学び!とPBL

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生徒国際イノベーションフォーラム②
2020.08.20
学び!とPBL <Vol.29>
生徒国際イノベーションフォーラム②
三浦 浩喜(みうら・ひろき)

1.グループワーク

図1 ファシリテートするマヤさん(オバマ前大統領の妹) 「生徒国際イノベーションフォーラム2017」2日目は、ハワイのEast-West Centerプログラム開発ディレクターのナムジ・スタイナマンさんのファシリテーションで混在グループによるワークショップ「Shaping the Future We Want」を実施しました。集団で、マインドマップのような「問題/解決策の木」を創る作業を通して、何が原因でどのような問題が起きて、どんな解決策があるのかを話し合うというものです。ディスカッションのテーマは、①気候変動、②エネルギー問題、③難民と移民の危機、④変わりゆく時代における教育、⑤メディアのあり方、⑥少子高齢化、の6点です。
図2 グループワークの活発な様子 それぞれテーマごとの問題とその解決方法について、グループで「Your Issue」「Causes of Issue」」「Effects of Issue」「Solutions to Issue」の順で話し合い、その成果を模造紙にとりまとめました。英語で行ったこともあり、自分の言いたいことを発言できないもどかしさを感じた生徒も多かったようですが、言語サポーターやファシリテーションの方の援助で、なんとか自分たちの意見をまとめていた様子も見られました。むしろ英語力以上に「表現できる自分の思い」を持っているかどうかが勝負になることに、多くの生徒達が気づいたようでした。

2.生徒ラウンドテーブル

図3 ラウンドテーブルには丸いダンボールが用意された 生徒ラウンドテーブルは、地方創生イノベーションスクールの取り組みを通して、これまでの学びの過程と、そこで培った(もしくは培えなかった)力を語り合い、聴き合うコーナーです。33テーブルで約230人の中高生たちが自らの学びの軌跡について報告し、全ての生徒が学びと省察を通して自らが身につけた、伸ばした、気づいた能力を語り見つけました。テーブルのチームは全て、国も地域も異なる生徒7、8名で構成し、生徒たちの英語レベルを加味して日本語報告のミックスチームも構成しました。異文化を背景にもつ中高生たちが互いの学びと省察を交流し、共有し合うことで、グローバル・コンピテンシーの萌芽を感得する機会となりました。
 活動の最後に、トルコの生徒が「英語を恐れずに話そう! 間違えてもいいではないか!」と声を発しました。英語力を磨くこともグローバル社会では重要ですが、それ以上にグループにどう貢献できるかを考える、自分の意見を述べるために翻訳機を使ってでも表現するなど、いろいろなスキルを発揮していくことの方が大事なのではないかと考えます。

3.異文化交流パーティー

図4 異文化交流パーティーの様子 異文化交流パーティーは、東北クラスターが企画を担当し、Skypeで連絡を取り合いながら、各国、各クラスターからダンスなどの出し物や写真の提供を求めるなどして、進めてきました。交流のために、本フォーラムを構成する3色のTシャツや飲食物、リストバンドなどが準備されました。
 1日目夜はウェルカムパーティーとして、アイスブレークを行い、各国の伝統文化を知り、その後のフォーラム全体のコミュニケーションを円滑に進める目的で企画されました。
図5 エストニアの高校生によるダンス 当日は、230人もの生徒達が一堂に会し、始まる前からパーティーへの強い期待が感じられました。会う人ごとにハイタッチをして挨拶をするハローゲーム、各国の歴史や文化を知るクイズ、ダンスパーティーでは、トルコやエストニア、ドイツなどの伝統的なダンスが紹介され、全員で楽しく踊りました。
 会場は3色のTシャツの華やかさで満ち、若者達のエネルギーを実感する一時となりまた。2日目夜のパーティーは、各クラスターの出し物を披露するメインイベントでした。
図6 ニュージーランド高校生によるハカ ニュージーランドチームの出し物は、民族衣装に身を包んでの本格的なハカの披露で、会場は圧倒的な迫力で満たされ、全員で教わったハカを踊りました。また、福井大附属中チームからは合唱が、福井高校チームからは元気なダンスが、和歌山─トルコクラスターや隠岐島前─エストニアクラスターからは日本と各国の高校生が入り交じって日本の伝統芸能などが披露され、国際協働を象徴する場となりました。
図7 福井県高校生のダンス 一通りの出し物が終わり、次に白いバルーンとTシャツへのメッセージの書き込みタイムとなりました。あっという間にメッセージで埋め尽くされたこのバルーンへの書き込みは次のフォーラムへの道標となるはずです。生徒達は限られた時間の中で1人でも多くの仲間にメッセージを託そうとし、また、メッセージを受け取っていました。
図8 互いのTシャツにサインする高校生たち 2階の一室には、2日間を通して交流スペースを開設しました。日本の伝統の畳の間が準備され、いつでも寝そべることができました。また、けん玉や紙風船などの日本の伝統的な遊びが紹介され、各地から持ち寄った観光などに関する本のコーナーも設けられました。

4.フォーラムとパネルディスカッション

図9 白い球体に全員でサイン フォーラムでは、研究者・教員などの大人チーム、そしてクラスターごとの生徒チームに分かれ、これまでの議論をふまえて、「生徒共同宣言」の内容について意見をまとめました。生徒共同宣言は、和歌山チームが中心となって原案を作成し、各クラスターの意見を集約し、作成したものです。宣言の内容は各クラスターの活動がふまえられており、議論しやすい内容となりました。
 最後のパネルディスカッションでは、鈴木寬代表のモデレートにより、この前のフォーラムの代表者が議論された内容を報告し、「生徒共同宣言」に関して議論しました。各代表からは宣言を充実させる積極的な意見が多数出され、後日共同宣言に盛り込まれることになりました。ステージのバックにはICT機器によってリアルタイムに参加者のコメントが表示され、会場が一体となりました。