ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.13

巻頭言
 
岐阜女子大学文学部教授/岐阜女子大学文化情報研究センター長 後藤 忠彦

 我が国の情報教育が盛んになったのは,平成に入ってからであり,学校での教育は経験も少なく,一方,情報機器や処理の変化も急であるため,実際に情報に関する教科の学習指導にあたっては,多くの課題が今後出てくると考えられる。

  実際に,大学などで実施されている各種の情報教育の中には,家電製品(情報家電)を活用してのワープロ,表計算,インターネットなどの操作方法の学習で終わっている場合もある。確かに,家電製品の操作方法も情報処理に慣れるためには重要であるが,情報活用の視点で検討すべきである。情報を専門としない学生に対する情報教育を今後どのように展開するかが問題になっているが,それらと同様にならないような,高等学校などでの情報教育の展開を願っている。

  情報処理の変化は急であり,十数年前と現在とでは処理の内容も大きく変わってきている。そこで,当時の単なる家電製品の使い方を重点に学習した者にとっては,現在の情報処理が理解できない。このため,発展性のある学習指導の計画をすべきである。処理技能の基礎的な事柄を学習させ,新しい処理に対応できる教育をいかに行うかが課題である。

  併せて,今後,情報処理の結果の見方についての教育も大切である。たとえば,統計処理ではデータを入力すれば何らかの数値が出力されるため,その数値の意味,利用するための条件などを理解し,活用できるような教育が必要である。これは統計処理に限らなく,他の分野における情報の内容についての処理でも同様である。

  一方,情報活用の能力としては,このような基礎的な事柄の学習をもとに,いかに,各自のもつ課題解決に利用できる能力を育成するのかが重要である。このためには,取り扱う情報の内容,それにともなう各種の処理方法,処理結果の解析など,総合的なデータ処理・情報解析などを学習するための一連の実習が必要である。

  各生徒が自分で課題を見出し,その解決に情報処理を利用するべきであるが,授業時間の関係で無理な場合もある。そこで,各専門分野の教員が集まり,各分野の課題例を作り,最初は,その中から選択して学習させて,各種の視点で,問題を解決していくプロセスや処理結果における課題を解釈し,理解できるような情報環境の開発も必要である。

  たとえば,個人学習法で用いられてきたように,多くの個人学習教材を用意し,その中から学習課題を見出し,自分で学習する順序を決め,数時間の学習がこれまでも展開されてきたが,このような指導法も参考になる。

  情報教育では,多様な分野で利用できる能力の育成が,これまでの各教科教育以上に必要であり,この面での学習指導,および各分野へ適用しようとする意欲を持たせることが重要である。

  また,次に各分野での課題解決に必要な情報の活用方法や問題点を,生徒が自分で解釈し,総合的な実践力をつけるために学習を進め出すような,教育環境の整備が望まれる。

  新しい教科“情報”が,総合的な実践力を育て,発散的に各分野に学習を発展させられるような教科にしたいものである。

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