小学校 生活

小学校 生活

「吹き流し遊び」から10の姿と生活科内容(6)との関連を考える(幼稚園・保育所・こども園)
2019.10.09
小学校 生活 <No.009>
「吹き流し遊び」から10の姿と生活科内容(6)との関連を考える(幼稚園・保育所・こども園)
佐賀県認定こども園すみれ幼稚園 教頭 麻生秀樹

 今回の幼稚園教育要領,保育所保育指針,幼保連携型認定こども園教育・保育要領に「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」が10項目(以後,10の姿と記す)示された。小学校新学習指導要領の第5節「生活」の,第3「指導計画の作成と内容の取扱い」には,この10の姿との関連を考慮することが記載されている。つまり,幼稚園等と小学校低学年の教育を,この10の姿でつなげていく指導が求められていると言えよう。

 そこで,5歳児の「吹き流し遊び」の様子から10の姿を見取っていき,生活科内容(6)の指導についてつながりを考えていく。

1.「吹き流し遊び」にあらわれる10の姿

(1)吹き流し遊びの様子

 前日が台風だった影響もあって,風が強く吹いていた。その強風を使って遊べないかと考えた担任は,スズランテープや紙テープを使った「吹き流し遊び」をしようと思いついた。園庭の真ん中にあった移動式鉄棒に長い鉄の棒を足し,跳び箱も鉄棒のそばに置いておく。担任がスズランテープを棒に付けると,強い風でテープが舞い上がる。その様子を見ていた二人の幼児は,担任が持ってきた跳び箱に乗って,棒にテープを付けた。すると,テープがさらに舞い上がって,周りにいた他の園児たちからも「ワ―」と歓声が上がった。

T(先生).「(その様子を見て)楽しいね。違う色(のテープ)を持って来ようか。」
C(子ども).「持ってきて!」
 担任が紫色のスズランテープを持ってきて,青・赤・黄色・緑・紫色と色とりどりのテープを棒に付けると,風が強く吹くたびにテープが舞い上がる。

(2)担任が見取った10の姿についての考察

⑥思考力の芽生え,⑦自然との関わり・生命尊重
 海・山・風・水・葉・土などの自然は,どの子も平等に受け入れてくれる(自然は「あなたはいい子だから受け入れる」「あなたはいけないことをしたから受け入れない」などない)。子どもにとって,自然は諸感覚をダイレクトに刺激するので,面白いのだと思う。担任も自然の安心感・開放感・諸感覚への刺激を一緒に楽しんでいる。
 子どもたちは,風で服が膨らんだり,髪の毛が舞い上がったりする経験,自分が飛んでいきそうな感覚など,教師が言葉では教えることができないことを体感していた。また,どこから風が吹いてくるのか,風上と風下があること,風にはうねりや音や匂いがあることなど,意識せずに遊びながら学んでいる。経験のある子どもたちは,風がビュービュー吹く音を聞けば,肌に触れる風の強さを思い出すことだろう。
 自然を感じる遊びで子どもの心が満たされ,自然の楽しさと同様に自然の厳しさも学んでいく。風の中で遊びながら笑い,癒され,体全体で自然の大きさや不思議さ,面白さを感じていた。

②自立心,④規範意識の芽生え,⑥思考力の芽生え,⑦自然との関わり・生命尊重,⑨言葉による伝え合い
 今まで,雨のすべり台遊び・雨の日に水たまりジャンプ・全身泥だらけ遊び・強風ビーチボール遊びなどを楽しんできた。幼稚園は家庭でできない遊び(親にさせてもらえないような遊び)をするところだと思っている。雨や風の日は室内遊びと誰が決めたのだろう。
 教育的配慮のもとに安全面の確保ができたら,担任が率先して自然を満喫して遊ぶ姿を見せたい。

(3)観察者(筆者)が見取った10の姿についての考察

⑦自然との関わり・生命尊重,⑩豊かな感性と表現
 強風という自然の営みをうまく使って,テープを棒に付けた吹き流し遊び。担任のとっさのアイディアと移動式鉄棒,長い鉄の棒,跳び箱を使った環境構成は,5歳児の子どもでもテープを棒に付けることができたし,周りで見ていた他の子どもも,色とりどりのテープが舞い上がる様子を楽しむことができた。そして,「風が強いとこんなにテープが舞い上がるのだ」と感じることができたようだ。
 普段は,こんなに強く風が吹く日がないし,強い風が吹けば室内遊びが中心になる。強風という自然に関わらせる絶好の機会ととらえ,スズランテープや紙テープなどの材料を使った遊びを取り入れた担任の力量には感心する。このような自然との関わらせ方もあるのだ,と思った。
 「⑦自然との関わり」は,担任が,今回のような「自然を生かした遊び」にどれだけ子どもの目を向けさせられるのかにかかっている。吹き流しがなびいて「心地よい」「おもしろい」と5歳児が感じることができたら,これからも積極的に自然に関わる子どもになるだろうし,「雨風のときは室内遊び」といった発想だけにはならないだろう。強風という自然と,テープを棒に巻き付けて吹き流しを楽しむ担任の発想が,「⑦自然との関わり」をすばらしいものにした。
 吹き流し遊びは,強い風がどのように吹いているのかを感じられる。強風を学びのチャンスであると担任が見極めたことが,この遊びにつながったのだと思う。

2.5歳児の遊びから生活科の内容(6)の指導を考える

 生活科の内容(6)について,小学校学習指導要領生活編に「身近な自然を利用したり,身近にある物を使ったりするなどして遊ぶ活動を通して,遊びや遊びに使う物を工夫してつくることができ,その面白さや自然の不思議さに気付くとともに,みんなと楽しみながら遊びを創り出そうとする。」とある。
 身近な自然としては「雨,雪,風」などの現象を,身近にある物には「ひも」があげられているので,吹き流し遊びの「スズランテープ」「紙テープ」は,まさに身近にある物に該当するだろう。
 生活科の時間に,雨が降ったり風が強かったりしたとき,小学校の教員はどのようにしているだろうか。風雨の強さにもよるが,戸外での活動を取り止めてしまうことが多いのではないだろうか。
 強い風を身体全体で感じ,視覚でも感じる。こんな体験ができる強い風は,魅力的な学習材になる。子どもがスズランテープや紙テープを棒に付けて吹き流しを楽しめると,とても素敵な学習になるだろう。
 生活科の学習でも,雨や風のときに思い切って戸外に出て,諸感覚を十分使った活動をさせてみるのもいいのではないか。5歳児が強い風を全身に受けながらスズランテープや紙テープを棒に付けて楽しむたくましい姿を見ていると,低学年の児童だったら,強い風を使ってもっと楽しい遊びを考えるのではないだろうかと想像する。
 「⑦自然との関わり・生命尊重」や「⑩豊かな感性と表現」にもつながり,遊びをつくり出して毎日の生活を豊かにしていく生活科のねらいに迫る授業になると確信する。

※本実践は,K幼稚園のN教諭の保育を観察者(筆者)が観察,N教諭と観察者(筆者)が考察している。