評価してもらいたいと思える「安心できる関係性」が築き上げられるよう支援することは、教員の力の見せ所ではないでしょうか。

摂津市立鳥飼小学校 教頭 三好達也

Q

今年1年目の教員です。教室に入った瞬間に教室の雰囲気やクラスの状況がわかると聞きます。どういったところを見て、そのようなことがわかるのでしょうか。

2019.02.19 / 学級経営(教科・領域等を問わず)、手立て
回答者:摂津市立鳥飼小学校 教頭 三好達也

A

まずは教室環境です。床にごみは落ちていませんか。児童用ロッカーはどうでしょう。掲示物や児童の机の上の整理はできていますか。

児童の様子はどうでしょう。私語や言葉づかい、座り方などの学習規律やルールはどうですか。また、教員の言葉づかいや立ち振る舞いはどうでしょうか。

こういったことは「ヒドゥンカリキュラム」(隠れたカリキュラム)と言われます。例えば、教室にごみが落ちているとしましょう。そのままにしておくことで、子どもたちにどのようなメッセージを送っていることになるでしょうか。子どもたちは、「ゴミを落としてもそのままでいい」といつのまにか学習します。こういった間違った学習を経て、いずれ教室の床はたくさんのごみが落ちることになるでしょう。

そして教員は、ある日、ごみが落ちていることに気付き「ごみを拾いましょう」と子どもたちに言います。しかし、子どもたちは「普段は何にも言わないのになぜ?」や「これが(ごみが落ちている状態)いつも通りじゃないの?」といった気持ちになります。この気持ちは時に教員への反発にもつながることでしょう。

また、教員の言葉づかいもそうでしょう。言葉づかいが悪い教員のクラスは、子どもたちに同様の言葉づかいをしてもよいとメッセージを送っています。こういったクラスでは、子ども間のトラブルやいじめなども発生しやすくなることは容易に想像できるのではないでしょうか。

このように考えると、教員が無意識的、無意図的に子どもたちに伝えているヒドゥンカリキュラムを、どれだけ意識的、意図的に活用するかによって、教室の雰囲気やクラスの状況を肯定的なものへと変えることもできます。

よいクラスはなるべくして、よいクラスになっています。校内で質問者様がよいクラスだと思う教室に、ぜひ参観に行ってください。よいクラスには必ず、よいクラスになるヒントが隠されています。教室環境や教員の立ち振る舞いからヒドゥンカリキュラムを探してみてください。

摂津市立鳥飼小学校 教頭 三好達也

Q

「合理的配慮」とよく聞きますが、保護者の要望はすべて受けなくてはならないのでしょうか。

2019.02.19 / 学級経営(教科・領域等を問わず)、日常生活・地域/家庭とのつながり
回答者:摂津市立鳥飼小学校 教頭 三好達也

A

平成28年4月1日に「障害者差別解消法」(正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)が施行されました。

そこでは、①「不当な差別的取り扱い」の禁止、②「合理的配慮」の提供の二つが大きく求められます。(注1)

「合理的配慮」の提供とは「障害のある人から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに負担が重すぎない範囲で対応すること」(注2)とされています。

文部科学省は「障害のある子どもが十分に教育を受けられるための合理的配慮及びその基礎となる環境整備設置者・学校と本人・保護者により、発達の段階を考慮しつつ、「合理的配慮」の観点を踏まえ、「合理的配慮」について可能な限り合意形成を図った上で決定し、提供されることが望ましく、その内容を個別の教育支援計画に明記することが望ましい」(注3)と述べています。

こういった背景から学校は、本人と保護者などと連携を図りながら、当該の子どもがよりよい教育を受けることができるよう合理的配慮を行うことが義務となります。

ただし、「「合理的配慮」の決定・提供にあたっては、各学校の設置者及び学校が体制面、財政面をも勘案し、「均衡を失した」または「過度の」負担について、個別に判断することとなる」(注4)とも述べられています。

要望された「合理的配慮」のすべてを行うことはむずかしいことです。人的・物的資源の現状をふまえ、慎重に検討し、取り組まなくてはなりません。また、「均衡を失した」または「過度の」負担であるような場合は丁寧な説明を行うことが必要となります。

