高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)
高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

①国宝「風神雷神図屏風」俵屋宗達筆 (展示期間:全期間)
「高校美術1」P.28・29掲載 「Art and You 創造の世界へ」P.24・25掲載
②重文「風神雷神図屏風」尾形光琳筆
(展示期間:4月8日~5月18日 本館2F「日本美術の流れ」7室にて公開)
「Art and You 創造の世界へ」P. 24・25掲載
俵屋宗達の「風神雷神図屏風」は日本絵画の名宝として、広く知られた作品です。中央に大きく空間をとり、右に風神,左に雷神を配置した印象的な構図、二神のとる力強いポーズやたなびく衣、墨のにじみを活用するたらし込みの技法で描かれた雲などから、いまにも動きだしそうな迫力を感じることができます。二神は風や雷・雨という、人間にとって畏怖の対象でもあった自然現象を神格化したものですが、どことなく親しみやすい、ユーモラスな表情を浮かべているのも特徴です。
宗達は伝記などの記録が少なく、生没年を含め、不明なことの多い画家といえます。とはいえ、16世紀後半から17世紀前半に京都を中心に活躍したということは間違いないようです。俵屋という屋号で絵画工房を率いていたとされ、扇絵を中心に屏風絵なども手掛けたと伝えられており、「風神雷神図屏風」における二神の配置は扇絵の構図を基にしているという説もあります。
一方、尾形光琳の「風神雷神図屏風」は宗達のものより約100年後に描かれた作品です。光琳の曽祖父が、宗達と共作を手掛けるなどと関係の深かった書家、陶芸家の本阿弥光悦の姉と結婚していたことから、尾形家には宗達の屏風などがあったと考えられています。光琳はそういった作品に触れ、やがて宗達に私淑するようになったのではないでしょうか。
光琳はこの作品を描くにあたって、宗達の「風神雷神図屏風」を実際に見て、深く研究し、制作にあたったと考えられています。比較すると、光琳が宗達の描いた構図やポーズ、筋肉の描線までをかなり正確にトレースしていることが分かるでしょう。とはいえ、光琳が独自の解釈を加え、描き変えている個所もあります。例えば、二神の衣や太鼓で、宗達が画面よりはみ出るように描いていた部分を、光琳は屏風のサイズを大きくして、画面に収めるように描いているのです。また、宗達では下を向いている雷神の目線が、光琳では右の方を向いている、という違いもあります。それ以外にも、注意深く見ることで雷神の腰布の色や雲の表現に違いがあることに気づくことができるでしょう。
東京国立博物館では4月8日~5月18日の間、この二作品を同時に展示します。光琳が参考にした宗達のオリジナルを見て、光琳の表現の工夫を確認し、自分であればこう描く、などと想像しながら鑑賞するのもよいのではないでしょうか。
(編集部)
<展覧会情報>
- 栄西と建仁寺
- 2014年3月25日(火)~5月18日(日)
展覧会概要
- 日本に禅宗(臨済宗)を広め、京都最古の禅寺である建仁寺を開創した栄西。その栄西および建仁寺ゆかりの宝物を多数公開する特別展です。海北友松、長谷川等伯、伊藤若冲、曽我蕭白、長澤芦雪、白隠らの作品を展示します。
■東京国立博物館
- 所在地 東京都台東区上野公園13‐9
- TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
- 休館日 月曜日(4月28日、5月5日は開館、5月7日は休館)
<次回展覧会予定>
- 「キトラ古墳壁画」
- 2014年4月22日(火)~5月18日(日)
その他、詳細は東京国立博物館でご覧ください。