小学校 算数

小学校 算数

場合の数〔ならび方や組み合わせ方を調べよう〕(第6学年)
2022.06.29
小学校 算数 <No.017>
場合の数〔ならび方や組み合わせ方を調べよう〕(第6学年)
奈良県大和高田市立磐園小学校 教諭 土井孝文

1.単元名

場合の数〔ならび方や組み合わせ方を調べよう〕(第6学年)

2.単元の目標

 順列や組み合わせについて、起こりうる場合を落ちや重なりがないように調べる方法を理解し、事象の特徴に着目し、落ちや重なりがないように順序よく筋道立てて考えるとともに、多面的に検討した過程を振り返り、学習したことを生活や今後の学習に活用しようとする態度を養う。

3.評価規準

【知識・技能】
 順列や組み合わせについて、起こりうる場合を調べるには、ある観点に着目したり、図や表などに表したりすればよいことを理解し、落ちや重なりがないように、起こりうる場合を順序よく調べることができる。

【思考力・判断力・表現力】
 起こりうる場合を調べるのに、事象の特徴に着目し、図や表などを用いたり、項目を記号に表したりして、順序よく筋道立てて考えている。

【主体的に学習に取り組む態度】
 起こりうる場合について、落ちや重なりがないように、図や表などを用いて順序よく調べたことを振り返り、学習や生活に活用しようとしている。

4.本単元の指導にあたって

 本単元では、日常の事象について、起こり得る全ての場合を適切な観点から図や表などを用いたり、記号に表したりして分類整理し、落ちや重なりがないように調べることができるようにすることをねらいとしている。順序よく筋道を立てて調べる際には、項目を記号に表すことのよさを実感させながら、調べたことを振り返り、学習や生活に活用しようとする態度を育成することも大切であり、中学校の確率での学習にもつながっていくため、意識しながら展開していきたい。
 起こり得る場合を順序よく整理して調べる際に、事象をノートに書き記しながら調べていくことが予想されるが、ノートに児童が思いつくままに列挙していくときの課題として、落ちや重なりが生じやすく課題解決に時間がかかってしまうことが考えられる。ノート上で試行錯誤しながら考えることはもちろん必要であるが、記号に表すことができ、さらにその表された記号を画面上でタップすると、移動させて表や樹形図にしやすく設定された指導者用デジタル教科書(教材)機能を活用し、児童が操作することで、落ちや重なりが生じることなく事象を効率よく整理して調べることができると考えた。分類整理していく過程で、図や表などを用いたり、項目を記号などに表したりするよさに児童自身が気付き、規則を見つけて正しく並べたり、整理して見やすくしたりして、誤りなく全ての場合を明らかにしていくことが必要であり、そのような資質・能力を育成することを目的として指導に当たった。

5.単元の指導計画

学習のねらい

おもな学習内容

1

2

ならび方を、落ちや重なりがないように順序よく考え説明することができる。

・4人で写真を撮るとき、1人を左はしの位置にした場合のならび方を考える。
・ならび方を調べる方法をまとめる。

デジタル教科書
1人1台端末

3

ならび方を、落ちや重なりがないように、順序よく調べることができる。

・10円玉を3回投げたときの、表と裏の出方の起こりうる場合を、図を用いて調べる。

デジタル教科書

4

条件に合った場合を、順序よく筋道立てて考え、説明することができる。

・条件に合った体育館への行き方を調べる。

デジタル教科書

5

組み合わせ方を、落ちや重なりがないように順序よく考え説明することができる。

・4つの組でバスケットボールの試合をするとき、試合数の組み合わせ方を考える。
・組み合わせ方を調べる方法をまとめる。

デジタル教科書
1人1台端末

6
本時

組み合わせを、落ちや重なりがないように、順序よく調べることができる。

・5種類のケーキから、3種類を選んで買う場合の買い方を調べる。
・4枚のカードから3枚選んだ場合のならび方を調べる。

デジタル教科書
1人1台端末

7

学習内容の理解を確認し、より確かなものにする。

・「わかっているかな?」「まちがいやすい問題」「たしかめポイント」に取り組み、学習内容をより確かなものにする。

デジタル教科書

6.本時の学習

①ねらい
 ならび方や組み合わせ方を調べる際、落ちや重なりなく調べるために観点を決め、図や表を用いたり、名前を記号化して端的に表したりして、順序よく整理して考えている。

