高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

ルドルフ・シュタイナー展 天使の国
2014.06.03
高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.058特別号 教科書掲載作家の作品に出会える展覧会>
ルドルフ・シュタイナー展 天使の国

 ルドルフ・シュタイナー(1861~1925)はオーストリア帝国(現在のクロアチアのあたり)出身の人物です。哲学博士であった彼は、生前より思想家としてゲーテの研究などで高い評価を得ており、ヨーロッパ各地において数多くの講演を行ったことが知られています。また、自身の開発した教育プログラムを実践する、自由ヴァルドルフ学校を設立し、指導に当たりました。12年一貫方式となる、この教育プログラムは,シュタイナー教育と呼ばれ、現代の日本にも、その理念に基づいた学校がいくつか存在しています。
 シュタイナーは「概念で思考するのと同じように、色彩や形体で思考することができなければならない」と語り、黒板にカラフルなドローイングを描きながら講義を進めました。シュタイナーの弟子は講義内容の記録に努め、約4000の講義録が現存しています。初期の講義録は速記官が講義中の発言を文字に直した形式が主ですが、やがて、弟子の一人が、講義の直前に黒板に黒い紙を張り、板書をそのまま保存することを思いつき、実行しました。晩年の約6年間に描かれた、およそ1000点の黒板絵が保存されています。
 ここで紹介する黒板絵には、弓状の黄色い形体と6つの赤い流線形が描かれています。以下は、ある講義でシュタイナーが月について語った言葉です。この言葉と黒板絵とを結び付けて、シュタイナーがどのような思想を持っていたか考えてみてはいかがでしょうか。
 「月を眺めるときには、こう言えなければなりません。今見ているこの月は、宇宙の進化の中で、みんなが非個人的な知識を個人的な課題にすることを忘れたり、個人的な欲求を愛に変えて社会生活の中で全人類の一般的な課題にすることを忘れてしまったりしたら、人類がそういう人ばかりになったら、地球がどんな存在になってしまうかを示しているのだ。 いわば地球存在のカリカチュア(※)を示しているのだと。」

(編集部)

 

※カリカチュア:事物を簡略な筆致で誇張したり,滑稽化したりして描いた絵。

 

<展覧会情報>

  • ルドルフ・シュタイナー展 天使の国
  • 2014年3月23日(日)~7月27日(日)

展覧会概要

  • ルドルフ・シュタイナーはゲーテ研究家、思想家、哲学者、教育者として知られた人物です。本展では彼の講義の板書をそのまま記録した黒板ドローイング、残された建築やデザインなどから、その考えや実践に迫ります。

ワタリウム美術館ico_link

  • 所在地 東京都渋谷区神宮前3-7-6
  • TEL 03-3402-3001
  • 休館日 月曜日(7/21は開館)

その他、詳細はワタリウム美術館Webサイトico_linkでご覧ください。