小学校 社会

小学校 社会

「医療に生かされる情報ネットワーク」(第5学年)
2022.02.18
小学校 社会 <No.032>
「医療に生かされる情報ネットワーク」(第5学年)
東京都江戸川区立松本小学校 校長 髙瀬雄二

1.単元名

「医療に生かされる情報ネットワーク」(第5学年)

2.目標

 我が国の医療と情報との関わりについて情報の種類、情報の活用方法などに着目して最先端の医療情報技術を取材しまとめる中で、ビッグデータやAIについて各種資料で比べたり、インターネット等で調べたりして医療における情報活用の現状を捉えられるようにする。情報を生かして発展する産業が、国民生活に果たす役割を多角的に考え表現することを通して、情報技術の活用はさまざまな産業を発展させ国民生活を向上させていることを理解できるようにする。その中で、主体的に学習問題を追究・解決しようとする態度や情報化の進展に伴う産業の発展や国民生活の向上について考えようとする態度を養う。

3.評価規準

【知識・技能】
 情報の種類、情報の活用の仕方について聞き取り調査をしたり映像や新聞などの各種資料を調べたりして、必要な情報を集め読み取り、産業における情報活用の現状を理解している。調べたことを図表や文などにまとめ、大量の情報や情報通信技術の活用はさまざまな産業を発展させ、国民生活を向上させていることを理解している。

【思考・判断・表現】
 情報の種類、情報の活用の仕方などに着目して問いを見出し、産業における情報活用の現状について考えを表現している。情報を活用した産業の変化や発展と人々の生活の利便性の向上を関連付けて、情報を生かして発展する産業が国民生活に果たす役割を考え、学習したことをもとに産業と国民の立場から多角的に考えて、情報化の進展に伴う発展や国民生活の向上について考え表現している。

【主体的に学習に取り組む態度】
 大量の情報や情報通信技術の活用について、予想や学習計画を立てたり、学習をふり返ったりして主体的に学習問題を追究・解決しようとしている。

4.本単元の指導にあたって

①教材について
 企業のフィリップスが開発したeICUを活用して、現在の医療で課題となっている遠隔地医療や新型コロナウィルス感染症治療対策の課題解決に役立っていることについて知る。その中で、高度最先端医療や高度医療機器の操作について、専門の医者が遠隔地より診断し、診療の支援をするシステムについて理解を深める。そして、情報を活用した産業の変化や発展と、人々の生活の利便性の向上を関連付けて、情報を生かして発展する産業が国民生活に果たす役割を考えようとする態度を育てる教材として位置付ける。

②学習過程について
 学習問題を2段階に設定することで内容が焦点化され、現在の情報ネットワーク技術をより身近に感じられるようになる。また、どのように調べ、どのように探究すると現実の情報ネットワーク技術について調べられるか知ることができる。インターネットの検索エンジンだけでは、真実をより鮮明に捉えられないことを現実のこととして理解することができるようになる。

③指導と評価について
 全7時間扱いの全ての時間で三つの観点の一つずつを評価することにより、児童一人ひとりに寄り添った評価ができる。また、その評価を次時の学習に役立てることができる形成的な評価となり得る。

④子どもの実態について
 現在GIGAスクール構想の推進に伴い各校でタブレットPCが一人一台貸与されている。しかし、その情報技術が現実の社会でどのように役立っているのか、あまり理解していない。そこで、実際の医療現場の現実を示すことで情報技術について興味関心を高めることができると考える。

5.単元の指導計画

学習のねらい

子どもの活動と内容
◆…主な問い ○…主な学習活動
?!…子どもの発言

評価規準の具体例
◎…資料や参考文献
■…指導上の留意点

1

<遠隔医療の現場から>
今までの生活経験から気付いたことや疑問をもとに学習問題をつくり、学習計画を立てることができる。

◆医者はどのように診察しているのだろう。
○この病院(eICU導入)の医者や患者の様子から気付いたことを話す。写真資料から気付いたことや疑問を話し合い、学習問題をつくる。

学習問題につながる子どもの疑問例
?血圧や心拍数等を記録している
?患者の様子はどうなの
?記録したデータは何に役立てるの

【主体的】自分の生活経験と資料を照らし合わせながら気付きや疑問を抱き、学習問題をつくろうとしている。(発言・ノートの記述)

〈学習問題〉患者の情報は、eICUを取り入れることで、どのように活用して医療に生かされているのだろう。

○学習問題に対する予想をし、学習計画を立てる。
◎スマートフォンなどで身体情報を確認する人との認識のズレを整理し、技術の進化や情報を日常的に記録することに着目させる。

2
3

<情報活用する医療>
医療データを活用することでもたらされる医療の変容について捉えることができる。

◆医者は、患者をどのようにして遠隔診察しているのか。
○コンピュータやAI情報について調べる。
!お父さんは、検温機能をスマートウォッチに入れた
!心臓の動きや、血圧も記録することができる
?医者は、記録したデータをどのように活用するのだろう
○患者の生活記録を診察に生かす医者の取り組みを調べる。
!患者のデータが細かく記録されている
!患者が説明できないことも、医療データから知ることができる
?情報が多すぎて管理することが大変そうだ。工夫があるのか

【知・技】医療データが診察に活用されていることを理解する。(発言・ノートの記述)
◎記録されるデータ
◎医者の診察の様子
◎医者、企業の話
■記録したデータを活用する事例を示し、医療データが診療にもたらすことについて考えさせる

