高等学校 情報
高等学校 情報
1.はじめに
本校は千葉県北東部の成田市に所在する私立学校であり、一学年は原則、付属中学校からの内進クラス3クラス、高校からの入学者クラス5クラスの計8クラス(1クラス40名程度)で構成されている。高校新課程情報科の授業は、「情報Ⅰ」を2年次に2単位で実施している。
2つあるコンピュータ教室は令和5年度にリニューアルを行い、両教室のコンピュータには主なアプリとしてGoogle Chromeブラウザ、Googleドライブ、MS-Office、Minecraft Education、Python環境などをインストールしている。第1教室はWindows 11のデスクトップを導入し、秀丸エディタ、Visual Studio、VirtualBOX(Ubuntu仮想マシン)などをインストールしており、プログラミングに関する実習だけでなく、Linux環境を通じたネットワーク環境構築の実習もできるようにした。第2教室ではMacBook Airを導入し、Apple純正のアプリに加えて、Adobe Creative Cloud(Adobe CC)も取り入れることでクリエイティブな作業の実習環境を充実させた。同時に、移動式の生徒机を導入して生徒がグループワークを進めやすい設備を整えている。これにより、これまでのプレーンなWindows PC環境とは一線を画した、単元に応じた教室の使い分けが可能になっている。なお、当校の付属中学校では、技術科においてLEGOマインドストームやポスターセッションの実習を行い、高校情報科との連携を図っている。さらに、1人1台必須購入のiPadにはGoogle for Educationがインストールされており、他教科でもICTを活用した授業を行っている。
情報科はiPadと教室のPC環境をうまく使い分けられるように、授業を展開している。
例えば、Googleドライブを導入して校内生徒用のファイルサーバーを廃止し、実習用ファイルはすべて、クラウドのGoogleドライブにアップするようにした。そして、実習で作成したファイルは、Google Classroomを通じて提出させるようにしている。さらに、Google Classroomでは日々の授業の連絡を発信しており、当日の授業内容も予告することで、授業の導入部分の説明時間の削減に努めている。なお、Googleアプリは他にも活用している。
旧課程時も実施していたグループワークのプレゼン実習では、作業はPCで行い、実際の発表で提示するときはiPadを活用するなど生徒は自発的に機器を使い分けている。アプリについてはPowerPointとGoogleスライドのどちらを活用してもよいと指導したところ、こちらは多くの生徒がGoogleスライドで作業を進めていた。理由としては、共同作業のしやすさはGoogleスライドの方がよいとのことであった。
しかしながら、課題も感じている。直感的に扱えるコンピュータが今日の世の中には溢れていることで、コンピュータに対する技術的なハードルは過去の生徒と比較して明らかに下がっているが、PC環境でのファイル保存やフォルダ(ディレクトリ)の概念、キーボード操作など、昔からコンピュータを扱っている大人であれば体得しているであろうスキルや知識が身についていない生徒が多い。消費者として情報の活用はできても、発信者となるための基礎的なスキル・知識が不十分なまま次のステージに送り出すわけにはいかない。消費者と発信者両方の立場を理解した、バランス感覚を持つデジタル・シティズンシップの指導が欠かせないと考えている。
本実践で紹介する情報デザインは、プロのクリエイターも活用しているAdobe Photoshopを取り入れたものである。「防犯ステッカーの作成」を実習課題として設定しており、防犯ステッカーの目的や組み込むべき情報をコンパクトにまとめるにはどうすれば効果的かを考える時間としている。
2.単元名
「第2章 コミュニケーションと情報デザイン 3節 情報デザイン」(実施学年:第2学年) 4時間
3.単元の目標
情報デザインの考えを通じ、情報技術の活用により問題の発見・解決する力を身につけていく。
問題の発見・解決に向けて、集めた情報と情報技術を適切かつ効果的に活用する力を身につけていく。
情報や情報技術を適切かつ効果的に活用し、社会の発展に寄与していく態度を育み、資質・能力を高めていく。
4.単元の評価規準