保護者と十分に相談し、担任一人で決めるのではなく、学校組織として何ができて何ができないのか、どういったことに取り組めるか、判断するようにしてください。

摂津市立鳥飼小学校 教頭 三好達也

注1…内閣府HP「「合理的配慮」を知っていますか?」P3
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/gouriteki_hairyo/print.pdf

注2…同上

注3…文部科学省 初等中等教育分科会(第80回)資料1 特別支援教育の在り方に関する特別委員会報告 3.障害のある子どもが十分に教育を受けられるための合理的配慮及びその基礎となる環境整備1 配付資料 障害のある子どもが十分に教育を受けられるための合理的配慮及びその基礎となる環境整備
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1325887.htm

注4…同上

Q

生活科や総合的な学習では地域、家庭とのつながりが大切だと思いますが、日常の中でどのような関わりをもっていけばよいでしょうか。

2019.02.19 / 生活科全般、日常生活・地域/家庭とのつながり
回答者:川崎市立小倉小学校 校長 赤松 理

A

2年生は「まちのたからさがし」という単元名で町探検の活動をしていました。子どもたちが、自分のお気に入りの場所やお店を見つけて、利用者や店主にインタビューをします。美味しい手づくりサンドイッチが看板商品のパン屋は町内では有名店です。給食のない時期には職員も利用します。日常的に買い物をする子もいるので、「たからもの」の候補にあがりました。しかし、学校から事前にインタビューのアポイントを取ろうと連絡しても、取材とかインタビューは苦手なので……と断られます。幾度かアプローチしましたが、取材の承諾は得られませんでした。探検当日、パン屋がお気に入りの子どもたちは横目で見ながらお店の前を通り過ぎていきました。

翌日、探検の成果をまとめる学習を始めたところ、2年生の一人が「あのサンドイッチがおいしいパン屋さんの事を書いてもいいですか?」と質問しました。「あのパン屋さんはインタビューできなかったじゃない?」と先生が応じると、その子は「きのう、町探検でインタビューができなかったんだよってお母さんに話したら、パン屋さんに買い物につれてってくれたの。それで、お母さんがサンドイッチを買って、お店のおばさんとお話ししているのに混じって、いろいろと聞くことができたの。だからその事を「たからもの」にしてもいいですか。」と言いました。

上記の話は、実際にあった活動のエピソードです。このエピソードから、子どもの主体性や地域、家庭とのつながり、関わりのあり方を読みとっていただけたら幸いです。

川崎市立小倉小学校 校長 赤松 理

Q

学習における安心・安全とはどんなことがあるのでしょうか。

2019.02.19 / 安心・安全
回答者:川崎市立小倉小学校 校長 赤松 理

A

学習における安心・安全というと、理科や家庭科で扱う薬品、刃物や火の扱い、体育における事故防止を思い浮かべることが多いのではないでしょうか。しかし、ここではもう少し根源的な「学ぶ」ということについての安心・安全についてお話しします。

マズロー(A.H.Maslw)(1970)は自己実現論(欲求階層説)において、自己実現欲求が表われるには、下層の 四つの欲求(生理的欲求・安全の欲求・愛と所属の欲求・承認と尊敬の欲求)が満たされなくてはならないと言っています。

この自己実現論(欲求階層説)をヒントに、学びの主体性を発揮するためにという想定で次のような階層構造を考えてみました。

第一階層「安心・安全」、第二階層「喜び」

「安心・安全」が満たされ、さらに「喜び」が充足した時に主体的に学ぶことができるであろうという仮説です。

この構造における「安心・安全」の要素には「安全に学習できる」「周りから受け入れられる」「友だちとの心情の共有」「自分で選択した学習活動ができる」などがあげられます。また、「喜び」とは「目標の達成」「新しい認識を得る」「自分の力が試せる」「周囲からの承認」「周りの人が喜ぶ」などの要素が考えられます。

「安心・安全」の土台の上で、子どもはのびのびと活動し、自分の可能性を感じていきます。「喜び」の段階では、達成感や承認、貢献の喜びから自己の存在の価値に気付き、自己肯定感を高めていくのです。

「安心・安全」「喜び」のステージを築いていくためには、教室、学校、教職員、地域の環境を整え、温かい人との関わりをもつことが不可欠であると思います。

(日本生活科・総合的な学習教育学会平成27年福岡大会発表 「生活科・総合的な学習の時間における「学びの主体者」 育成に関する研究 -基本的な考え方-」より)

