高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

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特別展示 再発見 歌麿「深川の雪」
2014.05.01
高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.057特別号 教科書掲載作家の作品に出会える展覧会>
特別展示 再発見 歌麿「深川の雪」

「深川の雪」 紙本著色/199×341cm/江戸時代・19世紀初頭/岡田美術館蔵(神奈川県)

 喜多川歌麿(1753頃―1806)の肉筆画の大作として、存在は知られていたものの、1948年(昭和23年)の銀座松坂屋での展示以来、行方不明になっていた「深川の雪」が発見され、修復のうえ、66年ぶりに一般公開されています。掛け物として表装された本作は、歌麿による肉筆画としては最大級の縦約2m、横約3.5mというサイズです。
 歌麿はこの作品で深川にあった花街の、とある料亭の二階座敷を舞台に、総勢26人の女性を華やかに描き出しています。さまざまな年代の女性を色とりどりの衣装、髪型、化粧、しぐさなどでしっかりと描き分け、それぞれを巧みに配置して安定した構図に練り上げているのが特徴です。全体を捉えても細部を追っても見どころのある、非常に充実した作品といえるでしょう。
 この作品には落款がありません。そこで、研究者は描かれた女性の髪型や化粧などを、形や色から分析し、歌麿の生きていた時代における、そのときどきの流行と照合して、制作年を絞り込みました。髪型としては、髪を薄く伸ばし、櫛目をつけて内側が透けるように結う灯籠鬢が多く描かれており、下唇が緑色に着色されているのも大きな特徴です。これは、笹色紅という江戸時代の一時期に流行した化粧法を表します。こういった特徴と江戸風俗研究との照らし合わせから、この作品は歌麿の最晩年となる19世紀の初頭に描かれたものと判断されました。
 18世紀後半に老中、松平定信は寛政の改革を発令します。改革では出版統制が行われ、浮世絵は風紀を乱すものとして、厳しい取り締まりを受けました。歌麿の重要なパトロンで版元の蔦谷重三郎は財産の半分を没収されるという重い罰を受け、1804年には歌麿自身も禁制の題材を描いた罪で捕縛の憂き目にあったことが明らかになっています。
 寛政の改革以降、江戸での弾圧を逃れるように歌麿はたびたび栃木を訪れ、この「深川の雪」以外にも「品川の月」(1788頃|フリーア美術館蔵[アメリカ])「吉原の花」(1791頃|ワズワース・アセーニアム美術館[アメリカ])という大作の肉筆画を描きました。これらは「雪月花」の三部作と呼ばれており、栃木の豪商であった善野伊兵衛の依頼により制作されたと伝えられています。

(編集部)

 

<展覧会情報>

  • 特別展示 再発見 歌麿「深川の雪」
  • 2014年4月4日(金)~6月30日(月)

展覧会概要

  • 喜多川歌麿の大作「深川の雪」の66年ぶりとなる一般公開を中心に,歌麿の肉筆画「芸妓図」,「三美人図」,葛飾北斎や上村松園などの女性を描いた作品を展示し,近世から現代にいたるまでの美人画の変遷の一端を展観します。

岡田美術館ico_link

  • 所在地 神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷493-1
  • TEL 0460-87-3931
  • 休館日 会期中無休(臨時休館あり)

<次回展覧会予定>

  • かわいい生き物たち(仮称)
  • 2014年7月4日(金) ~ 9月30日(火)(予定)

その他、詳細は岡田美術館Webサイトico_linkでご覧ください。