ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.16 > p9〜p12

教科「情報」テキスト活用事例
情報Aの年間計画と
「情報の収集方法」の授業
長野清泉女学院高等学校 山浦 秀一
paul@seisen.ed.jp
1.はじめに

 長野清泉女学院高等学校は,長野県下唯一のカトリック・ミッションスクールです。「清泉」は世界中に姉妹校を持ち,そこで学ぶ生徒達が広い国際的視野に立って連帯性を身につけ,国際社会の一員として社会に貢献できる人となるよう全人教育を行っています。

 1946年開校以来,本校の国際的な特色を生かして,特に英語教育に力を注ぎ,1990年には,普通科の中に「英語特進コース」を設置しました。時代の要請に応える一方で,英語教育を補完し更なる国際性を獲得する一手段として,情報教育に注目し,その充実を図ることにしました。

 教科「情報」はそのような流れのもと,2000年度から先取りをする形で私立文系希望者に対して実施され,現在では2年生選択教科として「情報A」,3年生選択教科として「情報C」の2科目を展開しています。

 初年度は教科書もなく,すべて手作りのテキストで授業を行ってきました。また,情報=コンピュータ操作に近い感覚を持っている生徒が大多数でしたので苦労したことを覚えています。

 新カリキュラム実施を来年にひかえ,2002年度からは日本文教出版の『情報A』および『情報C』を教科書に用いて,年間計画を立てて実施してきました。今回の活用事例では比較的教科書に沿った場面が多い2年の情報Aを取り上げてみたいと思います。まず本校の年間計画を見ていただき,次に「情報の検索と収集」の実践例を報告させていただきます。

2.年間計画
 昨年までは学習指導要領に沿うように授業用資料を集め,授業を組み立てていましたが,本年度からは教科書に沿った指導案を作成しました。教科書があることで生徒も全体の流れが見え,こちらも指導がしやすくなりました。また,いままでの授業用資料はほとんどスライドになっているので併せて使っています。 ◎スライドを見る

 まず,10ページに年間計画表を挙げます。また,情報Aの教科書と学習指導要領との対応も併記してあります。

表題

内容・備考

教科書

指導要領

ガイダンス

・操作及び環境説明・習熟度アンケートの実施

 

(1)ア

比較検討レポートや
操作マニュアルの作成

・情報を相手にわかりやすく伝えるためにはどのような表現方法があるかを学ぶ
・各使用ソフトの基本的な操作習得

 

(3)ア

情報の収集方法

・必要な情報を効率的に検索する方法を学ぶ

1章2節
2章1節

(1)ア
(2)アウ

情報モラル

・ネットワークの信頼性,情報の信憑性について
・発言や著作権について

2章3節

(1)イ
(2)ウ

Webページの作成

・相手に伝えたいテーマを決め,情報の収集・処理・発信の流れを一通り学ぶ
・アナログとディジタルの違い・伝達技術

1章3節
3章1節
3章2節

(1)イ
(2)アイウ
(3)イ
(4)ア

データの処理

・統計データの処理・モデル化とシミュレーション
・表計算検定

 

 

アルゴリズム

・問題解決のためのプログラミングを学ぶ
・「数当てゲーム」「各種ソート方法」など

 

 

総合実習

・テーマを「情報化社会」「高校生」などとしてグループごとのプレゼンテーションを行う
・発表後,相互評価や自己評価をふまえて再度発表する

4章1節
4章2節
4章3節
4章4節

(1)イ
(2)ア
(3)イ
(4)アイ

情報科社会の光と影とは

・ニュースから情報化社会を考える

5章2節
5章3節

(4)アイウ


情報A 内容とその取り扱い(学習指導要領より)
(1)情報を活用するための工夫と情報機器
 (ア)問題解決の工夫
 (イ)情報伝達の工夫
(2)情報の収集・発信と情報機器の活用
 (ア)情報の検索と収集
 (イ)情報の発信と共有に適した情報の表し方
 (ウ)情報の収集・発信における問題点
(3)情報の統合的な処理とコンピュータの活用
 (ア)コンピュータによる情報の統合
 (イ)情報の統合的な処理
(4)情報機器の発達と生活の変化
 (ア)情報機器の発達と生活の変化
 (イ)情報化の発展が生活に及ぼす影響
 (ウ)情報社会への参加と情報技術の活用
3.情報の検索と収集
 コンピュータの基本的な使用方法などを学び終わった後,「情報の収集方法」と「情報モラル」を学ぶことにしています。この「情報の収集方法」を学ばないで先に進むと,生徒は必要な情報を検索する場合にインターネットの検索サイトのみで一生懸命検索し,答えを求めようとしてしまいます。