川崎市立小倉小学校 校長 赤松 理

Q

新学習指導要領で求められているカリキュラム・マネジメントのためには学校教育目標の見直しが必要だと思われます。どのような観点で見直すのがよいのでしょうか。

2019.02.19 / 学校経営(教科・領域等を問わず)、カリキュラム・マネジメント
回答者:川崎市立小倉小学校 校長 赤松 理

A

ここで言う学校教育目標とは、額装されて校長室に掲げてある、いわゆる建学の精神のようなものではありません。

今、この学校で学ぶ子をどのような人に育てていくのか、今、この学校で教育に携わる職員が決めて、今、具現化していく目標です。見直しの観点で最も重要なのは自校の子どもの実態を把握することです。その実態と何を掛け合わせれば、目の前の子どもたちのための教育目標になるのでしょうか。

新学習指導要領では、各教科の目標を資質・能力の三つの柱で表記しました。このことは、学校教育を挙げて三つの柱を身につけさせると言う事を表していますので、学校教育目標もまた三つの柱に沿った目標になっていなくてはならないでしょう。学校教育目標から各教科の目標までを三つの柱で貫く事で、はじめてカリキュラム・マネジメントが可能になります。

三つの柱である、「何を理解しているか、何ができるか(個別の知識・技能)」「理解していること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)」「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力、人間性等)」を学校で育てる子どもの姿として目標化するわけですが、もう少し「姿」として具体的な資料があるので紹介します。

2015年8月の「論点整理」、「(2)育成すべき資質・能力について」には次のような記述があり、これからの時代に求められる人間の在り方として具体的な姿がしるされています。

※以下抜粋

教育基本法が目指すこうした教育の目的を踏まえつつ、社会の質的変化等を踏まえた現代的な課題に即して、これからの時代に求められる人間の在り方を描くとすれば、以下のような在り方などが考えられる。

○社会的・職業的に自立した人間として、郷土や我が国が育んできた伝統や文化に立脚した広い視野と深い知識を持ち、理想を実現しようとする高い志や意欲を持って、個性や能力を生かしながら、社会の激しい変化の中でも何が重要かを主体的に判断できる人間であること。

○他者に対して自分の考え等を根拠とともに明確に説明しながら、対話や議論を通じて多様な相手の考えを理解したり自分の考え方を広げたりし、多様な人々と協働していくことができる人間であること。

○社会の中で自ら問いを立て、解決方法を探索して計画を実行し、問題を解決に導き新たな価値を創造していくとともに新たな問題の発見・解決につなげていくことのできる人間であること。

人間としてのこうした在り方を、教育課程の在り方に展開させるには、必要とされる資質・能力の要素についてその構造を整理しておく必要がある。

※抜粋終わり

こうした具体的な在り方が根底にあって三つの柱があることがわかります。

三つの項から考えられるキーワードを挙げると

第1項 自立、意欲、主体的判断

第2項 対話、相互理解、協働

第3項 自ら問いを立てる、価値の創造、問題解決

などになります。これらのキーワードと自校で学ぶ子どもの実態を照らし合わせて、どのような人に育てていくのかを見直しながら、学校教育目標として設定することが求められているのではないでしょうか。

川崎市立小倉小学校 校長 赤松 理

Q

家族単元や成長単元で、家庭内のプライバシーや個人のプライバシーを配慮した進め方を教えてください。

2019.02.19 / 日常生活・地域/家庭とのつながり
回答者:元東京成徳短期大学 教授 和田信行

A

1 何が問題なのか

家族単元では、家族の一日を調べたり、お手伝いごっこをしたりする活動が多く行われています。また、成長単元では、誕生時から現在までの出来事を調べたり、発表したりする活動も多く行われています。

以前は、あまり問題にされることなく実施していた活動が、保護者からの要望でできなくなるケースも増えています。個人のプライバシーに関する権利とはどのようなことなのでしょうか。

法による根拠は、憲法13条の人格権、民法709条の不法行為です。プライバシーの侵害が不法行為にあたります。家族関係や生活実態を皆の前で発表されたり、誕生時からの生い立ちを公開されたりすることによって苦痛を感じることも、場合によってはプライバシーの侵害となります。

2 問題解決の方法は

それでは、生活科で家族単元や成長単元の学習はできないのでしょうか。これらの単元は生活科の目標の一つである「自立して生活を豊かにしていくこと」にも大きくかかわっていく大事な単元です。具体的に解決方法を考えてみましょう。

