学び!とPBL

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探究サイクルをまわして深まる探究
2026.03.23
学び!とPBL <Vol.96>
探究サイクルをまわして深まる探究
千葉 偉才也(ちば・いざや)

 昨年4月に本連載の<Vol.85>で「探究学習の課題設定を考える」という記事を配信しましたが、「課題設定の次は、どのように探究を進めていけばよいのか?」といった悩みを聞くことも少なくありません。探究学習は自由度の高い学習ですが、それゆえに悩みも尽きないものです。そんな現場の悩みに伴走しようと、先月の教員研修では、いわゆる「探究サイクル」の捉え方について参加者と考えてみました。

教職員による双葉郡子供未来会議

 東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故から、今月で15年が経ちました。震災と原発事故以降の福島県の被災地域で始まった、地域を題材にした探究的な学び「ふるさと創造学」は、本連載でもたびたび取り上げてきました。この「ふるさと創造学」に取り組む教職員の研修は「教職員による双葉郡子供未来会議」(*1)と呼ばれ、年に一度開催されています。昨年のテーマは先述の通り「課題設定」、そして今年のテーマは「探究サイクルを捉え直す」でした。

中学校学習指導要領解説 探究的な学びにおける児童・生徒の姿

探究サイクルの回転をどう捉えるか

 学習指導要領では、これまでも探究学習の説明に際して、「課題の設定」→「情報収集」→「整理・分析」→「まとめ・表現」という一連の流れを図で示してきました。この流れをらせん状に繰り返していくこと(探究サイクル)が、探究を深めることにつながるとされ、各学校ではこの一連の流れを参考に計画を策定しています。一方で、この探究サイクルを一回転させるのにどのくらいの期間をかけるのかについては明確な決まりがなく、学校現場ごとにさまざまな捉え方がなされています。私が携わった学校などでは、年間を通じて一回転させていく実践が多く見られました。

小さなサイクルを複数まわす意味

 年間で一回転させることは、とてもわかりやすいと思います。具体的には、一学期に課題設定を行い、二学期に情報収集から整理・分析まで進め、文化祭などで発表して一連のサイクルを完結させる、といったものでしょうか。他方で、年間に一回転ということは、中学校では三年間で三回転しかできないことになります。年に一回転のみで、果たして探究的な思考の「癖」が身に付くのかと言えば、そこは少し懐疑的です。探究は学校内の学習に限らず、私たちが日常生活の中でも自然に実践している営みでもあります。日々の暮らしの中で、大なり小なりさまざまな課題と向き合いながら、その課題を乗り越えるために自然とサイクルをまわしているはずです。そう考えたとき、学校は探究の癖を身に付けるためのトレーニングの場になっているのでしょうか。私は、小さなサイクルでも構わないので、年間に複数回まわしていくことが、子どもたちにとっては探究学習の小さな成功体験となり、教員にとっても、探究サイクルや探究的な思考への理解を深めることにつながるのではないかと考えています。

教職員のための双葉郡子供未来会議における発表の様子

 今回の研修では、90分の間に探究サイクルを二回転以上まわすことを目指しました。最初のお題は「よい探究学習とはどのような学習なのか?」と設定し、教員がそれぞれ思い描くよい探究学習についてグループ内で話し合い、探究サイクルに沿って思考してもらいました。そして二回転目は、「子どもの立場に立ったとき、その探究は本当に『よい探究学習』と言えるのだろうか?」としました。一回転目で向き合った問いを、二回転目では別の角度から問い直してもらいました。これは、探究サイクルを複数まわすことで問いが更新されていくことを実感する機会となったようです。参加者からは、探究についての理解が深まったことや、探究サイクルを複数まわす実体験ができたことで探究が楽しくなった、といった感想がありました。ぜひ、小さなサイクルで探究をまわしながら、多面的な視点や問いが更新されていく面白さに触れていただければと思います。

*1:福島県双葉郡教育復興ビジョン推進協議会 「教員研修会・教職員による子供未来会議」
https://futaba-educ.net/workshop/