学び!と公民

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主権者教育について考える
2026.01.19
学び!と公民 <Vol.04>
主権者教育について考える
橋本 康弘(はしもと・やすひろ)

 主権者教育という言葉が使われるようになって久しい。主権者教育という言葉は「18歳選挙権年齢」の実現を契機として、総務省の「常時啓発事業のあり方等研究会」の最終報告書に登場した。官による定義づけ・言葉の使用はおそらく初めてだったと思われる。その後、「18歳選挙権」を可能にした「公職選挙法の一部改正」における参議院の特別委員会における付帯決議にも、主権者教育という言葉が示された。その付帯決議の内容は、以下のようなものであった。

本法により新たに有権者となる若年層において、民主主義の根幹である選挙の意義等の十分な理解が進むことが本法施行の前提ともなるべき重要な事柄であることに鑑み、主権者教育及び若者の政治参加意識の促進に向けた諸施策を速やかに実施するとともに、その一層の充実を図ること

 この付帯決議だけだと、官が考えている主権者教育の意味内容を正確に捉えることが難しいので、当時付帯決議が審議された際の付帯決議の提案者の答弁を見てみよう。

十八歳選挙権の実現に向け、政治教育、主権者教育の充実は極めて重要である。現在も、学習指導要領には、憲法や選挙制度、その仕組みについて教える記述はあるが、十八歳選挙権が実現したら、高校生の一部が選挙権を持つことになるので、民主主義社会における政治参加意識を高めるため、国や社会の問題を自分たちの問題として考え、捉え、行動していく、主権者としての素養を身に付ける教育を充実させていくことが大変重要であり、~以下省略

 つまり、提案者は、「国や社会の問題を自分たちの問題として考え、捉え、行動していく」そういった主権者を育成する教育として主権者教育を捉えていた。単に選挙に行くだけ、若者の投票率を上げるだけ、そういったことを目的とした「浅い」主権者教育は当然ながら想定されていないのである。その際、前回のコラムにも示した当事者性も重要になるし、根拠やデータに基づいて合理的な政治に係る意見を述べることができるようになる主権者育成も大切である。他方で、この間、根拠やデータに基づく意見形成だけではなく、主権者教育を深掘りするためには、「声」を聴くという学習活動も重要になると筆者は考えている。
 先日、筆者の大学に所属する大学2年生が「消費税を上げるべきか下げるべきか、維持すべきか」といった主題で模擬授業を行った。様々な資料を読み取らせながら、消費税のあり方を学生(生徒)に考察させていた。その際、授業を参観していた税理士が、「消費税は『預かっている税』であり、所得税とその点が違う。実際に多様な事業者は、その『預かっている税』を企業の運転資金に回している。そして、運転資金が枯渇すると、滞納が生じる。消費税の滞納額がどれだけあるか考えてほしい。消費税のあり方を考えるうえで一番大事なポイントは景気動向だ、ということになる」と発言していた。また、消費税の問題を考えるうえでは「事業者の声」が大切であることを述べていた。
 筆者は、その発言を聞いて、「我が意を得たり」と感じた。根拠やデータだけでは見えないことが多くある。むしろ、見えない点がその問題を考えるうえでの本質であることがある。主権者教育は、そろそろ、「根拠やデータ」だけではなく、「声」に依拠するものに転換すべきである。声を大きくして言いたい。