ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.28 > p32

コンピュータ教育のバグ
逃げてばかりじゃ,はじまらない
—学校でのネットワーク利用は今…—
 こんな人がいる。「うちはオール電化の家なんだけど,子供が小さい間はコンロだけはガスにしてるの」???この意図はおわかりだろうか。「火は熱いものだ,煮炊きしている鍋に近づくと危ないよ。」と実地に体験させて教えておかないと,何かの折にとんでもない大ヤケドをしそうだからという考えなのである。ちょっぴり大げさな気もするが,ある意味納得できたりもする。
 さぁ,では,学校のネットワーク利用にこの話を当てはめて考えてみると,オール電化の上に,鍋どころか茶碗にも触らせないで,スプーンにとって十分冷ましてから口に運んでいるような状況が…
更新すると使えなくなる?
 インターネットやローカルエリアネットワークなど,学校にあるコンピュータもようやくネットワーク利用が定着してきたようである。ネットワーク化が定着してしばらく経ったので,システムの更新が行われる学校もそろそろ多くなってきている。そこでよく耳にするのは,「システムが更新してしまったので,云々…。」という愚痴やら言い訳やらである。更新したのなら,より使いやすく,より便利になるべきなのだが,どうもそうではないらしい。つまり,更新したために使いにくくなったり,今までのような利用方法が不可能になったりする現象が起きてきているのだ。
 要するにこういうことらしい。「昨今,ネットワークに潜む危険がクローズアップされる事件がよく起きているので,学校としても子供たちに安全,かつ,正しくネットワーク利用をさせなければならない。そのためには,勉強に不要なまたは悪影響のあるような利用は,その利用方法自体を差し止めて,学校からは使えないようにしてしまうのがよい。」と。
 一見,正論に見える。しかしである。これで本当に有効なネットワーク活用が可能かというと,はなはだ疑問を抱かざるを得ない。
ネットワークは何のためにあるのか
 そもそもコンピュータをネットワーク化するメリットとは何なのだろうか。情報を共有することによって,より有効に情報活用ができるということではないのか。そのためには当然,ネットワーク利用のモラルとマナーをわきまえ,有効かつ安全に利用できるように指導はしなければならない。その指導は,インターネットのブラウザ閲覧にフィルターをかけたり,メールや掲示板での情報発信を禁止したりすることとは,根本的に違う。
 危険を回避する方法を教えるためには,危険を認識できるようにしなければならないはずだ。危険なことから子供たちを隔離してしまうだけでは,あたかも危険がないかのような錯覚に陥らせてしまうだけだ。しかも,制限された利用方法では本当の意味でネットワークを活用したことにはならない。かといって,インターネット閲覧のフィルターを全て外してしまうのはなかなか勇気がいることである。しかし,どんなフィルターソフトにも穴はあり,そのために必要な情報収集が制限されるようでは,思想統制しているようなものだとさえいえる。また,最近ではブログの普及が著しいが,たとえば,これが学校で見られないようでは,世の趨勢に背を向けていることにならないか。
 ネットワークを必要以上に利用するのは危険,ネットワークの利用を無制限にしてしまうのは危険。危険,危険と言うけれど,本当に危険なのは,危険を知らないまま子供たちを世に送り出してしまうことではないのだろうか。
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