学び!と社会2
学び!と社会2

「社会科教育」という言葉を大切にしてほしい。私はこれからの教育を担う学生や若手の先生方にそう語りかけてきた。社会科の学習を通してどのような教育を行うのか、どんな人間を育てるのかを念頭に置いて、日々の社会科授業づくりに臨んでほしいからだ。
ところが…言うは易く行うは難し。
社会科教育を専門としてきたはずの私が単純な迷路に迷い込んでしまった。「ガンから命を守る食事の仕方」に関する2冊の書籍と出合い、どちらの主張が正しいのか迷路に迷い込み困り果ててしまったのである。
世界的権威ノーベル賞候補の緊急提言。野菜スープの力。
ガン患者も常備野菜スープで延命。野菜の力と恵みはファイトケミカル、その栄養を効率よく吸収するには生野菜より煮て食べる野菜スープ!
酵素栄養学の権威による全く新しい栄養学の知見。食事は生野菜から。
朝食の基本は生野菜と果物だけ。健康な体の源は酵素の力。豊富なビタミンやミネラルも酵素がないと宝の持ち腐れ。酵素は生野菜や果物にたっぷりと含まれるが熱に弱く、加熱した料理や加工食品には含まれていない。
細胞のガン化を防ぐには野菜の力が効果的である。それは両者共通だが、煮て食べるのか生で食べるのか。前者はノーベル賞候補の世界的権威の前田浩氏、後者はアメリカ最先端の酵素関係の理論に基づく鶴見隆史氏の主張であり、両者は真っ向から対立している。
でも待てよ…。
いずれの主張も“野菜の栄養を効率よく吸収して免疫力を高める”ことがその根底にあり究極の目的である。
前者は「栄養の吸収学」、後者は「酵素栄養学」という各分野の専門的な立場から持論を展開している。そのどちらも正論のはず。
であるなら、まず生野菜。次に野菜スープ。この順でどちらも食べればガンに対する免疫力は必ずアップするに違いない。
答えはAかBかの二者択一ではない。AもBも正解という場合もあり得るのだ。この「答えが一つとは限らない」というのが社会科の問題解決である。
“社会生活の様々な場面で日々直面する問題に対して多面的・多角的に考え、適切に判断できる”人間を育てる。これこそが社会科教育の役割である。
野菜の食べ方と健康な体づくりの関係をめぐる素朴な問いに直面し、社会科的な問題解決の大切さと社会科教育の役割を再認識した身近な出来事である。