読み物プラス

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共に、生きる。
2018.01.09
読み物プラス <Vol.28>
共に、生きる。
どうとくのひろば No.17、18「こころのひろば」より
フリーアナウンサー、「クリステル・ヴィ・アンサンブル」代表理事 滝川クリステル

 動物保護活動に取り組まれている滝川クリステルさんに,動物と共存できる社会の実現に向けて,日本ではどのような教育が必要なのか,また,目標を達成するために,どのように信念を貫けばいいのか,お話を伺いました。

― 今日はどうぞよろしくお願いいたします。

 教科書にも私が掲載されているんですよね。

― はい。道徳の教科書に「オリンピック招致活動で滝川クリステルさんが手振りをつけながら,世界に語りかけました。」というのを,掲載しております。

 そうですか。今回の「共に,生きる。」というテーマもぜひ子どもたちに伝えていただきたいことなので,扱ってもらえるのはとてもありがたいです。

― 弊社の道徳の教科書のタイトルが「生きる力」ですし,生命の尊さを伝えるという意味を込めてお話を伺いたいと存じます。

 よろしくお願いいたします。

― オリンピック招致活動と同じころに,「クリステル・ヴィ・アンサンブル」を立ち上げられましたが,何かオリンピックと通じる思いがあったのでしょうか?

 動物の保護や共存について,個人で活動していくにはやはり限界があると感じていました。そんな中,日本に2020年という目標ができて,ここで立ち上がるのがベストだと。
 私にとって2020年はオリンピックでもあり,この活動を認知してもらうための期間にも思えたのですね。

― ご活動のきっかけというのはあったのでしょうか?

 もともと弱い立場の人や動物のための団体を立ち上げたい気持ちがありました。まず,やはり一番声を出せない―「声なき声」と私は言っているんですけど―動物たちを何とかしたいと。このことについて声を上げる方がなかなか日本でいなかったという現実もありましたし。

― 「動物愛護」についてはずっと関心をお持ちだったんでしょうか?

 「動物愛護」でも「動物福祉」でもなくて,私たちはこれを「アニマルウェルフェア(※)」というふうに呼んでいます。私たちがいろんなものを与えてもらっている以上,共存する形で彼らにとってよりよい環境を作るべきだと思うんですね。海外では「アニマルウェルフェア」ってすごく進んでいます。

― 日本と海外とでは考え方が違うものですか?

 かなり違いますね。日本はアジア圏では進んできているようにも感じますが,先進国の中では一番遅れています。おもてなしなど,いろんな面で優れている日本ですが,ペットや野生動物との共存や生き物に対する知識については教育されていないと感じます。親が子どもに対して「命の大切さは当然知ってるでしょ。」と思っていても,実はちゃんと教えないと理解できないことなんですね。海外では,教育者がちゃんときめ細やかに「動物と人間は対等」だと伝えています。

― 具体的にそういう授業があるんですか?

 はい。以前,コスタリカで教育の現場に行かせてもらいましたけど,興味深かったのは,「私たちは生態系の中の一部であって,決して上にいるわけじゃない。征服しているわけじゃない。」ということを教えていたことです。そう言われると「えっ?」って思いますよね。私たちは生態系や食物連鎖の図で人間が入っていないことを不思議に思わないですけど,「入っていないことが不自然」ということを教えているんです。そういう教育が強化されている国だったので,「ああ,すごいなあ。」って思いました。

― 生態系の一部に人間もいるという気持ちを忘れてはいけないということですね。

 はい。本当に対等。一緒に生きているということ,共存してるってことを忘れちゃいけない。そして,それを子どもの時からちゃんと教えないといけない。
 ペットも野生動物も同じことだと思うんですよね。「飼ってあげている」と思いがちですけど,どれだけ私たちも彼らのおかげでいろんなことを与えられているか。動物の立場になってみることで,自分たちも教わることがたくさんあります。それは子どもも一緒だと思うんです。

― 日本でもそのような授業が必要だとお考えですか?

 そうですね。私は「命の花」という,殺処分について考える活動を支援しています。
 「命の花」は,高校生が自ら気づいてやっている活動なんですが,本当は彼らから発信するのではなくて,大人から伝えないといけないと思うんです。
 こういう問題って現実から目を背けちゃいがちですよね。最初のほうは私もそうだったし。

― では,何がきっかけで変わられたのですか?

 「報道」ですね。ドキュメンタリーのような真実を伝えるという仕事では,現実に目を背けてはいられません。「見たくない。かわいそう。」という気持ちを突き抜けていこうと決断できてからいろいろ始まりました。
 報道番組をやっていたときに「処分」の映像をテレビで初めて流したんですね。すごく抗議がくるかと思っていたら,肯定的な反応がほとんどで。「よく見せてくれた。これで現実が見えました。」とも言われました。
 子どもたちにショックを与えずにどうやって伝えるか,そこが私も報道の立場で辛かったし,すごく悩んだんですけど,これがきっかけで動き出す人もいたと聞いて,もうそういう時期じゃないんだと。やっぱり「伝える人」として本当のことを伝えるべきなのだと思いました。

― 「クリステル・ヴィ・アンサンブル」の活動中に印象に残ったエピソードはありますか?

