学び!とPBL

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OECD東北スクール①
2018.08.20
学び!とPBL <Vol.05>
OECD東北スクール①
三浦 浩喜(みうら・ひろき)

1.はじまりのはじまり

 大震災の2011年、子ども支援ボランティアの統括をして土日もない生活をしていた11月、パリからOECD(経済協力開発機構)教育スキル局が福島大学に来るので、これまでの取り組みをプレゼンできるよう準備しておくように、という指示が降りてきました。大げさではありますが、この出会いが、私ばかりか、私と出会う多くの人たちの運命を大きく動かすことになります。
 今回のOECD来日の目的は、同年4月にグリア事務総長が来日時に約束した「東日本大震災の復興支援」を具体化することでした。しかし、OECDは世界最大のシンクタンクと呼ばれ、世界各国の様々なデータを集め政策提言を行う国際機関で、一国の災害復興を行うような機関ではありません。お金や人、物の支援は一切なく、アイディアとコネクションの提供でした。

図1 OECD東北スクール参加市町村

 OECDの描くストーリーは、世界の各地で大きな災害が起きると、そこから新しい教育が生まれる、東日本大震災は1000年に一度の大災害と呼ばれ、これを機に新しい教育が生まれるはず、これを日本の教育改革に結びつけていこう、というものです。
 OECDの提案するプロジェクトは、後に「OECD東北スクール」と呼ばれる、被災地の中高生を復興支援の担い手として育てる約3年にわたる教育プロジェクトでした。OECDが被災地に課すミッションは「2014年にパリから世界に向けて東北の魅力をアピールする」イベントを開くことです。あまりに巨大で、どこから手をつければいいのか全くわからない難問だらけのプロジェクトでしたが、できる範囲内でいいから協力してほしい、と言われたので「あくまでもできる範囲内で」と返したのでした。

2.OECD東北スクールがめざしたもの

 2012年の3月に、OECD東北スクールの第1回集中スクールをいわき市で開催することが決定し、私の身辺がにわかに忙しくなってきました。「できる範囲内で」とは言ったものの、スクールの事務局を福島大学に置けないかと要請され、いつの間にやら私はプロジェクトマネージャーとなっており、採用したばかりの七島事務局長、アルバイトの3人の大学院生とでにわか仕立ての事務局をつくりました。

図2 OECD東北スクールスケジュール

 毎週のようにOECDと文部科学省を結んだ電話会議を夜遅くまで開き、第1回集中スクールの打ち合わせを重ねました。しかしこのときまではまだ、スクールのワークショップはすべてOECD側で準備してくれるので、こちら側はロジスティクスを、いわば裏方だけを担当すればいい、と考えていました。しかし、参加者リストには、福島・宮城・岩手三県の生徒や学校教員以外に、文部科学省から前副大臣の鈴木寬氏や文部科学審議官の山中伸一氏、テレビでお馴染みの池上彰氏・増田ユリヤ氏らが参加し、グリアOECD事務総長や吉川OECD日本政府代表部大使らがビデオレターを寄せられるという、こちらの想像をはるかに超えたスケールで、裏方のたいへんさに強い不安を覚えます。
 それだけではありません。同じリストには、様々な企業関係者や聞いたことのないNPO、フランスのアーティストやフランス大使館関係者、シンガポールの小学校の校長先生、加えて東京や奈良の高校生も含まれています。何がどうなっているのか、理解できませんでした。
 OECDの思惑は次のようなものでした。地域復興をめざす生徒達に必要なものは「21世紀型」と呼ばれる能力、その能力を身につけさせる教育方法はプロジェクト学習(PBL)、プロジェクト型の学習を組織するには学校のみならず、企業やNPO、自治体、研究者などの様々なステークホルダーによるネットワークが必要、そのネットワークづくりこそがこのOECD東北スクールの真の目的だったのです。いわばこのプロジェクトはOECDのアクション・リサーチであり、新しい教育をつくる社会実験なのです。このような基盤は日本にはなく、本当にこのようなことが成功するのかどうか、OECD内でも相当な議論があったと言います。

3.参加した生徒達

図3 第1回集中スクールの様子

図4 チーム〈環〉が誕生した瞬間

 2012年3月25日、4泊5日に及ぶOECD東北スクールの第1回集中スクールが始まりました。約100人の中高生が狭い会場を埋め尽くし、グリア事務総長や吉川大使らの挨拶がビデオで流されます。金沢工業大学の三谷宏治先生や池上彰氏のワークショップが続き、生徒達はこれまでにない知的興奮を味わいます。

 参加した生徒達は、自ら参加した者もいましたが、多くは「パリに行けるから(実際はその確約などはなかった)」と安易に飛びついた者や、自治体からの要請で訳もわからず参加したという者も少なくありませんでした。被災地の中高生と言っても、実際に近親者や友達を津波で亡くした生徒や津波に巻き込まれ九死に一生を得た生徒もいましたが、多くは直接的な被災はなく、自分が被災者なのかどうなのかわからないと悩む生徒、震災直後は何もできなかったからここでできることをやりたいという生徒が大半を占めていました。いわば、「普通の生徒」達によって、OECD東北スクールは成り立っていました。
 彼らが自分たちのチームにつけた名前は〈環〉でした。生徒と大人、被災者と非被災者、日本と海外が環流することを願ってつけた名前でした。

表1 第1回 集中スクールのワークショップ一覧

はじめまして!
過去から今を生きる
東北けんみんショー!

池上彰(フリージャーナリスト)

「発想力・探究力」

三谷宏治(金沢工業大学)

過去をふり返る

三浦浩喜(福島大学)

未来の自分、未来の東北、未来のニホンは?

Edmund Lim(シンガポール小学校長)
池上彰

自分のシルエットで未来予想図を描こう!

磯崎道佳(アーティスト)

バーチャルパリ旅行
チームに名前をつけよう
役割を分担しよう

Gad Weil(国際イベントプロデューサー)

誰に伝える? どう伝えようか?

梛木泰西(テレビマンユニオン)

任務遂行にはビジョンと戦略が必要!
各チームで実行計画づくり

内田和成(早稲田大学)

チームによる発表&フィードバック

鈴木寬(前文科副大臣)
丸山邦治(丸山海苔店社長)
内田和成、三浦浩喜

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