ア 知識・技能 |
イ 思考・判断・表現 |
ウ 主体的に学習に |
---|---|---|
・情報デザインの意味について理解している。 |
・情報デザインの考えをもとに、伝えたい情報を表現することができる。 |
・情報デザインを通じ、問題解決に取り組もうとしている。 |
5.単元の指導と評価の計画
時 |
学習活動・内容 |
評価の観点 |
評価の方法 |
||
---|---|---|---|---|---|
ア |
イ |
ウ |
|||
1 |
・情報デザインとは |
○ |
○ |
行動観察 |
|
2 |
・デザインの要件と設計・試作 |
○ |
○ |
○ |
行動観察 |
3 |
・前時の続き |
○ |
○ |
○ |
行動観察 |
4 |
・前時の続き |
○ |
同上 |
||
5 |
・前時の続き |
○ |
○ |
○ |
行動観察 |
6.本時の目標
学んだ情報デザインを効果的に表現するための考えと技術を向上させる。
7.本時の流れ
時間 |
学習活動・内容 |
指導上の留意点 |
評価 |
---|---|---|---|
導入 |
・前回までの知識の確認。 |
・3人1グループ体制で作業を進めていくことを確認する。 |
ア、イ、ウ |
展開1 |
・話し合い活動の続き。 |
・クラウドベースのアプリはiPadでもMacでもどの端末でも利用できることを再確認する。 |
イ、ウ |
展開2 |
・Mac端末によるPhotoshopの活用。 |
・Photoshopの起動とファイル保存について説明する。 |
ア、ウ |
展開3 |
・ラフスケッチをもとに本番デザインの組み立て。 |
・作業はMac、ラフスケッチの参照やチュートリアルの確認はiPadを使用することを説明する。 |
ア、イ、ウ |
まとめ |
・ファイルを保存する。 |
・保存は各々で対応する。 |
ア、イ、ウ |
8.まとめ
作業で使用するAdobeのアプリはPhotoshopとした。画像編集等はスマホアプリを上手に活用している者も多いが、プロも使用する高度な画像編集アプリを使用させることで、デザインの編集などがなぜ職として成り立つのかを考えるきっかけにもなると考える。
たとえば、画像の明るさの変更など、近年はスマホアプリのおかげでボタンを押せば簡単に実現できることが増えているが、ゼロベースで作業を行うことがいかに難しいかを知ることも重要である。そのため、今回の授業における成果物の出来不出来は問わない。伝わりやすいデザインを考察し、今後の社会生活にどう寄与していくかを考えるきっかけにさせたいと考える。
2単位という限られた時間の中で、授業展開における他の単元とのバランスやつながり、また、共通テスト対策までを意識すると、どの程度この内容を深く掘り下げるべきかを考える必要もある。情報デザインそのものは日常生活にあふれているものであり、それを学問的見地から掘り下げるということには少なからず違和感も抱かれる。さらに設定した課題は、一見、適当にデザインすればなんとなく完成しそうなくらいシンプルなものである。しかし、自分で目的を持って創作しようとすると難しいものであることにも気づく。問題解決の手順を活用し科学的にひも解くことで、情報をわかりやすく発信することのできる担い手になってほしいものである。
コンピュータを実務的に使用することにおいて、高校生世代のスキルは大人世代よりも低いことを実感している。教科情報の学びを通して情報と情報技術を適切に扱える人材を輩出したいという想いを込めて今後も授業の質を向上させたい。
9.大学入試との関連
従前から本校では大学入試科目として情報を選ぶ者はいない状況であるが、大学入学共通テストにおいて情報Ⅰが追加されることから、教科として以下の対応を行っている。
まず、教科書とは別に、副教材として共通テスト対応のワークを授業の携行品としている。また、オンラインの教材として「ライフイズテック レッスン」、「スタディサプリ高校講座」を導入している。これらを活用し、実習と座学のバランスを取っている。
普段の授業を大学入試に特化した展開で行っているわけではないため、座学の内容については教科書に準拠した学習内容の定着とその充実を図っている。座学の定着度を測るために、Google Classroomと連携したGoogleフォームによる小テストを行うことで、基礎的な知識が定着するようにもしている。