小学校 道徳
小学校 道徳

1.主題名
信じ合う友達 B[友情、信頼]
2.教材名
友の命(東京書籍)
3.主題設定の理由
友達とは、喜びを共有したり、困った時に助け合ったりするかけがえのない存在である。話をしたり、一緒に活動したりする日々の生活の中で、相手の性格や人柄が分かるようになる。すると相手を尊重したり、認めたりする気持ちが生まれ、友情は深まっていく。高学年になると、初めて出会う人とも関わろうとする姿が見られる。そして自分と相手の考えの違いを受け入れ、人間関係を深めていこうとする。お互いの理解が深まり、相手を大切に思う気持ちは、信頼関係に繋がる。
今回の学習を通して、どこまでも友達を信じる気持ちの素晴らしさを感じ、友情を深めることの良さを味わわせたい。
4月にクラス替えがあった。「今までは話したことがなかった人だったけれど、話してみたら盛り上がった。」と友達の輪が広がる喜びを感じる児童が多く見られた。休み時間になると「外でクラス遊びをしよう。」「今日は委員会の仕事があるから、一緒に行こう。」と男女関係なく声を掛け合っている。学習におけるグループの話し合いでは「友達は自分と考えが違っていたから、なるほどと思った。」と違う意見も受け入れて、自分の考えを深めようという意欲が見られる。
そこで本時は、相手の良さを認めたり、相手を思いやったりすることが信頼関係に繋がることに気付き、改めて「友達がいて良かった。」という気持ちを感じさせたい。
正直者のピシアスは、疑い深い王様に憎まれて、首を切られることになった。ピシアスの仲良しである友達のデモンは、自分が代わりに牢屋に入っている間、ピシアスを外に出してほしいと王様に提案をする。ピシアスはデモンに期日までに「必ず戻って来る。」と約束をするが、当日ピシアスは戻って来ず、王様は二人の友情を蔑む。そこへピシアスが戻ってきて、お互いに、相手のことを一番に考えて声を掛け合う。その姿を見た王様は二人の真の友情に感心し、二人を許す。
どこまでもお互いを信じ続ける二人の友情は、疑い深い王様の心を変えていく。お互いのことを第一に考え、信じ合う姿を通して、真の友情について考えを深めたい。
4.指導について
時間や場面が変わる時、登場人物の気持ちを考えさせたい時に間をあけ、児童が教材と向き合い、じっくり考えられるように教材を提示する。登場人物の心情に合わせたBGMを活用し、気持ちの変化を捉えやすくする。
ピシアスとデモンの真の友情に触れた時、心の底から「友達って素晴らしいな。」と感じる王様の気持ちに共感できるように、疑い深い王様の心情を考える発問とした。
みんなで話し合う中で、王様の気持ちに共感したり、王様になりきってそれぞれが自分の考えを伝えたりするために、発問に合わせて、机の位置を変える。
本時で目指す児童を具体的にイメージするために、評価の指針を作成した。児童の発言は表に記録し、児童の学習状況や道徳性に係る成長の様子を把握する時の評価に生かす。また記録を生かした板書をすることで、児童が考えを整理できるようにする。
5.教材分析
場面 |
王様の内面 |
発問 |
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①1行目~8行目 |
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②9行目~15行目 |
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③16行目~30行目 |
・なんとずうずうしいやつだ。・うそをついたことがないなんて、ありえない。・牢屋から出してしまったら、絶対に逃げるに決まっている。 |
・デモンの願いを聞いたとき、王様はどのようなことを考えたのでしょう。 |
④31行目~40行目 |
・面白いやつだ。友達のために命をかけるのか。・大王と賭けをするなんて、度胸がある。・この賭けは私が勝つに決まっている。 |
・デモンの提案を聞いて、王様はどのようなことを考えたのだろう。 |
⑤41行目~50行目 |
・デモンはなんて愚かなのだ。後悔をしても、もう遅い。友達を信じなければ良かったと思うだろう。デモンは命を落とすことになるから可哀そうだ。・ピシアスはラッキーだ。友達を裏切り、帰ってくることはないだろう。・友達なんて意味がないものだ。デモンは騙されている。 |
<発問1> |
⑥51行目~54行目 |
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⑦55行目~70行目 |
・ピシアスに騙されて、なんというばか者だ。・それでもまだ、ピシアスのことを信じているなんてありえない。・友達のために命をかけるなんて信じられない。・やっぱり人は信じられない。信じても良いことはない。裏切られるだけだ。 |
<発問2> |