②指導の実際
【課題発見~めあてをつくる】

 授業の導入では、教科書教材である買い物の場面で、5つのケーキの中から3つのケーキを選んで買う場面を想定して提示した。授業の最初には、「昨日までとちがうところ」と板書した。児童には、まず、本時の学習で着目するべきところはどこかを意識・発見させる。
 本時は、単元「場合の数」の最後の時間であり、児童は毎時間、様々な見方・考え方を働かせながら学んでいる。前時は、与えられたものすべてについての組み合わせを考えたが、本時では、与えられたものの中から、必要なものを選んで組み合わせる場合について、落ちや重なりがないように順序よく考えていく。
 児童が、「すべての中から“選んで”組み合わせる方法」を考えていくことに気付いたところで、めあてを「落ちや重なりがないようにケーキの買い方を考えよう」と設定し、展開していった。めあてについては、①既習と比べてちがうところはどこか? ②新しく着目したいところはどこなのか? を発見させ、児童自ら課題を設定できるように意識して進めた。

T:今日の問題で着目したいところはどこ?
C:落ちや重なりがないように調べないといけないから……。
C:昨日の方法でできると思うけど何かちがうね。
C:買わないケーキもあるね?
T:選ばないということ?
C:めっちゃあるんやけどどうしたらいいのかな?
C:5種類の中から3種類を選ぶ!

【見通す】
 児童から「5種類の中から3種類を選ぶ」という意見が出たところで、自力解決に入っていった。ここでは、デジタル教科書内のケーキの絵や記号を動かすことができる機能を用いて進めていった。解決の途中では、児童から「樹形図で考える」や「表を作ってもいいですか?」という発言があったため、黒板の見通しのところに記載し、共有していった。

C:9通りありそう?
C:10通りくらいあるんじゃない?
C:いや、もっとありそう。
C:うん、もっとある! もっとある!
C:図で考えてみてもいいですか?

【問題を解決する】→ デジタル教科書(児童による操作)

(画像1)デジタル教科書の機能を使って考えを伝え合う様子

 児童は、考えたことをつぶやきながら、しばらく一人で考えていった。ペアで考え、一人がケーキの名前を読み上げて、もう一人がデジタル教科書にその組み合わせで並べるという方法をとっている児童もいた。(画像1)
 デジタル教科書の中には、ケーキの絵を動かしながら、図や表に整理していける機能がある。また、このケーキの絵を記号に変換できる機能もあり、本時の目標である「落ちや重なりなく調べるために観点を決め、図や表を用いたり、名前を記号化して端的に表したりして、順序よく整理して考える」ための手段として、児童が自分に合ったタイミングで活用できるようになっている。自力解決の時間で、1つ1つのケーキの絵や図をノートに書いていくとかなり時間がかかり、本当に考えたいところで時間がなくなってしまいがちになるが、デジタル教科書を用いると、タブレットの画面上に絵や記号を自分で動かしながら、樹形図などの図や表を作成することができるので、本当に考えたいところや議論に時間をとることができる。ICT機器を用いることによって、自力解決の時間を効率的に使うことができた。

C:3つ一緒やけど順番が入れ替わってるのは?
C:それは一緒、一緒。
T:何かわかったなと思ったら、ノートに書いていきましょう。

~中略~

―― C(A)との会話 ――
C:先生、10通りできた。
T:10通り? じゃあ、ノートにも記録してみよう。
C:考えを先にノートに写しとくわ。
―― ノートに書いている間に、Aのタブレット上の考え方を画面に映す。 ――
C:えっ? 9通りしかない! あと1つどれやろう?
T:Aさんの考え方を画面に映しますね。どう?
C:あれ? 8しかない?