 子どもたちの反応ですね。実は私に会いたがる子どもたちが多くて。小中学校,高校生の子たちの「講演に来てください。」という話とは別に,個人的に。たとえば友人の子どもたちが私の活動を知って,一人で募金活動をしたり,何かを作ってそれをお金にして,「これを猫ちゃん,犬ちゃんに使ってください。」と私のところに持ってきたり。そういう子どもがたくさんいるのは素直にうれしいですよね。

― 子どものほうが大人よりも敏感ですか?

 敏感ですね。今まで現実を知らなかっただけで,知ったときの彼らの行動力はすごいですね。大人のような「どうしよう。」がないんですよ。素直に感情のままに,「これ以上殺しちゃいけない。」っていうシンプルな答えが彼らの中にあるので。そこに私はすごく希望を持っています。一方,伝えて知ってもらうことで,こんなに純粋に動く子たちがいるわけだから,やっぱり「知らせないこと」はひとつ道を塞いでいるんだなと思います。

― 子どもを見習わないといけないですね。

 本当にそう思います。大人は「わかっていても動けない」という人がほとんどだと思うので。

― 「わかっていても動けない」大人にはどういうことが必要だと思いますか?

 大人は「何をしていいかわからない。」というのが一番多いですね。パソコンやテレビで情報が得られる時代に,何もできないなんて言い訳をしているように見えちゃう。
 大人に必要なもの。それは勇気かもしれませんね。
 私も最初はいろいろあったんですけど,最後は自分は何をしたいかですよ。純粋に「動物たちを助けたい。」と思ったから動いたんですね。
 けっして動物が大好きだとか感情的なものではなくて,このままじゃ教育的にもよくないんじゃないかとかも思いましたし。

― 「小さいころから犬とか猫とかが好きだった」からかと思っていましたが,そういうものとは違う思いで活動されているんですね?

 逆に,そういう感情だけだったらちょっと難しいと思うんですよね。感情的になってしまうことが多い問題ですから。声を出せない生き物を助けるために人間が声を出さないといけないという思いが強すぎると,敬遠されてしまったり,ヒステリックになってしまったりするので,そこは感情をコントロールして冷静にならないといけないと思うんです。むしろ中立の人がこういう問題をやることが大事で,冷静に対処することも必要ですし,自分もなるべくそういうふうに立ち振る舞いたいと心がけています。

― 自分の信念をしっかり貫いていくということについても,小・中学生にメッセージをお願いします。

 信念ですか……。いかにぶれないかが本当に大事で,それはすごく難しいことだと思うんですね。
 あと,しつこくあること(笑)。「しつこい」ってすごく嫌な言葉に聞こえますけど,私はこの活動をしつこくやっているんですよ。「続けている。」って言えばいいんですけど,「しつこく」って言ったほうがインパクトありますよね。とにかく10年もこの課題をやっていますから,しつこいですよ,やっぱり。(笑)

― 10年もされているんですか?

 やっていますね。形は変わりましたけど,訴え続けています。やっと今,いろんな方が動いてくださるようになってきました。10年前はそんなこと皆無でした。そういう意味ではすごく変わってきたなあって思います。
 子どもたちにはしつこさが悪いこととは思わせたくないなと。性格という問題じゃなくて,物事や行動に対してしつこくあれ,という気持ちですね。

― 「しつこい」って悪い言葉みたいですけど,そうじゃないんですね。

 アーティストや職人の皆さんはしつこいですよね。しつこく追求する。しつこさがあって信念を貫いてらっしゃるから,悪い言葉ではないんじゃないかなと思って。

― 最初に2020年を目標に認知度を広げたいとおっしゃいましたけど,今はどんな感じですか?

 私たちが目指すところに近づけてはいますが,自分の仕事と二足のわらじでやっているので……。
 思うようなスピートで動かすまではいけてないんですけど,人々に伝わっていることは実感しています。そこは財団を立ち上げてよかったなあと。いろんな方に「こういう財団を立ち上げている。こういう問題があるんだ。」と理解してもらって,解決していこうという流れにつながっていったらいいなと思っています。

― そうなんですね。今後のご活躍をお祈りしています。本日はありがとうございました。

 

※アニマルウェルフェア……人間が動物に与える痛みやストレスなどを最小限に抑え,動物の健康的な生活・生存権を実現する考えのこと。

 

→この記事が掲載されている「どうとくのひろば No.17、18」全編は、当サイトの広報資料「どうとくのひろば」にて公開中です。

 

滝川 クリステル(たきがわ くりすてる)
フリーアナウンサー,「クリステル・ヴィ・アンサンブル」代表理事
1977年 フランス生まれ。青山学院大学文学部卒業。2002~2009年 フジテレビ『ニュース JAPAN』のメインキャスターを経てフリーに。WWF(世界自然保護基金)ジャパン顧問,世界の医療団 親善大使を務める。2013年 フランス芸術文化勲章シュヴァリエを受章。東京2020オリンピック・パラリンピック招致活動に貢献。2014年 アニマルウェルフェアに則った犬猫の殺処分ゼロを目的に「一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブル」を設立し,殺処分される犬や猫を減らす活動に力を入れている。
【一般財団法人 クリステル・ヴィ・アンサンブル】http://www.christelfoundation.org/

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