(1)家庭や児童の状況の把握

家族構成や家庭内の情況、個人の病気や成育歴等の情況をできるだけ把握し、どのような活動が問題となるかを考慮しておく必要があります。把握した情報に守秘義務があることも当然のことです。

(2)家庭の理解と協力

保護者会や、学級通信などを通して、家族単元や成長単元の学習活動の意義を保護者に理解してもらう必要があります。困るケースについては、内々に連絡をもらうようにすると良いでしょう。

(3)適切な学習活動

家族構成や家族の役割を調べ発表することに抵抗を感じる子がいる場合には、全員が同じ調べ方をしなくても良い方法を考えます。「自分の役割」を中心にした活動にしたり、「今の私」を中心にした振り返りの活動にしたりすることもできるでしょう。

また、家庭を通した調べ学習が不可能であれば、学校内での活動でそれぞれの自分の役割を振り返る学習も可能です。

いずれにしても、生活科で調べ、発表したことが、子どもの心の傷になるようなことはしたくないものです。

元東京成徳短期大学 教授 和田信行

Q

生活科で、子どもの主体性を伸ばす声かけをするにはどうすれば良いですか?

2019.02.19 / 主体的・対話的で深い学び、評価
回答者:元東京成徳短期大学 教授 和田信行

A

今回の学習指導要領改定のキーワード「主体的・対話的で深い学び」を進めていく上でも、生活科の目標の一つ「自立して生活を豊かにしていく」ためにも、子どもの主体性を伸ばすことは、大切なことです。主体性とは、教師に促されての義務としての学びではなく、「自ら学ぶ」ことです。

そのためには、教師の声かけが大きなポイントになります。

1 声かけ(指導)の種類

声かけは、子ども一人ひとりの評価によって行われる教師の指導行為です。つまり、目標を達成するための学習活動を良い方向に促す形成的な評価と言えるでしょう。

指導と評価は表裏一体の関係といわれます。生活科ではあまり指導という言葉は使わないようにしています。幼児教育の世界では「援助」という言葉が多く使われます。それに対し、生活科では「支援」という言葉が多く使われます。それでは、生活科では、「指導」をしてはいけないのでしょうか。指導の無い授業はあり得ませんから、指導も当然あるでしょう。

「支援」という言葉には、自ら主体的に学ぶ子どもを支え、援助したいという教師の想いが含められているのでしょう。

2 声かけ(支援)の方法・秘訣(遊ぶものをつくろうを例にして)

(1)共感……「これは面白いね。」

(2)承認……「このまま進めていけばいいよ。」

(3)賞賛……「よくできたね。」

(4)伝授……「ここは、こんな方法もあるよ」

(5)紹介……「みんな、Aちゃんのすごいよ。」

遊ぶものをつくっているAちゃんの気持ちを考えてみましょう。先生にほめられ、みんなにAちゃんのしていることを紹介してもらい、気分は最高、活動意欲が培われるでしょう。

このような声かけは、Aちゃんの活動の良さがなければ成り立ちません。つまり、子ども1人ひとりの活動の質の良さが、更に子どもの主体性を伸ばしていくのです。

元東京成徳短期大学 教授 和田信行

Q

スタートカリキュラムの朝の時間、6年生の役割で気を付けることはありますか?

2019.02.19 / カリキュラム・マネジメント、手立て、スタートカリキュラム
回答者:元東京成徳短期大学 教授 和田信行

A

1 ゼロからのスタートじゃない

スタートカリキュラムは、「なかよしタイム」(幼児期の遊びを生かした楽しい活動)、「いきいきタイム」(生活科を核にした合科的な活動)、「ぐんぐんタイム」(初めての教科の学習)などが含まれた、入学当初の教育内容の計画です。更に、朝の時間帯を「ゆったりたいむ」と呼んでおり、活動の見直しが必要になっています。

5年生の時に入学前の年長5歳児との交流活動(5・5交流)が行われます。朝の時間帯に、入学後の1年生に6年生がかかわる当番活動を計画・実施している学校も多いことでしょう。

「ゼロからのスタートじゃない」の掛け声で、「幼児期の終了までに育てたい10の姿」をもとに、就学前の教育と小学校の教育を縦のつながりで捉えようとしている時に、6年生が、入学当初の1年生を「赤ちゃん扱い」していないかという指摘があります。

