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CG(コンピュータグラフィックス)やアニメーションによる創造性教育
2011.04.08
読み物プラス <学び!トピックス Vol.28>
CG(コンピュータグラフィックス)やアニメーションによる創造性教育
「EVAアニメータ・スクール」と出会って
ASIAGRAPH CG アートギャラリー代表 文京学院大学准教授 喜多見康

 娘が私の目を盗んで勝手にコンピュータの前に座って、びっくりするほど面白いお絵描きを見せてくれたのは、彼女が3歳頃のことでした。それによってCGによる子どもの創造力開発の可能性を感じた私は、早速自宅のアトリエを使って1999年より「こどもCG教室」を開始しました。開設当初から、せっかくCGなんだから、お絵描きだけでなくアニメーションも子どもに作らせたいと思い(ちょうどその頃、私自身がアニメーション作品を作っていた頃なので)、子どもでも使えるアニメーション制作ソフトウェアは無いか?と探しました。すると幸運にも「EVA(エバ)」という優れた画材に出会うことが出来ました。「EVA」に出会えなかったら、私の「こどもCG教室」は成立しなかったかもしれません。
 その後の10年間は、自宅でのCG教室以外に、こどもCGコンテストやこどもCG展覧会の開催、企業や地域の行政、イベントなどと協力してのこどもCG体験ワークショップの開催などで、あっという間でした。これまで、延べで6000人以上の子どもにCG体験を提供したことになります。なかでも「EVA」を使ったアニメーション教室は人気で、面白い作品がたくさん生まれます。
 その一例を紹介しましょう。私が8年続けて講師をさせてもらってるSKIPシティ(埼玉県彩の国ビジュアルプラザ)の「川口市小学生CG体験教室」での受講生の作品です。

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(小学校低学年作品)

 これらは、良い意味での子どもらしい絵が、そのまま動いてアニメーションになった例です。 アニメーションと言うよりも「動く絵」と言う方が正しいかな。低学年の作品はこのパターンが多いです。ストーリーや映像としての構成を考えずに、絵を描いた時のイメージの延長で絵を動かしてみた、と言ったところでしょうか。絵を描く場合、当然動かない絵を描く訳ですが、描いている人の頭のなかでイメージとして、絵は動いています。その動きの一部分、断片を絵にする訳です。その動きをそのまま表現したのが、子どものアニメーションだ、と言うのが私の見解です。

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(小学校高学年作品)

 高学年になると、絵が動く事とストーリー展開をリンクさせよう、という映像的な考え方が出来る様になり、その分だけ大人っぽい表現に近づくので、子ども作品特有の魅力が失われがちになります。
 しかしこれらは、作者が自身の価値観やセンスを色濃く発揮したため、絵も内容もかなり魅力的な作品に仕上がりました。

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(中学生作品)

 最後に中学生の作品です。彼は、小学生時代から非凡な表現と描写力を発揮していました。この作品では「EVA」の表現力の限界に迫る様な描き方を見せてくれました。緻密なストーリーと台詞回しが得意な彼のような子どもにとって、自分の絵とシナリオでイメージ通りの映像化が簡単に出来る「EVA」の様なアニメーション制作ソフトウェアの存在は、非常に意義があります。
 CG制作教育、特に「EVA」を使ったアニメーション制作教育には、様々な可能性と魅力があります。その実践的指導方法や、これまで出会った天才少年CGクリエーターたちの驚くべき創造力についてもご紹介してみたいのですが、またの機会とします。

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