小学校 算数

小学校 算数

速さ「速さを表そう」(第5学年)
2013.01.28
小学校 算数 <No.012>
速さ「速さを表そう」(第5学年)
福岡県 小学校教諭

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

速さ「速さを表そう」

2.本時の位置づけ

5/8時間

3.本時のねらい

 本時は、速さ(1時間あたりに進む道のり)と道のりがわかっていて、時間を求める問題場面を解決することを通して、速さも単位量あたりの大きさの考えで表したり比べたりできるという見方・考え方をより深めていくことをねらいとする。そこで大切となってくるのが数直線である。数直線に表現することで、問題場面の速さ、道のり、時間の関係を視覚的、構造的に明確にとらえさせたり、表現した数直線をもとにしながら、これまでとの共通点(速さ×時間=道のりなど、3つの数量の関係)や差異点(3つの数量の何が未知なのか、未知□の求め方)を考えさせたりしたい。また、本時の学び(速さと道のりをもとに、時間を求める)だけでなく、前時の学び(速さと時間をもとに道のりを求める)を含んだ2段階処理を必要とする問題にも挑戦させることを通して、学びの活用を図り、思考力・判断力を高めていきたい。

4.本時の評価基準

○数学的な考え方
 速さ、道のり、時間の関係を数直線で表すとともに、3つの数量の関係は、速さ×時間=道のりになっていることに着目したり、未知の時間の求め方を説明したりすることができる。
○知識・理解
 速さと道のりをもとに、時間の求め方をとらえることができる。

5.単元指導計画

学習活動及び内容

こみ具合等、数直線を用いながら単位量あたりの大きさで比べるという既習の学びをふり返る。

進んだ道のりとかかった時間をもとに、数直線を用いながら1分間あたりに進む道のりでソーラーカーの速さを比べ、速さも単位量辺りの大きさで比べられることをとらえる。

数直線を用いながら新幹線やキリンの速さを求め、時速や秒速、分速についてとらえる。

自動車の速さとかかった時間をもとに、数直線を用いながら進んだ道のりの求め方を考え、速さと時間、道のりの関係の見方を深める。


本時

自転車の速さと進んだ道のりをもとに、数直線を用いながらかかった時間の求め方を考え、速さと時間、道のりの関係の見方を深める。

数直線を使いながら速さ、道のり、時間を求める3つの問題を解決し、速さ=道のり÷時間、道のり=速さ×時間、時間=道のり÷速さの公式をつくりだす。

仕事の早さを数直線を用いながら求め、これまでの速さと同様に、単位量あたりの大きさで比べられることをとらえる。

これまでの学びを生かし、単位換算を必要とする速さの問題を数直線を用いながら解決する。

教科書の「たしかめぽいんと」や「じっくりチェック」「ぐっとチャレンジ」を通して、学習のまとめをする。

6.実践紹介

(1)導入(課題把握・解決の見通しの段階)
 まず、導入(課題把握・解決の見通し)の段階である。本時の問題場面①(時間を求める問題)を提示し、前の問題場面と変わったところを話し合わせた。 

【前時の問題場面】
 ある自動車がA地点を出発して、時速60㎞で走ります。2時間後にB地点、3時間後にC地点に到着しました。A地点からそれぞれの地点までの道のりを求めましょう。

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【本時の問題場面①】
 自転車に乗ってA地点を出発して、分速200mで走ります。A地点からB地点までは800m、C地点までは1500m、D地点までは1600mの道のりがあります。それぞれの地点まで何分かかりますか。

 すると、子どもたちは、「前の問題は、速さと時間がわかっていて道のりを求める問題だったけど、今日の問題は、速さと道のりがわかっていて時間を求める問題に変わっている。」というように、速さ、時間、道のりの3つの数量に着目し、問題の変化を取り出していった。また、問題の変化に伴って、求めるための数直線も、□の位置を変える必要があると予想することができた。これは、これまで、数直線の□の位置を意識させながら解決することを積み上げてきたことが有効に働いたものと考える。そこで、本時のめあてを設定した。