2 改善策は

この活動をやめる必要はありません。6年生にとっては、最上級生としての自覚を持てる機会です。1年生への思いやりをもてる機会でもあります。1年生にとっても、入学直後の不安な気持ちを理解してもらえて、安心して学校生活がスタートできる機会でもあります。それでは、何を見直したら良いでしょうか。

(1)6年生の役割についての共通理解

6年生、6年生の担任、1年生の担任で、目的や方法についての共通理解をしておくことが必要です。1年生が自分のことは自分で出来るように導いていくことが必要です。赤ちゃんのように何でもしてあげるのでなく、困った時に相談されれば手伝うという関係をつくりたいものです。

(2)期間や方法についての改善

学校規模によって、人数や方法も変わってくるでしょうが、それほど長期間にわたって行う必要もないでしょう。朝の「ゆったりタイム」の活動は、安心して一日の学校生活ができるようにするための時間です。軌道に乗れば早めに終わらせることも可能でしょう。

この期間に1年生と6年生が顔見知りになる効果は、この時間帯だけでなく随所に見受けられるようになります。廊下歩行時、休み時間、登下校時と、6年生が声をかけてくれることが、1年生にとってどれだけ心強いことでしょう。

(3)1年生担任の存在

朝の時間帯に、6年生に学級を任せて担任教師がいない、ということはないと思います。1年生の担任も、入学式直後の朝の時間帯は、出欠席の確認や、連絡帳を見たり、個々の問題に対応したりと大変な時期です。6年生の当番活動により、みんなが笑顔でこの時間帯を過ごせると良いでしょう。

元東京成徳短期大学 教授 和田信行

Q

学校行事として学年でやることが決まっています。行事にむけての取り組みを生活の授業として置き換えてよいのでしょうか。

2018.11.26 / 生活科全般
回答者:摂津市立鳥飼小学校 教頭 三好達也

A

置き換えることは可能です。

ただし、その取り組みが学習指導要領に記されている生活の目的と合致していることが前提となります。次期学習指導要領では各教科等との関連を積極的に図ることが求められます。つまり、教科横断的な学習がより求められるともいえます。

学校行事を各教科等との連携を図った学習の発表の場であると捉えれば、生活科の学習で学んだことが生かされることはむしろ学習を深めることにつながるのではないでしょうか。

生活を何にでも使える「便利な時間」として使うのでなく、どのような力を育てたいのか、どのような学びをさせたいのか明確な目標をもって学習に取り組み、その学びが他教科との連動性のなかでよりよい学びにつながることがポイントとなるでしょう。

摂津市立鳥飼小学校 教頭 三好達也

Q

評価についてどのような点に気をつけなければいけないのでしょうか。

2018.11.26 / 評価、生活科全般
回答者:摂津市立鳥飼小学校 教頭 三好達也

A

次期学習指導要領解説「5 学習評価の在り方」には「生活科では,特定の知識や技能を取り出して指導するのではなく,児童が具体的な活動や体験を通す中で,あるいはその前後を含む学習の過程において,文脈に即して学んでいくことから,評価は,結果よりも活動や体験そのもの,すなわち結果に至るまでの過程を重視して行われる。」と記されています。

つまり、学びのプロセスが重要であり、プロセスの中で子どもたちが何を学んだのかを見取らなくてはなりません。

そのためには、評価計画が非常に大切です。まずは、単元目標を立てましょう。単元目標=単元全体を通した評価といえます。つまり、子どもたちは、「単元目標」というゴールに向けて学習を進めていくのです。

ゴールが決まれば、そこに到達するために必要なことは何か考えましょう。それが、時間ごとの目標となります。ここで役に立つのが「生活科の内容の全体構成」です。内容ごとに「知識及び技能の基礎」、「思考力,判断力,表現力等の基礎」、「学びに向かう力,人間性等」といった視点で評価に対する重要な視点を示しています。

評価計画は単元計画そのものです。ゴールを明確にすることで1時間の授業で大切にすべきポイントが整理されるとともに子どもたちの成長がより明確に見えてくることと思います。また、子どもを評価するにあたって重要である指導と評価の一体化を図ることができるのです。

