ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.29 > p32

コンピュータ教育のバグ
本日の特選教材
—コンピュータ教育のネタ考—
 その昔,スタジオに観客を入れて料理人が軽快なトークと共に調理を進めていき,最後は客席から指名した観客と共に食すというアメリカンなTV料理ショーが人気だった。時は移ろい,最近は日本の料理ショー番組が世界で評判を呼んでいる。赤組と黄色組に分かれて料理をつくる番組は台湾でも人気があり,ヨーロッパでも絶賛された鉄人が登場する番組などは,アメリカでリメイク版までつくられている。これらの番組の構成の共通点は,素材と調味をどう組み合わせるかに尽きると思う。
コンピュータ教育の素材とは
 一言で素材といっても,いろいろ考えられる。例えば料理の場合だと,肉・魚・野菜などといったナマモノのほかにミルクやチーズなどの乳製品だとか,こんにゃくや豆腐や蒲鉾といった類の加工製品,マヨネーズや蜂蜜や醤油などいわゆる調味料の類などなども素材ということになる。そして,料理として完成させるために,料理人は素材それぞれの特長を活かし,上手にマッチングさせて調理していくのである。
 この料理に対する素材の調理という視座は,コンピュータ教育にもつくづく当てはまると思うのである。授業のネタとなる知識や技術などをコンピュータのハードウエアとソフトウエアに加え,コンピュータネットワークやヒューマンネットワークなどをうまく利用して,よりおいしく生徒に味わってもらえるように授業者が料理している。調理の技術を磨くことも大切であり,素材の鮮度に気を配ることも忘れてはならない。
 ところで,調理の(=授業の)技術というのは何もコンピュータ教育に限ったことではなく,世界中のありとあらゆる科目の教師がこれを磨くことに一生懸命になっている。一方の素材(=教師)の鮮度を保つというのは,コンピュータ教育においては大切なことだが結構難しいと思うのである。
素材の賞味期限
 素材の中には長い年月をかけて熟成させたり調理の過程で残りをつぎ足して大切に使い続けていったりするモノもある。これに対してコンピュータ教育の素材は,いうなれば足が早いのだ。これだけめまぐるしく移り変わる情報社会について教えようという科目なのだから,当然といえば当然な話ではある。となればこの授業を専門にする者は,常にイキのいいネタを仕入れなければならない。つまり,教材研究にかなりの労力を必要とすることになるわけである。しかも,賞味期限の短いモノを多く扱うので,一度仕入れて評判がよかったからといって毎回同じネタで調理できるとは限らない。うっかり鮮度が落ちたネタを使用したら,一発で客が離れてしまう。ネタが変わった時は,調理法にも工夫をしなければならない。
 インターネットが普及して,コンテンツが充実してきたので,教材研究にもずいぶん便利に使えるようになった。以前なら誰かから直接教えてもらうか自分で本で調べるしか手段がなかったのに,職員室や準備室にいながらにしていろいろな教材を集めることができるようになった。ここで次に必要になってくるのは,よい素材を見分ける目だ。素材の鮮度が重要ということになれば素材を仕入れる回数も増えるので,必然素材の善し悪しを判断する機会も多くなるのだ。そして,本当に必要なモノ・本当によいモノがなかなか見つからないので,こうなると何とか調理の腕でカバーするか,はたまた自分で素材からつくってしまうしかない。もちろん,軽快なトークでごまかすというのも教師の得意技ではあるのだが。
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