(画像2~6)デジタル教科書の機能を活用して整理する様子

(画像2)

(画像3)

(画像4)

(画像5)

(画像6)

 デジタル教科書の機能を活用することによって、(画像2)から(画像5)へと考えが整理されていっている。特に、(画像4)から(画像5)への変化は、選び方が10通りである、と答えを求めたが、落ちや重ないかをもう一度確かめるため、いちばん左のケーキを固定して整理し直し、確かめている様子である。一度考えたものをもう一度始めから並び替える際には、デジタル教科書の機能を使うと瞬時に消したり、同じ絵や図をコピーしたりすることができるのでノートに書き直すよりも効率的である。一度考えた絵や図は、スクリーンショットなどで画像として保存しておくと再度考えを共有することができる。また、絵を記号化する機能を用いて考える児童もいた。(画像6)

【考えを共有する】→ デジタル教科書(大型モニタに映す)
―― 児童の考えを画面に映して説明させる。 ――
C:シを固定するといい。
C:それをどんどん変えていく!
C:それだとバラバラで順番がわからなくなるから。
C:順序よくってやった。
C:樹形図!!
T:重なっている選び方がないかも見てね。
C:シ‐ロ‐チ と シ‐チ‐ロ は一緒!
C:もっと見やすい並べ方があるよ。
T:3つ選ぶ方法を考えるということは、2つを選ばないという考え方もできるね。
C:あ、ほんとだ。

(画像7)

【学習を振り返る】
 全員で解決方法について話し合い、考えを共有した際に、落ちや重なりなく、順序よく調べていく際には、いずれかのケーキを固定して考えること、さらには、5つのうち3つのケーキを選ぶということは、2つのケーキを選ばないということと同じ考えで求められることに児童らは気づき、本時のめあてを達成することができた。
 2問目は、教科書の問題を活用し、4つのカードから3枚のカードを選んで3けたの整数をつくる問題とした。1問目の問題の考え方からの違いに着目させ、数字の組み合わせだけでなく、組み合わせた後に、ならび方を考える必要があるということに着目させたかったためである。この問題についても、児童はデジタル教科書の機能を使って、考えていった。1問目と同じく、タブレット端末上では数字のカードを実際に操作できるため、ノート上で書いて考えるよりも、落ちや重なりなく調べていくには効率的に進められた。今まで、ノート上で考える際のデメリットとして、何度も消して書いてという作業に時間がかかることがあったが、タブレット端末には、カードの移動、削除などがスムーズにできるよさがあった。また、カードそのものをコピーすることができることもメリットである。

7.指導を終えて

【本時の学習について】
 落ちや重なりなく場合の数を調べ上げる際に、デジタル教科書の絵や図を動かすことができる機能、絵や図を記号化して動かすことができる機能を活用するため、本時では、指導者用デジタル教科書(教材)を用い、手元で操作させたり、大型テレビに考えを映して発表させたりした。
 自力解決の段階で、初めはノート上で起こり得る場合の組み合わせを考えさせた。ノートで考えるときには重なって同じものを数えてしまっているなど「重なり」がわからなくなりそうなときでも、デジタル教科書では、一度数えた事象は、視覚的に確認できるため気付くことができる。また、数えたかどうか見落としている「落ち」についても、デジタル教科書の機能を使うと視覚的に確認することができ、本時のめあてにせまることができた。

【デジタル教科書、ICT機器とノートの関係】

(画像8)タブレット端末で考え、ノートに記録を残す様子(本時)

(画像9)タブレット端末とノートを併用して考える様子(第1時)

(図10)本時の板書

 デジタル教科書やICTの機能を用いた学習で指導者自身が悩む課題として2つある。1つ目は、タブレット端末上での操作だけで授業が終わってしまうことがあるということ、2つ目は、タブレット端末上に自分の考えを書き込むと、授業後に手元にいつでも見られるものとして残らないということである。この課題を改善するための方法として、自力解決や発表の際には、デジタル端末上で表現をしたとしても、自分の考えや授業の振り返りはノートにしっかり書くということを併用していきたい。こうすることによって、児童はノートを見ていつでも既習事項を振り返ることができ、次の学習につなげることができると考え、本時でも実践した。今後、ICT機器を活用した授業が普及しつつある中でも、ICT機器の使用は目的ではなく、有効な活用法の1つとして意識し、以前からのノート指導も大切にして、いつでも既習事項の振り返りができるようにしておくことを大切に指導したい。(画像8、9)普段から、紙媒体の教科書とデジタル教科書をうまく併用しながら学習することで、ICT機器が考えるための目的ではなく手段の1つとして日常的に算数の学習に定着していくことを願いたい。