ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.33 > p32

コンピュータ教育のバグ
蚊の鳴くような声を聴け!
—インターネットで変化したコミュニケーション—
 祭りといえば,村の鎮守の夏祭りというのが昔からの相場だが,最近はそうとも限らないらしい。インターネットの掲示板などで,あるトピックに書き込みが集中して,非常に大量のトラフィックがあることを称して「お祭り」という。別の言い方では,炎上という言いまわしもある。いずれも,ある話題の書き込みに対して,賛否両論渦巻く書き込みが続いていくうちに,けんか腰になったり,またそれを煽る者が出てきたり,終いにはあまりの大量のアクセスでネットワークに障害が出たりするなんて事もあるようだ。
インターネットの伝播力
 モスキート音をご存じだろうか。もともとは,店先でたむろする若者がいろいろと厄介を引き起こすということを解決するために,イギリスのあるメーカーが開発した音のことだ。高周波の音は年齢を経るにしたがって聞こえにくくなる。これを利用して,若者にしか聞こえない雑音を出すスピーカーを店先に設置して常に音を出しておけば,若者にだけ不快な状態を作り出せるというしかけで,それなりの効果はあるようだ。
 ところが,これを逆手に取った遊びが学校で大流行。若者にしか聞こえないということは,生徒には聞こえても先生たちには聞こえないということ。そこで,これを携帯電話の着信音なんかにして授業中にならすという悪戯を思いついたわけだ。いろんな意味で興味深い出来事である。そもそも,特定の客層にだけに不快な状況をつくりだすという店の営業方針はいかがなものかなどという話もあるとは思うのだが。それはさておき,この携帯の着信音という発想は,インターネットなしには語れないのではないか。悪戯を思いついた誰かがいて,それを実行できるデータをコンピュータでつくるだけでは,こうも大流行することはない。 インターネットにのせた者がいるのだ。
 インターネットの伝播力たるや,今や凄まじいものがある。ちょっとした噂や流行も,一旦インターネットで火がつくと,それこそお祭り騒ぎになるのである。しかも,その気になれば誰でもが手軽に情報発信できるので,今まで世の中に知られることのなかった事柄も,いつでも白日の下にさらされる可能性があるのである。学校とて例外ではない。先生方は,ためしに自分の勤務する学校名をキーワードにインターネット検索をかけてみられるといい。きっと,びっくりするような情報がインターネット上でやり取りされていることに驚くはずだ。このことひとつを見ても,コンピュータ教育が負う責任がますます大きくなっていると実感できるのではないか。
なめてかかってはいけない
 とはいえ,「インターネットのコミュニケーション力なんてたかが知れているだろう」と考えておられる先生方が,日本にはまだまだ多い気もする。真意のほども確かでない情報がいくら大量にあふれていたところで,それが実際に何かに影響を及ぼして,世の中がどうにかなるという具体的な実感があまりないというのが理由だろうか。
 しかし,なめてかかってはいけないと思う。影響は社会のいろいろなところで出てきているのだ。ただ,その事実と原因としてのインターネットをうまく結びつけて考えられないだけなのである。インターネットの影響力について,大したことないと考えられている先生方には,せめて,インターネット検索でモスキート音を見つけて,実際にその音源データを鳴らしてみていただきたい。いくら再生ボタンをクリックしてもいっこうに聞こえない音に驚きを禁じ得ないはずである。それすらできないという先生方には,きっと,このような変化の足音さえ聞こえないだろう。
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