学び!とシネマ 一緒にシネタイム 子どもも、大人も。

テラビシアにかける橋(2007年・アメリカ)

心温まる家族映画
子どもにとっても、大人にとっても

画像:テラビシアにかける橋

 小さいころ、原っぱに落ちている廃材を利用して「秘密の小屋」を作ったり、「探検」と称して、未知の場所に出かけたりしたものである。「秘密の小屋」を作ったり、「探検」をした経験のある人なら、懐かしい思い出のよみがえる映画である。

 「テラビシアにかける橋」(東北新社配給)は、数々の児童小説を書いたキャサリン・パターソンの同名小説の映画化。ハリー・ポッターなどの荒唐無稽なファンタジーとは違って、少年少女の学校や家庭での暮らしぶりが、自然に囲まれた田舎の町を舞台に、丹念に描かれる。そして、少年と少女が、豊かな想像力で作りあげた森の世界で過ごすことで、少しづつ成長を遂げていく。

画像:テラビシアにかける橋

 11歳のジェス少年(ジョシュ・ハッチャーソン)には、二人の姉、小学校に入ったばかりの妹、生まれたばかりの赤ちゃんがいる。ジェスは、同級生に後ろから体当たりされたり、上級生の女の子たちからもなにかといじめられたりの、気弱な少年である。
 両親は、女の子たちの面倒で手いっぱい、たったひとりの男の子なのに、ジェスにはあまり優しくしてくれない。古くなった運動靴を棄てられ、姉のお古を与えられたりで、そう裕福な家庭でないことが分かる。そんなジェスの特技は、いろんな生き物を想像しては絵を描くこと。

 ある日、転校生がやってくる。目を見張るような美少女、レスリー(アンナソフィア・ロブ)である。学校でのかけっこは、ジェスに勝つし、作文でも群を抜いてうまい。レスリーは、なんとジェスの家の隣の豪邸に住んでいる。彼女の両親は自由な思想の持ち主で、ジェスにも暖かく接してくれる。

画像:テラビシアにかける橋 活発なレスリーは個性的であるが故に級友とはなじめない。やはりクラスでは浮いた存在の、気弱なジェスと仲良しになっていく。二人は、ロープを使って、小川の向こうにある森で遊ぶようになる。そこで、木の上にある小屋を発見、レスリーは言う。「目を閉じて、心の目を開いて」、そして、「ここにわたしたちの国を作ろう」と。

 やがて二人は、森の中に空想の国「テラビシア」を創りあげる。テラビシアには、ジェスが絵に描いたような不思議な生き物たちがたくさん。美しい森の国テラビシアでは、ジェスが王様、レスリーが女王である。
 気弱だったジェスは、レスリーと「テラビシア」で遊ぶうちに、現実の世界でも少しずつ自信を持つようになり、元気な少年になっていく。
  ジェスは、音楽のエドマンズ先生に憧れている。先生もジェスに絵の才能があることを知って、ある日、美術館にジェスを連れていく。喜ぶジェス。が、しかし、このことがきっかけで、悲しい事件がジェスに起こることに…。

 子どもにとっての厳しい現実がある。しかし、想像し、創造することで、厳しい現実に立ち向かうことも出来る、いや、立ち向かっていかなければならない。
 かつて子どもだった大人たちに、これから大人になろうとする子どもたちに、映画は、多くの、大事なことを伝えてくれる。
 子どもにも、大人にも、平等に「テラビシア」は存在する。想像し、創造することで、「テラビシア」にかかる橋を渡っていく勇気を持つかどうか、である。

 レスリー役のアンナ・ソフィアロブは、「チャーリーとチョコレート工場」に子役で出ていたが、もはや美少女に成長、大スターにブレイクする可能性を秘めている。監督は、アニメ畑出身のガボア・クスポ。劇映画デビューにしてはそつのない演出ぶりである。

●2008年1月26日、より、渋谷東急ほか全国松竹・東急系にて拡大ロードショー!!