また、実際の評価場面においては、単純に「数多く見つけた」や「たくさん発表した」といった視点だけではなく、その「質」についても十分に見取るようにしましょう。

『小学校学習指導要領(平成29年度告示)解説 
生活編』P.28

摂津市立鳥飼小学校 教頭 三好達也

Q

町探検など、地域から学ぶ単元がありますが、私の街には適した商店街がなく、自然観察ができるような自然がありません。そういった地域ではどのように学習を進めていったらいいのでしょうか。

2018.11.26 / 季節のフィールドワーク、町探検、日常生活・地域/家庭とのつながり
回答者:摂津市立鳥飼小学校 教頭 三好達也

A

町探検には「何を」しにいくのでしょうか。まず、目的は何かということから考えてみてはどうでしょう。

例えば「内容(3)地域と生活」について学習する場合はどうでしょう。商店街がなくても地域の施設やスーパー、工場などでも学習活動をおこなう行うことができるのではないでしょうか。

他にも「(6)自然や物を使った遊び」であればどのようなことが考えられるでしょうか。地域に自然がなくても校外学習と関連付けて公園に行き、落ち葉やどんぐりを集めることもできるのではないでしょうか。

また、学校の畑などで育てているものを生かしたり、異学年交流の視点も付け加えたりして、5年生が育てたお米の藁をもらってもよいかもしれません。

さらに言えば、校庭の片隅にある私たちが雑草と思っている草も季節によって変化をします。その中にも子どもにとって学びの多い教材が潜んでいるかもしれません。

物の有無ではなく、学習目標に正対し、教える側も生活科のキーワードでもある「気付き」のアンテナを高め、学習の質を高めていっていただけたらと思います。

摂津市立鳥飼小学校 教頭 三好達也

Q

クラスのことで気になることや心配なことがあります。同僚や管理職に相談したいのですが、どうもみなさん忙しそうでなかなか話しかけづらいです。

2018.11.26 / 学級経営(教科・領域等を問わず)、学校経営(教科・領域等を問わず)
回答者:川崎市立小倉小学校 校長 赤松 理

A

担任の先生は、もちろんクラスの子どもたちの成長に責任をもちます。同じく、学年のスタッフは学年の子どもたち、学校は学校に通うすべての子どもたちの成長に責任を負います。自分のクラスの子どもの心配事は、学年スタッフや学校全体で共有すべきことです。

共有すべきことは、心配事やトラブルばかりではありません。日常的なクラスの状況をお互いに知っておくことが大事になります。そのためには、打ち合わせや学年会での情報共有も効果がありますが、なんといっても日々のコミュニケーションが肝心です。お互いが忙しいからこそ、職員室、廊下の立ち話も活用しましょう。立ち話で心配事やトラブルをすべて解決することは難しいかもしれません。しかし、日頃のちょっとした情報共有の積み重ねがあれば、相談された同僚も日頃の様子を下地に解決策を一緒に考えることができます。

情報の共有は会話だけでなく、実際にお互いのクラスを見合うことで一層深まります。学年全体や複数クラスの合同授業、朝の会や教科交換などを実施するとよいでしょう。お互いのクラスの様子を知るためには効果的です。

管理職は学年スタッフのそうした取り組みを掌握し適切な助言をする立場にあります。管理職もまた日々のコミュニケーションを重視し情報の収集に努めるべきですが、スタッフからの積極的な働きかけも大切です。

いずれにせよ、日常の情報を共有することで心配事やトラブルに対して早期に適切な対応が見出せるものです。

川崎市立小倉小学校 校長 赤松 理

Q

よく、同僚性を高めるようにと言われるが、具体的にはどのようにすればよいのでしょうか。

2018.11.26 / 学級経営(教科・領域等を問わず)、学校経営(教科・領域等を問わず)
回答者:川崎市立小倉小学校 校長 赤松 理

A

同僚性という言葉の定義はいろいろあるようですが、ここでは学校における同僚性を「学校教育目標を共通の目標として、協働的に教育課程を推進していく組織としての姿」と考えましょう。

同僚性を高めるとは、学校教育目標の達成を共通のねらいとして、「教師一人ひとりの力量や方法の違いを認め合い、助け合いながら子どもたちの成長の為に各々が技量を高める」と言い換えることができるでしょう。

