ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.32 > p32

コンピュータ教育のバグ
最近の若いもんは!
—低年齢層に広がるネットワーク利用—
 携帯型のゲーム機がものすごい勢いで売り上げを伸ばしている。持ち運べてどこでも手軽にゲームが楽しめる。コンピュータ技術の発達で美しい動画像やBGMが表現できる。より小型化も進んで軽量コンパクト。本当にいいことずくめだ。
 そして,最近では,映画や音楽をゲーム機で楽しむこともできるようになった。さらに,通信機能を搭載したものも一般化してきたので,ネットワーク通信で今まで以上に活用の幅が広がっているようだ。
そりゃ子どもたちにはウケる
 ひと昔前までは,テレビゲームというと,何だかとりあえず悪いイメージがあって,勉強をしない悪因の権化みたいに思われていた節がある。しかし,最近では高い年齢層までターゲットを広げて,頭を鍛えたり,手帳や地図や翻訳機として利用できたりするようなソフトウェアまで販売されている。中でも,携帯型の持ち歩けるゲーム機は,その手軽さも相まって大人気である。こんないきさつもあってか,近年は一応の市民権は得てきている感がある。
 ゲームの世界の進化の中でも目を見張るのは,ネットワークを利用した通信機能の充実ぶりだ。無線通信機能は本体に内蔵されていたりして,インターネットに接続できるものが増えてきた。そして,ゲーム内でインターネットのネットワークを介して友達と通信して,対戦したり情報交換したり,まさに,「ネットワークでつながって世界が広がる」というのを体験できるわけである。小学校の低学年ですでに携帯電話を持っているという子も増えているようだが,ほとんどは親兄弟と通話するしか必然性はないので,この「つながって広がる」感は小学生が,携帯電話では実感できないのではないかと思う。それがゲーム機で体感できるとなれば,そりゃあ子どもたちにはウケるわけだ。
いいことずくめ,でもないぞ
 ところで,電車やバスの中,テーマパークや映画館の待ち行列,さらには,ピクニックやハイキング,帰省や家族旅行まで,いろいろなシチュエーションで,いかに携帯ゲーム機を持っている子供(ときどき大人も)が多いことか。いったい何しに来ているんだと言いたくもなる。
 もっとも,このこと自体は親のちょっとした配慮で何とでもなるような気がする。それよりも情報教育の見地からいって問題なのは,ルールやマナーを知らないうちから,ネットワーク利用に慣れ親しんでしまっているという点ではないだろうか。つながる・広がるを実感するのは悪いことではない。いくら教科書のネットワーク構成図を使って説明したところで,実体験に勝ることはできない。しかし,ネットワーク上に潜む危険や利用上守るべきことがらを知らないままで,ゲームという一定の枠に守られた世界でネットワークを利用し続けるというのはいかがなものだろうか。ゲームと共に成長し,高校生になったとき,情報科でネットワークの光と影なんていってみたところで,すでに手遅れではないのだろうか。
 数年後には小さいころからゲーム機でネットワークを利用している子どもたちが中学生・高校生になっている。いざそこで,主体的に情報を活用する必要性に迫られたときに,便利さだけを求めてしまわないかが心配である。そんな時に,「最近の若いもんは,ネットワーク使い方もしらんのか!」と,怒鳴ってみたところで,「効果はいまいちだ」てなことになってしまわないか。
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