4
本時

<eICUの活用>
eICUで医療データを活用し、現在の医療の変容について捉えることができる。

◆eICUを活用して、病院はどのようなことに役立てているのか。
○病院と企業が連携して医療データの管理を行っている様子を調べる。
○他の産業と同じで、医療も人手不足が深刻であることをつかませる。
!新しい技術を活用するために、高い情報技術をもっている企業と協力している

さらに考えたい問題につながる子どもの疑問例
?新しい技術を活用した事例は他にないか
?新しい技術はどのようなものが病院で取り入れられているのだろうか

【知・技】情報を蓄積・活用するために、病院と企業とが連携してシステムを構築していることを理解する。(発言・ノートの記述)
【主体的】既習事項をもとに、新たな疑問を見出し、問いを立てようとしている。(発言・ノートの記述)
◎医者不足資料
◎病院と連携企業
◎企業が担う情報医療システムの構築
■病院と企業が連携して情報を活用するシステムを構築してきたことを捉えさせる

〈さらに考えたい問題〉eICUを取り入れることで、医療のどのような課題が解決されるか。

5

<AIを活用して進化する医療現場>
医療データを活用することで、予防医療の展望について捉えることができる。

◆病院で活用されている新しい技術にはどのようなものがあるのだろう。
○病院や患者の状況に合わせて活用されるシステムについて調べる。
!オンライン診療はニュースで見た
!離島で手術を受けることができる
!診察の記録を病院同士で共有して、より正確な診察をすることができる
!医者と患者の負担を減らせる

【知・技】病院や患者の置かれている状況に合わせて、新しい技術が活用されていることを理解する。(発言・ノートの記述)
◎新型コロナウィルスのニュース記事
◎オンライン診療を行う医者(写真)
◎オンライン診療を受ける患者(写真)
◎ロボットによる遠隔手術
◎医療情報ネットワーク
■AI診療

6

<医療への情報技術活用の実態と課題>
医療への新しい技術の導入や普及の様子について調べ、実態と課題を捉えることができる。

◆新しい技術は、どれくらい普及しているか。
○これまで調べてきた新しい技術の現状と課題を調べ、蓄積された情報は患者の個人情報であり厳重に管理することを押さえる。
!深刻な医者、看護師の人手不足を解決するための技術も開発されている

【知・技】医療における新システムの導入や普及の課題解決のために、病院や企業が連携して取り組んでいることを理解する。(発言ノートの記述)
◎医療データを活用 する医療の現状と課題について
■資料から個人情報管理や人材育成等の課題があることに着目させたい

7

<これからの医療>
学習してきたことをもとに、これからの医療、特に情報技術を取り入れた医療のあり方について考えたことを話し合うことができる。

◆これからの医療にとって大切なことは何だろう。
○医者、患者、企業の三つの立場から、これからの医療について話し合う。
!蓄積された患者の情報によって病気の原因や発生時期をより正確に把握することは、医療の質を向上させることにつながる(予防医療)
!高額な機器をもつ人ともてない人、使える人と使えない人で、格差が生じる(デジタルディバイド)
!情報の保護について、企業や医者は慎重に取り組まないと新しい技術が十分に生かされない

【思・判・表】学習してきたことをもとに、これからの医療の在り方について考えたことを表現している。(発言・ノートの記述・成果物)
■これまで学習してきたことをもとに、よりよい医療の在り方を模索する

6.本時の学習

①目標
eICUで医療データを活用し、現在の医療の変容について捉えることができる。

②学習展開

主な学習活動・内容

指導の工夫と教師の支援

資料

1 フィリップスのeICUについての動画を視聴してからさまざまな疑問を出し合う。
?どのような病院で利用されているの
!遠隔地や医者のいない村でも活躍しそう

○前時の学習で学習した、フィリップスのeICUを使う病院について思い出させる。

・各児童のタブレットPC
・フィリップスのeICUの資料及びDVD動画

2 eICUの利用のされ方について予想する。
?どのような病院で利用されているの
!遠隔地や医者のいない村でも活躍しそう

eICUを活用して、病院はどのようなことに役立てているのか

!専門の医者がいなくても診療が受けられる
!一人の医者で多くの病院で診療できるね

○小グループを組み、eICUで便利になりそうなことを予想させる。

3 eICUの実際について資料から読み取る。

○病院と企業が連携して医療データの管理を行っている様子を調べさせる。

4 読み取ったことから感じたことや考えたことを話し合う。
!他の産業と同じで、医療も人手不足が深刻である
!新しい技術を活用するために、高い情報技術をもっている企業と協力している

さらに考えたい問題につながる子どもの疑問例
?新しい技術を活用した事例は他にないか
?新しい技術はどのようなものが病院で取り入れられているのだろうか

5 医者のインタビュービデオを見る。
!看護師の手間が少なくなる(CT写真を長い距離運ぶなど)
!導入するときにお金がかかる

6 ビデオや資料からわかったこと、eICUについて優れている点・問題点をノートにまとめ、発表する。
!誰でも同じ情報を共有できる
!違う病院でも共有できる
!患者の待ち時間が減る
!個人情報の取り扱いに注意が必要
!導入にたくさんのお金がかかる

7 本時のまとめをする。

【さらに考えたい問題】eICUを取り入れることで、医療のどのような課題が解決されるか。

8 本時の学習の感想を書く。

◆次時は身近なeICUシステムの実際について学ぶことを知り、次時への見通しをもたせる。

9 次時の予告をする。

③本時の評価
【知・技】情報を蓄積・活用するために、病院と企業とが連携してシステムを構築していることを理解している。(発言・ノートの記述)
【主体的】既習事項をもとに、新たな疑問を見出し、問いを立てようとしている。(発言・ノートの記述)

7.資料