学び!と共生社会

学び!と共生社会

「交流及び共同学習」の現況を探る
2026.02.27
学び!と共生社会 <Vol.73>
「交流及び共同学習」の現況を探る
大内 進(おおうち・すすむ)

1.はじめに

 今回は、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒が触れ合い、共に活動する「交流及び共同学習」について取り上げます。「交流及び共同学習」は、すでに学校教育に定着し、さまざまな取り組みがほとんどの学校で展開されています。しかしながら「交流及び共同学習」に対して、障害がある子どもを育てている保護者の方の中で、SNSの情報などから不安や疑問を持っていらっしゃる方が少なくなく、改めて状況を確認しておく必要があると思いました。また、「交流及び共同学習」の実施率については大規模な調査が実施されていますが、質的側面については関係者からエビデンスに基づく報告が少なく、この点についても確認したいと思います。

2.学習指導要領における「交流及び共同学習」の変遷

 「交流及び共同学習」は、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒の両者にとって、経験を深め、社会性を養い、豊かな人間性を育むとともに、お互いを尊重し合う大切さを学ぶ機会となるなど、適切に運用されれば、現在の特別支援教育体制下においては大きな意義を有するものだと言えます。まず、学習指導要領の記述を中心に、交流及び共同学習の成立と目的について確認しておきたいと思います。

2004年(平成16年)以前は「交流教育」

 1998年(平成10年)に示された学習指導要領までは、「交流教育」という用語が用いられ、「交流」は努力義務としての扱いでした。小学校学習指導要領総則の「第5 指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項」の2(11)に次のような記述が認められます(*1)

 (11)開かれた学校づくりを進めるため、地域や学校の実態等に応じ、家庭や地域の人々の協力を得るなど家庭や地域社会との連携を深めること。また、小学校間や幼稚園、中学校、盲学校、聾学校及び養護学校などとの間の連携や交流を図るとともに、障害のある幼児児童生徒や高齢者などとの交流の機会を設けること。

 この記述から、この当時においては、「交流」が学校教育の包摂化というよりも地域に開かれた学校づくりという側面で捉えられていたことがわかります。

2004年以降は「交流及び共同学習」

 障害者基本法の一部改正を契機に、「交流教育」から「交流及び共同学習」へ名称と概念が変更されることになりました。

・2004年 改正された障害者基本法
 2004年に改正された障害者基本法の第16条(教育)の第3項には、「国及び地方公共団体は、障害者である児童及び生徒と障害者でない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによって、その相互理解を促進しなければならない。」と明記されています。
 交流学習には、障害のある子どもと障害のない子どもが一緒に参加して、相互の触れ合いを通じて豊かな人間性を育むことを目的とする活動という側面が強く、それに対して、共同学習には、教科等の学習に障害のある子どもと障害のない子どもが一緒に参加して、そのねらいの達成を目的とする活動という側面が強いと言えます。本来このように異なった目的の活動であったものが、高次の判断により交流学習と共同学習が一体としてあることを明示するために、「交流及び共同学習」という表現が用いられるようになったと認識しています。以後、教育行政の用語として「交流及び共同学習」が用いられることになります。
 これによって、国として「交流及び共同学習」に取り組むことが法的にも明確になり、障害のある子どもとない子どもが共に学び、相互理解を深める目的が明確化されたと言えます。

・2009・2010年特別支援学校学習指導要領(新旧移行期)
 特別支援学校の制度創設に伴い、2009年(平成20年)及び2010年(平成21年)に改訂された特別支援学校学習指導要領等が「特別支援学校幼稚部教育要領」「特別支援学校小学部・中学部学習指導要領」「特別支援学校高等部学習指導要領」の名称に統一され、「交流及び共同学習」についても計画的実施が推進されることになりました(*2)

・2012年(平成24年)
 障害者の権利に関する条約の国連における採択に関連して、日本の障害者制度改革が進められ、障害者基本法の改正等がありました。教育に関しても、中央教育審議会初等中等教育分科会で「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」が取りまとめられました。この報告には「交流及び共同学習」について、以下のような記述が認められます(*3)

 改正障害者基本法の理念に基づき、障害のある子どもと障害のない子どもが可能な限り共に学ぶことができるように配慮する観点から、「交流及び共同学習」を一層推進していくことが重要である。また、一部の自治体で実施している居住地校に副次的な籍を置くことについては、居住地域との結び付きを強め、居住地校との「交流及び共同学習」を推進する上で意義がある。居住地校交流を進めるに当たっては、幼児児童生徒の付き添いや時間割の調整等が課題であり、それらについて検討していく必要がある。また、特別支援学級と通常の学級との交流及び共同学習も一層進めていく必要がある。

・2017年(平成29年) 改訂学習指導要領
 2017年に公布された小学校学習指導要領総則「第5 学校運営上の留意事項」の2のイには、交流及び共同学習の推進を明示した以下のような記述があります。同様の記述は、平成29年告示の幼稚園教育要領、中学校学習指導要領にも認められます(*4)

