学び!と社会

学び!と社会

授業のスキル 2 資料活用の指導
2019.05.14
学び!と社会 <Vol.02>
授業のスキル 2 資料活用の指導
日本文教出版 編集部

1.資料活用の意義

 社会科における資料活用についてですが、新学習指導要領解説では「社会的事象等について調べまとめる技能」に位置付けられています。具体的には、問題解決に必要な社会的事象に関する情報を集める技能、収集した情報を社会的な見方・考え方によって読み取る技能、読み取った情報を問題解決に沿ってまとめる技能であり、児童生徒自身が身に付けられるように繰り返し指導することが大切となります。

 対象となる資料は以下の通りです。

○第3学年及び第4学年…地図帳や各種の具体的資料

○第5学年…地図帳や地球儀、統計などの各種の基礎的資料

○第6学年…地図帳や地球儀、統計や年表などの各種の基礎的資料

 ここでポイントとなるのが、社会認識力を育むためには資料(事実)に基づいて考える力を育てることが重要となります。想像だけで話し合うのでは意見がかみ合わず、論理的な思考力が育ちません。資料活用が子どもの思考を促し、判断させる力を身に付ける上で重要となります。

 以下に紹介する活用法を参考に子どもたちの実態を踏まえ、必要に応じて意図的・計画的に指導していくことが大切となります。

2.資料活用の方法

 資料活用と指導のポイントを「グラフ」「地図」「写真」に分けて紹介します。

(1)グラフの読み取り方

 小学校でよく出てくるグラフには、棒グラフ、折れ線グラフ、帯グラフ、円グラフがあります。グラフなど統計資料は「基本情報⇒全体⇒細部」の順で進めます。初期に扱う棒グラフ・折れ線グラフを例に読み取りのポイントを説明します。

①「表題」及び「年度」や「出典」から何を表したグラフか。

②縦軸、横軸の「単位」は何か。

③「数値や変化」を読み取る。

④「数値や変化」のわけを考え、調べる。

 ③の「変化」の読み取りで大切なことは、まず増加や減少という大きな傾向を読み取ることです。次に大きく変化しているところに着目します。二つのグラフが併記されている時は、共通点や相違点を探すことが大切です。そして④の、なぜ、そのような変化があるのかを調べ、理由を考えていきます。そのことで、単に資料活用だけで終わるのではなく、考える力を育てることができます。

(2)地図の読み取り方

 社会科の教科書では地図がよく出てきますが、地図の活用には大きく二つあります。

 一つ目は場所の様子を表す活用法で、地形図や土地利用など主題図と呼ばれる地図の読み取りです。特定の課題について読み取ることができるので、地域の全体像がわかりやすくなります。地図を読み取る際に欠かすことのできない基本情報としては「タイトル」「凡例」「方位記号」「縮尺」の確認です。

 二つ目はいくつかの主題図の比較から発見し考察する活用法です。例えば、県の様子を表す三つの主題図(地形、土地利用、交通)を関連付けて読み取る場合です。地形図と土地利用図から平野部は水田に利用されていること、また、交通図との関連から住宅が集まっている地域は交通が発達していることを読み取ります。ここから「どうして水田は平野部に広がっているのだろう。」「交通が便利なところに住宅地が集まっているのはなぜだろう。」と考えるようになります。

 このように、地図に着目することで発見したり関連付けから考察に繋げたりすることができるようになります。

(3)写真の読み取り方

 景観や様子をとらえる写真の読み取りについても、グラフと同様に「基本情報⇒全体⇒細部」の順で進めます。指導のポイントは以下の通りです。

①写真の活用を通して修得させたい教師側の意図やねらいを事前に明確にしておく。

②子どもが写真を読み取る上で欠かすことのできない基本情報を確認する。

③写真全体からとらえられる事柄や傾向を読み取る

④写真の細部に目を向け、見つけた事実からそのわけを考え、調べる

 なお、②の写真が撮影された場所の位置、時期、資料のタイトルや解説文などの確認が①の教師の指導の意図やねらいと繋がっていることがポイントになります。

3.地図帳の積極的・効果的な活用

 新学習指導要領では、これまで4年生で配布されていた地図帳が3年生に繰り上がります。その趣旨は、地図帳が社会的事象の見方・考え方の一つである「空間的な見方・考え方」を育てる上で欠かせない資料だからです。地図帳の積極的な活用には教師が事前に地図帳の活用場面を知る必要があり、子どもたちが地図帳に慣れ親しむ指導にこれまで以上に力を入れていくことが大切となります。指導のポイントとしては以下の通りです。

○地図帳を配布したときや各学年の年度初めに、地図帳の構成や使い方を指導する。

○地図帳に掲載されている「索引の見方」について、実際に地名の位置を探す活動を通して具体的に指導する。

○方位、距離と縮尺、土地の高さ、地図記号など、地図を読むときの約束ごとを、必要に応じて指導する。

○地図からその場所のイメージをふくらませる力を養う。

○地図から必要な情報を読み取る技能を指導する。

○土地の高低を読み取る技能について具体的に指導する。

○縮尺で距離を調べる技能を指導する。