中学校 社会 地理

中学校 社会 地理

身近な地域の調査『刈谷市南部から日本の農業を考える』(第2学年)
2015.03.16
中学校 社会 地理 <No.001>
身近な地域の調査『刈谷市南部から日本の農業を考える』(第2学年)
愛知県 中学校教諭

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

身近な地域の調査『刈谷市南部から日本の農業を考える』

2.単元の目標

社会的事象への
関心・意欲・態度

社会的な
思考・判断・表現

資料活用の技能

社会的事象についての知識・理解

学校周辺の農業について,フィールドワークや取材活動などに主体的に取り組むことができる

学校周辺の農家が大切にしていることを多角的に捉え,自分たちの生活に結び付けて将来の姿を考察することができる

フィールドワークや取材活動で得た知見を,自分の言葉でまとめたり級友に伝えたりすることができる

農業の全国的な現状や課題と地域の農業が抱えるそれとを比較し,共通点や差異を捉えることができる

3.単元の指導に当たって

(1)教材観
 農業の高齢化とそれに伴う後継者不足は全国的な課題である。その課題の解決策として国は『農事組合法人』を制度化し,日本の農業を大規模農業へ転換するよう支援を進めている。同時に,自営的な小規模農業を守り,生きがいや居場所作り,郷土コミュニティーの形成など高齢者でも農業を続けていける仕組みづくりも行われている。本校を中心とした刈谷市南部は『農事組合法人』を中心に大規模農業が展開されると同時に,産直センターへの出荷や自家用の作物を栽培するなどの高齢者を中心とした小規模農家の両方が存在する。まさに日本の農業の縮図となっており,地域から日本全体の姿を見る身近な地域の調査の目的に沿っている。

(2)目指す生徒像
・自ら問題をもち,追究を深める生徒
・学校周辺の農業が抱える問題に切実感をもつ生徒
・これからの地域農業のあり方を考え始める生徒(=郷土に愛着を感じる生徒)

(3)手立て

手立て1 生徒が自ら問題をもち,追究を深めるための手立て
ア:学校周辺で行われ,農業従事者の高齢化という問題を抱える地域農業を教材化する。
イ:学校周辺の田畑で栽培されている作物を調べたり,農家やJA,産直センターに取材や調査活動を行ったりするなど,体験的な活動を軸にした単元構想の工夫をする。

手立て2 地域の社会的事象が抱える課題に切実感をもち,これからの地域の姿を考え始めるための手立て
ア:取材や調査活動の中で,農業に携わる方と関わり,思いや願いに触れる場を設定する。
イ:取材や調査活動によって明らかにしたことを通して,仲間と関わる場を設定する。
ウ:意見交流において,切り返しなどをしたり,ゲストティーチャーを登場させたりすることで,問題を焦点化する。

4.単元の指導計画

時数

学習のねらい

生徒の活動と思考
生徒の問題

評価規準の具体例

1

◎地域の農産物を食べてみよう
・地域の農業に目を向けさせ,興味をもつ

・地域の農作物のことを意識していなかった

・何という名前の品種なのか

2

◎学区の作物調べをしよう

・大豆がとても多い

・作物調べを通して,地域の農業に興味をもち,自らの問題を見つけることができる
(関心・意欲・態度)

3

◎作物調べを通して分かったことと,分からなかったことを出し合おう

・大豆栽培をしている
『農事組合法人』ってどんな集団なんだろう

4

◎庚申塚(学校の北側)の調査を通して『農事組合法人』がどんな人たちか追究しよう

○農家への取材活動を行う
・お年寄りで農作業のできない人が『農事組合法人』に預ける
誰が利益を得ているのか調べたい

・庚申塚の調査を通して学区の農業が抱える課題を見出すことができる
(思考・判断・表現)

5

◎庚申塚の調査から分かったことと分からなかったことを出し合おう

6
7

◎JAへの取材を通して地域農業が抱える課題を明らかにしよう

○JA(営農センター)や産直センターへの聞き取り調査,取材活動
・農業では十分な収益が得られない
・地域農家は高齢化している
・地域農家の厳しい現状を受けて大規模化している

・この地域の農業が大規模化してきている背景や従事する人々の願いをあきらかにすることができる(思考・判断・表現)

8

◎JAへの取材から分かったことと分からないことを出し合おう

9

◎農業が大規模化してきていることについて考えよう

10
11

◎農業が大規模化してきている学校周辺の小規模農家について考える

○小規模農業を続ける人たちに迫る調査活動を行う

・小規模農業を続ける人に迫る調査活動ができる
(資料の活用)

12
本時

○追究したことを出し合い,小規模農家の思いや願いに迫る
・小規模農家は自分の土地を守っていきたいという思いが強い

・地域農業が抱える課題を切実に捉え,これからの農業のあり方を考えることができる。
(思考・判断・表現)

13

◎単元まとめを書こう
・単元を振り返り,農業について考えたことや調査活動を通して学んだことをまとめる

○単元まとめを書く
・小規模も大規模もこの国には必要だ
・もっと農業を活性化する方法を探したい

5.本時の学習

(1)目標
・調査結果やこれまでの学習を基に自分の考えをもち,話し合いに参加することができる。(関心・意欲・態度)
・地域農業が抱える課題を切実に捉え,これからの農業のあり方を考えることができる。(思考・判断・表現)

主な学習内容

学習活動と生徒の思考

教師の見取り・支援

○学習課題を確認する
◎農業が大規模化している学校周辺の小規模農業について考える

○前時までに追究してきたことを出し合う(話し合い)
・小規模農家が続ける理由
・小規模農業の難しさ
・大規模農業が拡大する理由
・大規模農業の難しさ

・前時までの追究を座席表に落とし,生徒の意見を十分に見取る
・左記の4点を中心に構造的な板書を心掛け,農業が大規模化してきていることを明確にする

○話し合いを深める

○小規模農業のこれからを考える(話し合い)
・小規模農業を続けることは収益面,高齢化など難しいことが多いから,徐々に衰退
・土地があるから始める人もいるのではないか

・話し合いをこれからの小規模農業がどうなるのかという点に焦点化するために,意図的に指名したりする

○ゲストティーチャーの話を聞く

○ゲストティーチャーの話を聞き,これからの地域農業のあり方に目を向ける(聞く→ひとり調べ)

・生徒の意見を聞いて感じたことを率直に語る中で,JAとして地域の農業を守っていきたいという願いを伝えてもらう

○これからの農業の姿を考える

○これからの地域農業のあり方を考える(話し合い)
・小規模も大規模もこの国には必要だ
・農業自体を活性化する必要がある

・自分たちにできることも含めて考えさせる
・どのような意見も肯定的に受け入れる