⑧71行目~87行目 |
・相手のことを一番に考え続ける姿がすごい。・命が関わっているのに、二人で交わした約束を守ったことが信じられない。・お互いを信じる気持ちがあって感動した。・友達のために命をかけるなんて、自分にはできない。・もう人を疑うことは、やめよう。・こういう友達がいたらいいな。・友達がほしい。 |
◎発問3 |
6.本時の指導
ピシアスとデモンの互いを信じ合う姿から、真の友情に気付く王様の気持ちを話し合う中で、互いに理解したり、支え合ったりして深まる、友情の素晴らしさを感じる心情を養う。
学習活動(主な発問と予想される児童の反応) |
○指導上の留意点 |
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導 |
1 自分と友達の関わりについて考える。 |
○コの字型の座席で、互いの意見を聞き合うようにする。 |
展 |
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③「なんというりっぱな友達どうしだ。」と声を掛ける王様は、どのようなことを考えていたのだろう。 ・二人で交わした約束を守ったことが信じられない。 |
○ピシアスの「早くおりて」、デモンの「君にかわりたかった」という、お互いのことを第一に考えていることが分かるセリフを提示してから、発問をする。 |
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3 友達がいて良かったと感じた経験を振り返る。 |
○普段の授業の座席に戻し、自分と向き合う時間を確保する。 |
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終 |
4 「信頼・友情」に関する詩を紹介する。 |
○「信頼・友情」に関する本の中から詩を紹介する。 |
①ピシアスとデモンの互いを信じ合う姿を見て、友達の良さを感じる王様の気持ちについて考えている学習状況を把握する。(発言、観察)【発言記録表】
②友達がいて、本当に良かったと感じた経験を振り返り、友達の良さについて改めて考える学習状況を把握する。(観察、ワークシート)【発言記録】
7.指導と評価の指針
項目 |
期待する「児童の学び」の例 |
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(1)道徳的諸価値について理解する |
価値理解 |
信じ合うピシアスとデモンの姿を見て「なんというりっぱな友達どうしだ。」と感心する王様の気持ちを問うことで、友達と互いに信頼し合う関係の素晴らしさに気付く。さらに友達の良さを認め、よりよい人間関係を築こうとする気持ちを理解する。 |
人間理解 |
友達のことを理解したり、支え合ったりすることは良いことだと分かっていても、上手くいかないことがあることを理解する。そのような状況を乗り越えようという思いの大切さや、乗り越えることで、友情が深まる良さがあることに気付く。 |
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他者理解 |
時には人を疑いたくなる気持ちは誰にでもあることに気付く。真の友情とは「お互いのことを理解している。」「相手のことを考えて行動する。」「友達を信じる気持ちがある。」「お互いを磨き合う。」等、人それぞれであることを理解する。 |
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(2)自己を見つめる |
これまでの友達との関わりを振り返り、友達がいて良かったことを思い起こさせ、みんなで共有する。より友情を深めるために、「あの時、こうすれば良かった。」と課題に気付いたり、今までの自分はどのようなことを大切にしてきたのかを考えたりする。 |
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(3)物事を多面的・多角的に考える |
ピシアスとデモンの姿から、お互いにうそをつかない誠実さや、相手のことを第一に考える思いやりを持つことが、信頼関係の土台となっていることを理解する。信じ合う友達はA「正直、誠実」、B「親切、思いやり」や「相互理解、寛容」等の内容項目と関連していることに気付き、考えをより深めることができる。 |
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(4)自己の生き方についての考えを深める |
相手のことを考えて行動できたり、互いに支え合ったりした具体的な経験や体験を想起し、その時に感じた気持ちを思い出すことで、友達の良さを改めて理解する。また今後も学び合う中で協力したり、互いに高め合ったりする中で、より良い人間関係を築きたいという心情をもつ。 |