その為には、校内研修や授業研究などの機会を充実したものにすることはもちろんですが、日常においてもお互いの授業を見合う機会をもつことも大切です。

まるまる1時間を見ることが難しくても、わずかな時間でよいので、隣の教室や他学年の教室をのぞいてみましょう。低学年の担任なら6校時、中高学年の担任なら専科の授業など学級事務に使いたいところですが、5分か10分を割愛することはできるのではないでしょうか。その担任ならではの言葉かけや板書、掲示といった教育技術的な観点から、その授業が学校教育目標または、その学校の研究テーマに沿って行われているかどうかという視点まで、ポジティブに幅広く構えて見えたものをメモや口頭で伝えるようにします。

先輩から見て、ここは助言が必要だと思うところは直接本人に伝えましょう。よいと思ったところは付箋に記して、職員室や印刷室などの掲示板に貼っていくのも「教師一人ひとりの力量や方法の違いを認め合い、助け合いながら子どもたちの成長の為に各々が技量を高める」事につながっていくでしょう。

この取り組みには、まず職員全体が学校教育目標の達成を意識し、それに沿った研究テーマの具現化に向けた授業を全教育課程において心がけていくことが前提となります。また、この試みは、前述のコミュニケーションを深めていくこととも関連していきます。

川崎市立小倉小学校 校長 赤松 理

Q

新学期から1年生の担任を任されました。年度が始まる前、新1年生が入ってくる前にやっておくべきことはどんなことがあるでしょうか。他の学年の先生にも協力してもらって、より豊かな学習活動を組み立てたいと思っています。

2018.11.26 / 学級経営(教科・領域等を問わず)、学校生活(教科・領域等を問わず)
回答者:川崎市立小倉小学校 校長 赤松 理

A

学校を「学びの場」としてとらえ、その環境を整えておくことです。言うまでもなく、その学校の全職員は、学校の教育目標が示す子ども像をめざして在籍するすべての児童にかかわっていきます。1年生が学ぶ環境は1年生の担任だけが整えていくものではありません。入学期に代表される生活科を中心としたスタートカリキュラムによる学びは、6年間の学びの土台として学校全体で検討し編成されるものです。

スタートカリキュラムに限らず、学年目標、年間を通して他学年とかかわりをもつ学習単元などを1年生の担任から積極的に開示し、全職員で6年間の成長を支えるという共通認識をもつようはたらきかけることが大切です。もちろんこうした共通認識は学校長のリーダーシップの元にすでに築かれているべきものではありますが、新学期を迎えるにあたって、1年生の担任からの具体的アプローチが大切であり、それを受け入れる体制ができていることもまた、大切なことです。

このように、すべての職員がすべての児童を育てるという共通認識が成立した職場であるならば、「学校たんけん」の前に職員打ち合わせで「1年生が迷惑をかけますが……」などという見当違いなことわりは不要で、その活動のねらいと概要を伝えることが打ち合わせ事項になるはずです。それを受けた他学年の担任やそのほかの職員は、どのように1年生を迎え入れるかを考え、1年生担任に逆提案をする、というところまでできれば理想的です。めざす価値はあるのではないでしょうか。

川崎市立小倉小学校 校長 赤松 理

Q

新1年生を迎えるにあたって「ゼロからのスタートではない」とは、どういうことですか?

2018.11.26 / スタートカリキュラム
回答者:元東京成徳短期大学 教授 和田信行

A

1 縦のつながりの重視へ

今回の改訂では、縦の接続が重要視されています。つまり、幼児教育と小学校教育の接続です。学習指導要領の総則にも生活科にも接続のことが大きく取り上げられています。なかでも、生活科は、この接続の中核となる役割を果たすことが求められています。

従来型のスタートカリキュラムと、今回の改訂によるスタートカリキュラムにはどのような変化があるのでしょうか。スタートカリキュラムの初期の目的は、小1プロブレムへの対応、学校生活への適応が大きなテーマでした。しかし,幼稚園や保育所と小学校との交流活動も進んだり、幼稚園や保育所側のアプローチカリキュラムも徐々に浸透したりして、スタートカリキュラムの価値付けが見直されてきています。

2 子どもの成長と学びの連続性

今回の改訂では、幼児期からの子どもの成長と学びの連続性をどのようにつなげていくかが大きな課題です。幼児期に育てた力を小学校の教育に連続的につなげていくことが求められます。「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」にあるように、小学校教育は幼児期に育った力を引き継いでスタートしなくてはなりません。「ゼロからのスタートではない」ということは、入学当初の1年生に対し、それまでの成長や学びを生かした教育をしなければならないということです。