めあて
速さと道のりをもとに、到着までにかかる時間を数直線を使って求めよう。

(2)解決の実行の段階
 次に、展開(解決の実行)の段階である。子どもたちは、まず、問題①に対して自分の見通しをもとに数直線で3つの数量の関係を表現しながら自力解決を行った。ここでは資料1のように、それぞれの地点を1つ1つ数直線で表現し解決する姿と、資料2のように、3つの地点を1つの数直線にまとめて表現し解決する姿が見られた。

【資料1】それぞれの地点を別々に表現した数直線

【資料1】それぞれの地点を別々に表現した数直線

【資料2】3つの地点をまとめて表現した数直線

【資料2】3つの地点をまとめて表現した数直線

 自力解決の後、2人組で自分の解決の過程を説明し合わせた。2人組で行ったのは、一人一人に確実に説明する場を設定し自分の考えを自覚させるためである。そして、全体の場で確認し合い、解決の過程の共有化を図った。その際、1つにまとめた数直線を示し、「なぜこのように1つの数直線にまとめられるのですか。」と子どもたちを揺さぶった。そうすることで、1分間に対する道のりが全て同じであることを確認し、それらを1つにまとめるよさをとらえさせたのである。
 その後、子どもたちに、問題を解決してみて気づいたことを話し合わせた。子どもたちは、「これまでと同じように、数直線で求められた。」「速さが同じだから1つの数直線でまとめて表すことができた。」「数直線でもわかるように、全て200(速さ)×□(時間)=道のりの関係になっている。」「□(時間)を求める式はわり算になっている。」など、数直線と結びつけながら3つの数量の関係に着目し、時間の求め方を一般化していった。このように一般化することができたのは、A地点まで、B地点まで、C地点までと時間を求める処理過程が3つ含まれた問題を提示したことが有効に働いたと考える。
 更に、追加事象として下の問題場面②を提示した。

【本時の問題場面②】
時速72㎞で走る自動車で、5時間かかる道のりがあります。その道のりを時速90㎞で走る電車では、何時間かかりますか。

 これは、単なる時間を求める問題ではなく、本時問題①のように時間を求める前に、前時の道のりを求める処理が必要となってくる2段階処理の問題である。つまり、前時と本時に獲得した見方・考え方を発揮させるものである。

【図1】問題②の関係を表現した数直線

【図1】問題②の関係を表現した数直線

 自力解決をする前に、全体を数直線に表現すると、図1のように、未知の□が2つになることを確認した。子どもたちは、はじめ、□が2つあることに戸惑っている様子だった。そこで、「どちらかの□は先に求められませんか。」と尋ねると、子どもたちは、順番に求めればよいことに気づき、それぞれ自力解決をしていった。

【資料3】問題②を解決した数直線

【資料3】問題②を解決した数直線

 右は、子どもが解決したものである。
 まず、上の数直線のように、自動車の速さとかかった時間をもとにして道のりの□を求めた。次に、下の数直線のように、求めた道のりと電車の速さをもとにしてかかった時間の□を求めた。このように、前時と本時に獲得した考えを使いこなしながら、2段階処理を必要とする問題を解決することができた。ただし、これは、時間の関係もあり、全員が解決するまでには至らなかった。

(3)解決の整理の段階
 最後に終末(解決の整理)の段階である。ここでは、今日の学習を通した気づきを自分なりに整理させ、それらを出し合わせることで、本時の学習を以下のようにまとめていった。

まとめ
・時間を求める問題でも、これまでと同じように数直線を使って考えると速さや道のり、時間の関係がはっきりし、求めることができた。
・速さが同じであれば、道のりがいろいろあっても1つの数直線でまとめて表すことができた。
・いろいろな道のりにかかる時間を求める問題では、どれも速さの□倍が道のりという関係になっている。だから、時間の□はわり算で求めるようになった。