高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)
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山形県立博物館
須川埋没林の化石木(館蔵) 山形県立博物館には、教科書にも掲載中の「縄文の女神」と呼ばれる土偶が展示されています。他にも山形県の自然や歴史、くらしについてなど、多岐にわたるテーマを取り扱っています。今回は「第6回 やまはくセレクション展」を中心に、山形県立博物館の魅力について、担当の学芸員の方にお話を伺いました。
一般的に土偶はムラの祭祀に使われたとされ、妊娠をした女性像を表しているものがほとんどです。本品も同じく、胸やお腹の形状から妊産婦を表現したものと思われます。高さは45㎝もあり、完形土偶の中で一番の大きさを誇ります。さらに、八頭身美人と称されるように均整のとれた形は見る人を魅了してやみません。今まで大英博物館など海外での展覧会にも多く出品されています。
本品は、縄文中期の東北南部で出土する土偶に典型的な「出尻形」の形態を成しています。特徴ですが、まずおかっぱ頭には頭頂部に2つ、後頭部に4つの穿孔があります。また顔面の表現はありません。胸部はW字で表現され、そこからへその窪みまで正中線があります。腰部には幾何学的な文様が施され、中央部に五角形の区画が見られます。脚部は角錐状に安定的で、前後に横長の沈線がひかれています。足裏には焼きむらを抑えるために抉りが見られます。
ある工業デザイナーは、お尻の曲線から直線的な脚部への流れは、現在の車のデザインにも通じると評価しています。また、現代アート作品の中には本品のオマージュも作られています。発掘から30年たった今でも、多方面の分野の方々から注目されています。
国宝・縄文の女神(西ノ前遺跡出土土偶)
本館では、県のなりたちから現代にいたる自然と人々との営みとその変遷を、自然と人文に分けて、地学・植物・動物・考古・歴史・民俗の各部門をとおして紹介しています。
山形県立博物館では、所蔵する国宝土偶「縄文の女神」を第2展示室内の国宝展示室にて常設で展示しております。土偶の全身を全周で見られるように展示しております。展示台の照明には、山形県産の有機EL照明を採用しています。また目に見えない部分ですが、展示台自体が地震対応構造になっております。
三島通庸佩刀(館蔵)
そこで、山形県立博物館では3月2日(土)から5月12日(日)まで、地学・植物・動物・考古・歴史・民俗・教育の7つの分野から厳選した資料を展示する「第6回 やまはくセレクション展」を開催いたします。
本展では7つの分野の担当者がそれぞれテーマを設けて展示して、ハイイロオオカミやギンケイ、カモシカなど様々な動物のはく製、三島通庸ゆかりの佩刀、須川で発見された化石木など、今まさに大注目の資料をご覧いただけます。
さらに、大好評いただいた昨年のプライム企画展「高等女学校と実科高等女学校―青春の学びと生活―」に関連して、江戸時代の女子教育に使われた教科書、ドラマで注目を集めた牧野富太郎博士も収集に関わった山形大学農学部の植物標本なども展示されます。
この春は山形県内の自然や歴史のまだあまり知られていない一面について、新発見も再発見もできる山形県立博物館に来てみてください。
ハイイロオオカミ(動物・新収蔵)
キツネヤナギ(新収蔵・展示予定)
展覧会情報
会期:2024年3月2日(土)~5月12日(日)
会場:山形県立博物館
公式サイト:https://www.yamagata-museum.jp/
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)年末/年始(12月28日~1月4日)
開場時間:9時~16時30分(入場は16時まで)
観覧料:一般300円 学生150円 高校生以下無料
- 令和4年度版「高校生の美術1」p56.
土偶[土/高さ45cm 肩幅16.8cm]紀元前3,000~紀元前2,000
山形県立博物館蔵