3 スタートカリキュラムの見直し

従来型のスタートカリキュラムを具体的に見直す。

(1)学校生活適応型のみのスタートカリキュラムからの脱却

・トイレ指導 ・給食指導 ・廊下歩行指導 ・靴箱の使い方指導 ・登下校指導

(2)幼児期の経験や育ちを理解し生かす(10の姿)

・生活リズム ・集団活動 ・話す、聞く ・協同性 ・主体性 ・遊び方等

(3)幼児教育で育った力としての「心情・意欲・態度」の引き継ぎ

(4)新1年生の実態に応じたカリキュラムへの変更・改善

・なかよしタイム、いきいきタイム、ぐんぐんタイムのバランスの見直し

・期間の見直し ・合科的・関連的な指導 ・カリキュラムマネジメント

元東京成徳短期大学 教授 和田信行

Q

生活科では、「安心・安全」をどのように取り上げればよいのでしょうか?

2018.11.26 / 生活科全般、安心・安全
回答者:元東京成徳短期大学 教授 和田信行

A

生活科の教科目標(1)に、「〜生活上必要な習慣や技能を身に付けるようにする。」とあります。生活上必要な経験には、健康や安全にかかわることが含まれています。また、学年目標の(1)には、「~集団や社会の一員として安全で適切な行動をしたりするようにする。」
とあります。

具体的には、「学校と生活」において、学校内の安全な生活や登下校時の安全の問題があります。

児童を取り巻く環境が変化するなか,学校の中の生活だけではなく、登下校も含めて、楽しく安心で安全な生活ができるようにすることが課題となっています。子ども 110 番の家や児童の安全を見守る地域ボランティアの人などと顔合わせをしたり、挨拶をしたりするなどのかかわりを具体的に行いたいものです。なお,安全については、自然災害、交通災害、人的災害の三つの災害に対する安全確保に配慮することが必要です。

また、「地域と生活」では、子どもたちが地域で安全に生活ができるようになることが大切です。そのためには、安全な場所がわかり、安全な遊び方や生活の仕方を身に付けることが大切です。そして、より大切なことは、地域の人とのかかわり方です。地域の人との接し方を身に付け、地域の人と顔見知りになることにより安心・安全な生活が実現することになります。地域たんけんでお世話になった人へ手紙を書いたり、発表会に招待したりといったかかわりを深める活動を取り入れたいものです。

元東京成徳短期大学 教授 和田信行

Q

生活科では、三つの柱をどのように考えればよいのでしょうか?

2018.11.26 / 資質・能力の三つの柱、生活科全般
回答者:元東京成徳短期大学 教授 和田信行

A

資質・能力の三つの柱は、「知識及び技能の基礎」、「思考力,判断力,表現力等の基礎」、「学びに向かう力,人間性等」と示されています。生活科の教科目標は、この三つの柱と連動しています。教科の特質や目指すところを端的に示したのが教科目標です。生活科の目標は次のとおりです。

具体的な活動や体験を通して、身近な生活に関わる見方・考え方を生かし、自立し生活を豊かにしていくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

(1)活動や体験の過程において、自分自身、身近な人々、社会及び自然の特徴やよさ、それらの関わり等に気付くとともに、生活上必要な習慣や技能を身に付けるようにする。

⇒「知識及び技能の基礎」(生活の中で、豊かな体験を通じて、何を感じたり、何に気付いたり、何が分かったり、何ができるようになるのか)

(2)身近な人々、社会及び自然を自分との関わりで捉え、自分自身や自分の生活について考え、表現することができるようにする。

⇒「思考力・判断力・表現力等の基礎」(生活の中で、豊かな体験を通じて、何を感じたり、何に気付いたり、何が分かったり、何ができるようになるのか)

(3)身近な人々、社会及び自然に自ら働きかけ、意欲や自信をもって学んだり生活を豊かにしたりしようとする態度を養う。

⇒「学びに向かう力・人間性等」(どのような心情、意欲、態度などを育み、よりよい生活を営むか)

この教科目標を単元開発の基本として考えていけばよいでしょう。

元東京成徳短期大学 教授 和田信行

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