ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.18 > p32

コンピュータ教育のバグ
新型は欠陥品
—バージョンアップにまつわる問題点—

 最近の子供番組では,おもちゃメーカーとのタイアップが盛んである。 たとえば,毎週連続物の変身ヒーロー番組なんかを見ていると,毎週のように新しい変身道具や武器,新顔のロボットなんかが登場してくる。するとたちまち,番組途中のCMでは,そのおもちゃが新発売だと売りこまれていたりする。昔のヒーローなら,手持ちの処理能力で何とか工夫して敵をやっつけたものだなんて考えるのは,私だけだろうか。

進化の中身は?

  コンピュータの世界は,めまぐるしい進化をとげている。たとえば,一昔前までは記録媒体の花形だったフロッピーディスクも,今や使い勝手の悪いメディアに成り下がってしまった。以前は,時代を代表する記録メディアはほぼ1種類で,フロッピーの前には磁気テープ式のものが全盛だった。ところが最近では,数え上げればきりがないほどの多様なメディアが出回り,記録媒体だけ展覧会ができそうなくらいである。こういう傾向はなにも記録媒体に限ったことではなく,コンピュータの本体や周辺機器,アプリケーションソフトウェアやオペレーテイングシステムにも見られる。

 このようなバージョンアップは,どこまで必要なのだろうか。たとえば,アプリケーションソフトウェアについて考えてみると,バージョンアップの中身は,ソフトウェアに新しい機能を追加する場合と動作上の不具合や使い勝手の悪さを改善する場合とがある。ここで問題なのは,この2つのウエイトのかかり具合である。エンドユーザとしては,使用しているアプリケーションソフトウェアの使い勝手が悪い部分について修正されるのは大歓迎である。ちょっとしたメニューの変更や今まで操作しづらかった部分の修正は,どんどん行ってもらいたいものである。逆に,新しい機能の追加については,ケース・バイ・ケースである。本当に便利で必要な機能ならぜひ追加してもらいたい。だが,新しい機能を追加することで使用感が大きく変わってしまって取り扱いに戸惑うだとか,新機能のために今まで使っていたメニューや機能が割愛されてしまうとかいう場合は,バージョンアップも考えものだと思うこともよくある。

ユーザーとメーカーの微妙な関係

  ところが,開発して販売するメーカーの側に立って考えてみると,今までの機能を修正するということは,単に不具合を修正しただけと思われがちで,場合によっては以前の不具合を自身で認めたという風にもとられかねない。一方,新機能搭載と銘打つと,ユーザへのアピール度が高く,新規ユーザの獲得にもつながる材料となる。こういう企業の理論で,バージョンアップの際に不具合の修正より新機能の搭載に力点が置かれていることは否めないのではないだろうか。こうなってくると,学校で使用するアプリケーションソフトウェアに至っては,ただでさえ難しい更新やバージョンアップの必然性を訴えたい場合にもさらに困難な状況を作り出すことになる。本当に必要なバージョンアップなのかというのが,導入してみないとなんともいえないという状況もあるのである。

 最近では,学校などにアプリケーションソフトウェアのライセンスを安く提供するシステムが定着してきた。これは,教育関係者としては歓迎すべきことではあるが,それとともに,マシンやソフトウェアのバージョンアップについては,ぜひ使い勝手優先で,お願いしたいものである。また,現場で情報教育に携わるものとしては,こういう部分の必要性と必然性をきちんと認識しておきたい。できれば,生徒たちにもこういう感覚を身につけてバージョンアップしてもらいたいと思う。

前へ    
目次に戻る
上に戻る