イ 他の小学校や,幼稚園,認定こども園,保育所,中学校,高等学校,特別支援学校などとの間の連携や交流を図るとともに,障害のある幼児児童生徒との交流及び共同学習の機会を設け,共に尊重し合いながら協働して生活していく態度を育むようにすること。

 障害者基本法の一部改正を契機に、「交流教育」から「交流及び共同学習」へ名称と概念が変更されることになりました。

3.交流及び共同学習の実施状況

2017年の文部科学省調査から

 学習指導要領に「交流及び共同学習」が明示された2017年度に、文部科学省は「障害のある児童生徒との交流及び共同学習等実施状況」に関する調査を実施しています(*5)
 交流及び共同学習にはさまざまな形態がありますが、学校間交流、居住地校交流、特別支援学級の実施状況の結果は以下のとおりでした。

(1)特別支援学校との交流及び共同学習(学校間交流)の実施状況
 2~3割の学校が学校間交流を実施していました。実施している学校のほとんどは毎年度継続的に実施しているということですが、この時点では、まだ実施に至っていない学校が多かったことがわかります。

出典:文部科学省「障害のある児童生徒との交流及び共同学習等実施状況」に関する調査
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/10/30/1397010-3.pdf

(2)居住地校交流
 居住地校交流については、小・中学校では2~4割が実施しているが、高等学校だと大きく減少することが示されていました。

出典:文部科学省「障害のある児童生徒との交流及び共同学習等実施状況」に関する調査
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/10/30/1397010-3.pdf

(3)特別支援学級との交流
 特別支援学級が設置されている学校の約8割が実施しているが、2割ほどの学校では実施していませんでした。

出典:文部科学省「障害のある児童生徒との交流及び共同学習等実施状況」に関する調査
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/10/30/1397010-3.pdf

この調査結果からは、以下のようなこともわかりました。

  • 活動は、学校行事(98.7%)音楽、体育、図工(7〜8割)などをメインに給食、清掃、クラブ活動などで多く取り組まれており、国語や算数といった教科学習での交流は少ない傾向にある。
  • 学校段階別に見ると、中学校・高等学校と校種が進むにつれ、教科時数の確保が優先され、交流の頻度や参加範囲が減少していた。
  • 教育課程上の位置付けについては、小・中学校では「総合的な学習の時間」や「特別活動」に位置付けて実施する学校が多かった。

課題として、地域間の差や人材不足、教員の負担増などが示されていました。

文部科学省 2022年(令和4年)度公立小・中学校等における教育課程の編成・実施状況調査から

 文部科学省では毎年、公立小・中学校等における教育課程の編成・実施状況に関する調査を実施していますが、「交流及び共同学習」について、直近では2022年度の調査において扱われています(*6)

(1)実施状況
 2021年(令和3年)度の実施状況を見ると、実施している学校が8割前後になっていました。実施していない学校は2017年の調査から大幅に減少していますが、それでも2割前後の学校で未実施でした。

出典:文部科学省 令和4年度公立小・中学校等における教育課程の編成・実施状況調査
https://www.mext.go.jp/content/20240430-mxt_kyoiku01-000029047_01.pdf

(2)交流の内容(学校間交流、居住地校交流、特別支援学級との交流)
 学校間交流は、1割前後、居住地校交流は1割から3割、特別支援学級との交流は7割強で実施されていることが示されています。これらの数値は、いずれも2017年の調査結果を下回っています。

出典:文部科学省 令和4年度公立小・中学校等における教育課程の編成・実施状況調査
https://www.mext.go.jp/content/20240430-mxt_kyoiku01-000029047_01.pdf

 「交流及び共同学習」は、法的にもしっかり位置付けられ、学習指導要領に明示されてから時間も経過しています。また、文部科学省も「交流及び共同学習ガイド」(*7)を示したり、「交流及び共同学習オンラインフォーラム」(*8)を開設したりして「交流及び共同学習」のより一層の充実に努めています。国立特別支援教育総合研究所からは「『交流及び共同学習』の授業づくり」というリーフレット(*9)も発行されています。こうした経緯から、質の幅はありつつも「交流及び共同学習」の実施率は年々高まっているものと信じていたのですが、文部科学省の調査からは、そのようには進展してきていないことが示されています。

4.理念に根差した目的の追求への期待

 改めて、「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」から「交流及び共同学習」の目指すところについて確認しておきたいと思います。

