高等学校 情報

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情報の科学 アルゴリズムとプログラム(第1学年)
2023.11.28
高等学校 情報 <No.009>
情報の科学 アルゴリズムとプログラム(第1学年)
兵庫県立福崎高等学校 戎原進一(2023年4月より兵庫県立姫路東高等学校に所属)

※この実践記録は2021年3月28日に執筆されたものです。

1.はじめに

 全日制普通科高校の本校は、1学年4クラス(うち総合科学コース1クラス)で全校生徒460名である。教科「情報」は、第1学年で「社会と情報」と「情報の科学」を開講しており、総合科学コースが「情報の科学」を履修している。
 総合科学コースの生徒は3分の2程度が男子生徒で、明るく元気な生徒が多い。また、グループワークや実習を積極的に取り組む生徒が多い。一方で、座学のみの授業になると集中力の持続が難しい。また、3分の2程度の生徒はタイピング速度が遅く、コンピュータ操作が苦手である。
 アルゴリズムについて中学校で学習した生徒は3分の1程度であり、フローチャート記号の意味や使い方を理解していない生徒が多くいた。順次・反復・分岐のアルゴリズムの基本構造を理解し、フローチャートを記述できるようにしたいと考え、この授業を実施した。

2.単元名

「アルゴリズムとプログラム」(実施学年:第1学年)

3.単元の目標

  • フローチャートやアルゴリズムの基本構造について理解する。
  • 問題文に合わせてアルゴリズムをフローチャートで記述する。
  • アルゴリズムに合わせてプログラミングができる。
  • プログラミングを問題解決に生かす方法を理解する。

4.単元の評価規準

ア 知識・技能

イ 思考力・判断力・表現力

ウ 学びに向かう力・人間性

・身近な手順をフローチャートで表現すことができる。
・フローチャートやアルゴリズムの基本構造について理解している。
・簡単なアルゴリズムのプログラムを作成できる。

・フローチャートで表された処理手順の意味を読み取ることができる。
・フローチャートとプログラムについて、それぞれの対応を考えられる。

・興味をもって、体験的な学習や授業に積極的に取り組んでいる。
・アルゴリズムとプログラムについて関心を持っている。
・グループでの活動に積極的に参加している。

5.単元の指導と評価の計画

(ア:知識・技能/イ:思考力・判断力・表現力/ウ:学びに向かう力・人間性)

学習内容

学習活動

評価の観点

評価の方法

1

アルゴリズムとフローチャート

身近な手順をもとにアルゴリズムの考え方とフローチャートの書き方を理解する。

行動観察
ワークシート

2

アルゴリズムの基本構造

フローチャートやアルゴリズムの基本構造について学び、簡単なプログラムを考える。

ワークシート

3

基本構造とプログラム

順次・反復・分岐の構造をもとに表計算ソフト(VBA)を利用してプログラムを作成し、実行する。

ワークシート

4

基本構造とプログラム

順次・反復・分岐の構造をもとに表計算ソフト(VBA)を利用してプログラムを作成し、実行する。

ワークシート

5

プログラムの作成

手順に従ってプログラム(VBA)を作成することにより、問題解決について学ぶ。

行動観察
ワークシート

6.本時の目標【2限目】

  • フローチャートやアルゴリズムの基本構造について理解する。
  • フローチャートを用いて簡単なプログラムを考える。

7.本時の流れ【2限目】

時間

学習活動・内容

指導上の留意点

評価

導入
5分

前時の復習
・コンピュータ室のパソコンにログインする手順をフローチャートで記述する。


・教科書に記載されているフローチャート記号を参考にしながら記述させる。
・時間をかけなすぎないように注意する。


ウ 行動観察

本時の学習内容の理解
3つの基本構造を学ぶことを理解する。

展開1
10分

順次
・「おはよう」「こんにちは」「おやすみ」の順に画面にメッセージを表示するプログラムをフローチャートで記述する。


・上から下へ記述された順に処理を実行する「順次」を理解させる。


ア、イ
ワークシート

・練習問題に取り組む。

・時間があれば、練習問題を進めるように指示する。

ア、イ
ワークシート

展開2
15分

分岐
・30点以上であれば「合格」、それ以外であれば「不合格」と画面にメッセージを表示するプログラムをフローチャートで記述する。


・教科書の例題を利用して書き方をイメージさせる。
・条件により処理を選択する「分岐」を理解させる。
・定期考査では同様の処理を行っていることを説明し、身近な処理であることを意識させる。


ア、イ、ウ
行動観察
ワークシート

・他者とフローチャートを見比べ、違いを理解する。

・解答が複数あることを理解させる。

ウ 行動観察

・練習問題に取り組む。

・時間があれば、練習問題を進めるように指示する。

ア、イ
ワークシート

展開3
15分

反復
・数字が0から100になるまで、25ずつ数字を増やしながら画面に表示するプログラムをフローチャートで説明する。


・処理を繰り返し実行する「反復」を理解させる。
・25mプールで何回泳ぐと100mになるかを考えさせ、身近な処理を意識させる。


ア、イ、ウ
行動観察
ワークシート

・数字が0から1000になるまで、50ずつ数字を増やしながら画面に表示するプログラムをフローチャートで記述する。

・50mプールで何回泳ぐかを考えさせる。

まとめ
5分

学習目標の確認
3つの基本構造の理解度を確認する。


・理解度を計るためにFormでアンケートを作成し、配布する。


ウ 行動観察

8.まとめ

 多くの生徒はアルゴリズムとプログラミングに対して、「記号の意味が分からない」「中学校で分からなかった」「難しそう」などのマイナスなイメージを持っており、苦手意識が強かった。しかし、今回の授業でフローチャートの学習から段階を踏むことで、生徒は物事を整理して考えることができるようになり、最終的にはVBAを用いたプログラミングへと進むことができた。

 特に今回の授業では、次の点を心掛けた。①アルゴリズムと生活を関連させる。②考える時間を長くとる。プログラミング的な考え方が日常生活で、どのように役立つのかを時間をかけて生徒に考えさせることで、生徒の苦手意識が軽減されると考えている。
 今回の授業案は、文部科学省が提供している「高等学校情報科『情報Ⅰ』教員研修用教材(本編)」の第3章を参考に作成したものであり、令和4年度から実施される「情報Ⅰ」の中でも取り入れることができる。令和7年度から実施される大学入学共通テストに向けて、アルゴリズムの理解は非常に重要なことであり、時間をかけて丁寧に指導するべきであると考えている。

 生徒の評価では、ルーブリックと教育用クラウドサービスによるフォームを利用しており、その評価を成績の一部に取り入れている。教員はルーブリックを用いて生徒の活動を評価し、生徒は教育用クラウドサービスを利用したフォームで自己評価を教員へ送信している。GIGAスクール構想により教育用クラウドサービスの導入が進むことが予想されるため、有効な評価方法になると考えている。

【関連資料】