学び!と社会

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授業にお役立ち!④ まとめ活動が好きになる!表現物を工夫した授業~総論編~
2022.12.27
学び!と社会 <Vol.13>
授業にお役立ち!④ まとめ活動が好きになる!表現物を工夫した授業~総論編~
日本体育大学教授 田口紘子

(1)学習の結晶化・まとめ活動

筆者 45分の授業終了時や単元終了時などに行われるまとめ活動では、たくさん学んだことのなかでも要点となる情報が集まり適切に配列されていく「学習の結晶化」が行われているのではないでしょうか。学校教育では当たり前に行われているまとめ活動ですが、学校教育後の長い人生においても、生活や仕事などでの膨大な情報を俯瞰したり、今後の進むべき方向性を見出したりする力を秘めたすごい活動だと思います。
 今月から3回にわたって、社会科におけるまとめ活動やその表現物の可能性に焦点を当てて論じていきます。今回は総論編として、まとめ活動の構想と表現物の大別について考えてみます。

(2)先生もわくわく!まとめ活動の構想

 なによりも先生にもまとめ活動を楽しみにしてほしいと思います。楽しいまとめ活動から授業全体を逆算し、単元内の各時間やまとめ活動との関係性や意味を考え、授業全体がより楽しいものになることもあるからです。「構想したまとめ活動から考えて、まとめ活動に至るまでの授業全体の設計も変えてみようかな…」と思ったら授業改善のチャンスなのです。まとめ活動をわくわく構想する時に、ぜひ検討してほしいのが下の①~⑤です。

①まとめる目的②まとめの読み手
 目的の第一は、まとめた児童本人を含む教室内の児童たちが学習内容を整理したり理解したりすることであり、教師が児童たちの理解を把握したり確認したりすることでしょう。そして読み手も、まずは教室内の児童たちや先生となることでしょう。

③まとめの状況設定
 上のように①目的や②読み手の第一に教室内の児童たちや先生をおきながらも、教室を越えた③まとめの状況設定をすることもできます。例えば「○○市の案内のために」や「□□市の児童が読む」といった①目的や②読み手を追加するのです。まとめ活動にリアリティや読み手意識が加わって、まとめる意欲が向上する可能性や、教室外の読み手からフィードバッグを得る学びに広がる可能性も生まれてきます。

④まとめ方
 まとめる内容に適切な表現物を先生が指定する場合が多いと思いますが、東京都中野区立美鳩小学校校長・佐藤民男先生が紹介されているように、訓練を積んでいけば、児童がまとめ方を選択し、試行錯誤してまとめていく経験も重要でしょう(https://www.nichibun-g.co.jp/data/web-magazine/manabito/shakai/shakai007/)。
 そして先生や児童の選択肢となる表現物については下の(3)で取り上げますが、詳しくは次回以降で見ていきたいと思っています。

⑤まとめ活動の提示のタイミングや頻度
 (ア)単元導入などで単元末のまとめ活動を提示し、まとめにつながる内容は毎授業で確認しながら、単元のゴールであるまとめ活動に導いていく冒頭提示型もあれば、(イ)単元終末にまとめ活動を提示することで、各自で振り返りながら学習内容を整理・総合してまとめていく終末提示型もあります。
 また(ウ)単元内で類似したまとめ活動を繰り返す反復型もあるでしょう。例えば先生主導でまとめた「火事からくらしを守るしくみ」図を参考に、「事故や事件からまちを守るしくみ」図は児童がまとめていく場合などが該当するでしょう。

(3)よりどりみどり!まとめ活動の表現物

 社会科で多用されるまとめ活動の表現物は多くありますが、今回はそれらを2つに大別して考えていきたいと思います。

  • 要素表現物:地図、年表、図表など
  • 総合表現物:レポート、新聞、Webページなど

 要素表現物は、それぞれ単独でも単元内容を網羅するような表現物になりますが、レポートや新聞といった総合表現物に含まれる場合にはレポートや新聞という全体のなかの要素になるという意味で名付けました。児童がさまざまな要素表現物の作成に慣れた頃に、要素表現物を効果的に使った総合表現物にチャレンジできるとよいように思います。
 要素表現物にはさまざまなタイプがあり、まとめるのに適した内容や児童に必要なまとめる技能も大きく異なります。次回詳しく見ていきましょう。

【参考文献】

  • 岩田睦巳(2019)「表現活動 年表・図表・文章・新聞などにまとめる指導スキル まとめる指導スキルが高まれば、授業づくりと評価のスキルも高まる!」『社会科教育』56 (8), 明治図書出版, pp.34-37.
  • 西岡加名恵・石井英真(2019)『教科の「深い学び」を実現するパフォーマンス評価』日本標準
  • 橋本和幸(2019)「学び合い はじめの一歩でつまずかない指導スキル みんなでつくる社会の授業『学び合い』がうまくいく7つのポイント」『社会科教育』56 (8), 明治図書出版, pp. 46-49.