(3)交流及び共同学習の推進
 特別支援学校と幼・小・中・高等学校等との間、また、特別支援学級と通常の学級との間でそれぞれ行われる交流及び共同学習は、特別支援学校や特別支援学級に在籍する障害のある児童生徒等にとっても、障害のない児童生徒等にとっても、共生社会の形成に向けて、経験を広め、社会性を養い、豊かな人間性を育てる上で、大きな意義を有するとともに、多様性を尊重する心を育むことができる。
 特別支援学校と幼・小・中・高等学校等との間で行われる「交流及び共同学習」については、双方の学校における教育課程に位置付けたり、年間指導計画を作成したりするなど交流及び共同学習の更なる計画的・組織的な推進が必要である。その際、関係する都道府県教育委員会、市町村教育委員会等との連携が重要である。また、特別支援学級と通常の学級との間で行われる「交流及び共同学習」についても、各学校において、ねらいを明確にし、教育課程に位置付けたり、年間指導計画を作成したりするなど計画的・組織的な推進が必要である。

 ここには、基本的な方向性としては、障害のある子どもと障害のない子どもが、できるだけ同じ場で共に学ぶことを目指すべきであることを踏まえて、障害のある子どもが地域社会の中で積極的に活動し、その一員として豊かに生きる上で、障害のない子どもと「交流及び共同学習」を通して相互理解を図ることがしっかり示されています。
 この理念を実現するためには、現状の教育システムにおいて通常の教育と特別支援教育が融合している状態には至っていないことから、障害の有無にかかわらず子どもたちが共に生きていくことを学ぶ機会として「交流及び共同学習」の実施率を一層高めるとともに、質の向上に向けた取り組みが不可欠だと言えます。
 しかしながら、「交流及び共同学習」を実施していない学校もあり、その質についても定量的なデータが把握できない状況にあります。
 今回、「交流及び共同学習」を取り上げたのは、私が信頼している方からのSNSでの発信で、「交流及び共同学習」に期待しながらも、それが障害のある児童生徒の保護者にとって大きな負担になっていること、学校、管理職、教員が積極的に対応しているケースばかりではないことなどが訴えられていたことに触発されたことによります。特に「交流及び共同学習」の質の側面については、グッドプラクティスは公表されているものの、具体的な課題や問題点が可視化されているとは言えない状況にあるように受け止めました。課題や問題点を広く共有して、理念の具現化に向けた対応策を探っていく方向に進んでいくことが期待されます。

5.おわりに

 「交流及び共同学習」が学習指導要領に明示されてから、すでに10年が経過しようとしています。しかしながら、文部科学省の調査結果などを吟味すると、多くの学校で積極的に取り組んでいる状況は把握できるものの、「交流及び共同学習」がすべての学校に本来の目的に即して定着するまでにはもうしばらく時間がかかるように思われました。また、その質の側面についても客観的なエビデンスが得られにくく、本来の目的にふさわしい取り組みとして障害のある児童生徒や障害のない児童生徒の成長に寄与することに対してどこまで質が高まっているか確かめにくい状況にあるようにも思います。
 「交流及び共同学習」は、単に障害のある児童生徒と障害のない児童生徒が「同じ空間」にいることではありません。「同じ場で共に学ぶ」という目的を達成するためには、質的向上、すなわち、障害の有無で線引きをしないカリキュラムの編成や適切な環境設計が求められてきます。
 日本と同様にドイツも特別支援学校をしっかりと機能させる体制を堅持していますが、障害がある子どもの通常の学校での学びの質の補償のために特別支援学校の教員を通常の学校に派遣する体制を構築するなどして「インクルーシブ教育」を充実させるための人的、物的環境を整えています(*10)
 特別支援教育対象幼児児童生徒が増大し、特別支援学校が増え続けている日本の現状において、「交流及び共同学習」の充実を図っていくことによって関係者の負担が増すことはあっても減少することは考えられません。より抜本的な体制の在り方についての議論が深められてもよいように思います。

*1:小学校学習指導要領(平成10年12月)第1章 総則
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/cs/1319944.htm
*2:特別支援学校学習指導要領等
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/tokushi/1284518.htm
*3:共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/houkoku/1321667.htm
*4:小学校学習指導要領(平成29年告示)
https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_kyoiku02-100002604_01.pdf
*5:文部科学省「障害のある児童生徒との交流及び共同学習等実施状況調査結果」
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/10/30/1397010-3.pdf
*6:文部科学省(編)『令和4年度公立小・中学校等における教育課程の編成・実施状況調査』調査結果
https://www.mext.go.jp/content/20240430-mxt_kyoiku01-000029047_01.pdf
*7:文部科学省『交流及び共同学習ガイド(2019年3月改訂)』
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/1413898.htm
*8:文部科学省『交流及び共同学習オンラインフォーラム』
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/1413898_00001.htm
*9:国立特別支援教育総合研究所『特別支援教育リーフ Vol.11「交流及び共同学習」の授業づくり』
https://www.nise.go.jp/nc/cabinets/cabinet_files/download/1079/86a29c17c9e4739e30e03f379dc05ce5?frame_id=1235
*10:Special education needs provision within mainstream education
https://eurydice.eacea.ec.europa.eu/eurypedia/germany/special-education-needs-provision-within-mainstream-education