ICT・Educationバックナンバー
ICT・Education > No.2 > p18〜p19

交流
学校教育現場における情報メディアを使った交流活動について
大阪市立市岡商業高等学校 池田 明
1.教育交流活動の現状
 学校教育の現場は,まだまだ閉鎖的な環境にあるといわざる得ない。しかし,ようやく最近になって,急速に進むコンピュータネットワークの普及と,情報公開という社会的ニーズに後押しされる形で,様々な情報メディアを使った交流活動の実践が試みられるようになってきた。 実践例は数多く見られる。そんな中でも,学校同士で同じテーマやプロジェクトに取り組み,その意見交換や成果発表などに情報メディアを利用するパターンと,調査や研究を行う際に,データ収集や疑問点の解決のために,専門家や専門機関と交流を行うパターンに類するものが圧倒的に多いといえるであろう。

コンピュータ室の様子
▲コンピュータ室の様子
2.試験的な実践例として
 現在,私が携わっている教科の中に,専門学科の高等学校で必修となっている「課題研究」がある。3年生が週3単位で自主的な課題設定によって学習を進めていく科目である。私は,この「課題研究」において,この2年間,DTM(※注1)を担当しているが,この講座においての実践例を紹介したい。

  DTM講座は,音楽的な知識や技術は,他の生徒に比べて比較的高いものを持っている生徒が選択する場合が多いが,DTMについては全くの初体験であるものがほとんどである。それでも1学期の終わる頃には,相当なレベルの作品ができあがる。これらの作品のいくつかをMIDI(※注2)ファイルの形式で,インターネットのDTM関連のサイトへ公開している。公開にあたっては生徒のパーソナルデータの漏洩に十分配慮した上で,作成した生徒の氏名は匿名にして行っている。 生徒の作成したMIDIファイルの単なる公開であるので,能動的な交流とはいえないかもしれないが,この公開に対してのレスポンスが,生徒の自主的な活動意欲の向上につながっている。

  公開したファイル名は,雑誌で紹介されるので,活字メディアに自らが作成したデータ名が掲載されるということで,生徒は自分の活動の成果を再認識でき,次の活動意欲につながっていく。

  また,ファイルを聞いた感想やアドバイスなども送られてくる。中にはプロのミュージシャンや指導者の方からのものもあり,大変中身の濃いものが多く,生徒は大変参考になると喜んでいる。

DTM(Desk Top Music)の様子
▲DTM(Desk Top Music)の様子

※注1 ディスクトップミュージック・・・コンピュータと音源装置を利用して作曲や編曲などを行う。
※注2 楽器のデジタルインターフェイス規格・・・日本国内外の電子楽器メーカーが制定したもので,一般によく使われている。
3.今後にむけて
 学校における交流活動は,担当者の労力と時間的制約の問題から実現には相当の紆余曲折がある場合が多いといえる。しかし,例示したような,教師が交流による結果や成果にこだわらずに,とにかく情報を発信してみる形での交流への模索は,比較的容易で,場合にもよるが満足できる成果をもたらすことも多いと思われる。 あまり,形式ばらずに,できる内容から1歩ずつ踏み出してみるのがこれからの情報教育に求められる交流のあり方なのかもしれない。

MIDIデータをインターネットで公開!
▲MIDIデータをインターネットで公開!
前へ   次へ
目次に戻る
上に戻る