 このようなことのないように,以下の流れで授業を進めました。

(1)目標

 課題の解決に必要となる情報をさまざまな手段を使って,効率的に検索・収集できるようにする。

(2)使用教材・ソフト

 ・『情報A』(日本文教出版)
 ・検索エンジンとして
  Yahoo! infoseek など
 ・電子百科事典として
  エンカルタ総合大百科2002  ・アンケート・掲示板として
  マイクロソフト GroupBoard 2.0

(3)学習内容

[1]導入
 「皆さんは必要な情報をどのような情報源から得ていますか。また,『その情報は正しい』とどのようにして判断しているのでしょうか」という問いかけから授業を始めます。情報化社会と言われている現在,生徒の興味のある情報を素早く得る技術については驚くものがありますが,日常生活で必要な情報(進路・時事など)を効率よくかつ正確に得ることについてはまだ欠けるところがあります。それらを補うための方法を,この時間を通して学んでもらいます。
 また,この単元で学んだことは今後の授業で何度も活用するので,丁寧に指導することを心がけます。

[2]検索エンジンを使って情報を検索・収集する
 まず,検索エンジンのサービスには2種類あることを伝えます。この2種類の特徴(長所・短所)は実際に検索を学んだあとで生徒に答えさせます。
 また,複数の検索エンジンを使用することにより,各検索エンジンの特徴も実感させます。
うまくサービスを使いこなすことによって,求めたい情報を素早く探し出せるように指導します。実際には,プロジェクタを使って検索しているところを生徒に見せました。
 時間も限られているので,あまりひねった課題は出しませんが,演算子(AND OR NOT)の使用方法や,キーワードを変えて検索するなどの工夫を伝え,絞り込むための方法を理解させます。

[3]インターネット上の情報の信憑性について
 ここでは,素早く正確に検索できたかを問いかけて,サービスや検索エンジンの特徴を挙げてさせます。
 実際には,掲示板に各検索エンジンの長所・短所を書き込ませ,プロジェクタで表示して授業を進めました。
 また,その情報は本当に正しいのかを問いかけます。情報を得たページは個人が書いているのか,主催団体や公共団体が書いているのか。更新日はいつなのか。など。
 ただし,この部分については次の「情報モラル」で詳しく取り上げるので,深入りしない程度とします。

[4]情報を得るためのほかの手段を考える
 他にどのようなものがあるか,各々の特徴は何かを生徒に問いかけます。多数の生徒が掲示板に書き込むことで,身の回りの情報源の新しい特徴に気づいたようです。

[5]各々の情報源の特徴(長所・短所)
 ここでは,各情報源の長所と短所をグループで話し合い,表にまとめます。
 次に,自分たちの情報源が偏っていなかったかを話し合い,TPOに応じて情報源を選択できるように心掛けさせます。
 メール・チャットについては,次の「情報モラル」で詳しく取り上げるので割愛しました。

[6]授業の再確認
 各情報源の長所と短所を理解したうえで解かせます。

(4)感想・反省

 今回の単元は,教科書ではp.40からp.45の範囲となります。この範囲を2時間に分けて授業を行いましたが,目的は達成できたと感じました。

 この授業を受けた生徒の,家庭でのインターネット接続率は90%を超えています。主な使い方はWeb閲覧とメールと回答がありましたが,検索に関しては自力では学べない分野なのか,最初は検索するのに四苦八苦する状態でした。生徒の感想としては,「家でたまにやっているのに,実際に課題を出されて情報収集するのは難しかった。」「インターネットでのいろいろな検索方法が分かってよかった。今後活用していきたい。」「私が得ている情報源には偏りがあることが分かった。信憑性の問題などもっと詳しく学んでみたい。」「情報源の特徴が分かれば,もっと早く正確に情報を得ることができることが理解できた。」などが挙げられました。

 生徒は検索方法が理解できると,知りたい情報の検索をものすごい勢いで始めました。大変喜ばしいことではありますが,時間内に終わらせるために途中で中断し,先に進みました。「情報を検索する時間が短かった。もっと色々調べたかった。」との意見は,今後の課題です。
前へ   次へ
目次に戻る
上に戻る