新小学校学習指導要領の実践課題についての疑問や社会科の基礎的・基本的な事項についての疑問にお答えします。

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Q

地域の昔の写真は、どのように探せばよいでしょうか。

2022.01.14 / 授業づくり
回答者:日本文教出版 編集部

A

今と昔のようすを比べる活動は、子どもたちの驚きと発見を引き出し、もっと知りたいとの関心や意欲をかきたてるために、ぜひ取り入れたい活動ですね。そのために、先生方は、昔使われていたくらしの道具を探したり、当時のくらしのようすがわかる写真を探したり、地域のお年寄りから話を聞いたりと、いろいろと苦労されていると思います。

資料の探し方としては、学校の社会科資料室に保管されている道具、学校の○○周年記念誌の中にある記録写真、○○市史の中の記録写真、校長室などに掲示されている航空写真などが比較的手に入れやすいと思います。県や市の博物館に問い合わせてみるのも方法の一つです。

しかし、研究授業というのならともかく、毎日の激務の中では、資料集めもままなりません。そんな中、今と昔を簡単に比べられる方法があります。

それは、国土地理院が資料提供している「空中写真」を利用すること。町のようすを空からながめた写真で、1960年代と現在のようすを見比べることができます。

出典:国土地理院ウェブサイト
https://maps.gsi.go.jp/#14/34.717735/135.306587/&base=std&ls=std%7Cseamlessphoto%7Cort_old10&blend=00&disp=111&lcd=ort_old10&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s1m0f1&vs2=f1&sync=1&base2=ort&ls2=ort&disp2=1

表示している写真は、神戸港付近の新旧比較です。

データのない地域もあります(下左図の着色部分の地域は見ることができます)が、教室にパソコンやタブレットの環境があれば、その場ですぐに見られます。

出典:国土地理院ウェブサイト
https://maps.gsi.go.jp/#5/39.147103/137.724609/&base=std&ls=std%7Cort_old10&blend=0&disp=11&lcd=ort_old10&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1&d=m

出典:国土地理院ウェブサイト
https://www.gsi.go.jp/CHIRIKYOUIKU/photo.html

まず、「国土地理院 地理教育支援コンテンツ」で検索。3、4年の「町のようすを空からながめる(https://www.gsi.go.jp/CHIRIKYOUIKU/photo.html)」へアクセスしましょう。すると、上右図のような「町のようすを空からながめる」方法を紹介するページが開きます。そして、一番下にある「空中写真」のアイコンをクリックします。

続いて、一枚の空中写真(最近のもの)出てきます。左にある項目の「1961年~1969年」をクリックすると、その当時の空中写真に切り替わります。

次に、画面右上の「ツール」をクリックし、出てくるコマンドの「並べて比較」をクリック。そこに出てきた画面の左上の小さな小窓「地図」をクリックし、出てくるコマンドの「写真」をクリックすると、最近の空中写真に切り替わります。この時、左右の画面ともにじゃまなコマンドで半分隠されていますので、写真上部にある「<」「>」をクリックして写真だけにします。

どうですか。時代の違う空中写真が、左右に並びましたね。それから、どちらかの写真をズームにして、目的地を探しましょう。拡大の拡大・縮小や場所のスクロールも連動しているので、同じ場所の比較が簡単にできます。

日本文教出版 編集部

Q

日本を東西に分けてひとくちに「東日本」「西日本」といいますが、境目はどこなのでしょうか。

2021.12.24 / 豆知識
回答者:日本文教出版 編集部

A

広辞苑 第7版には

【東日本】 日本の東半分。広くは中部地方を含めそれ以東。通常は北海道・東北・関東三地方。
【西日本】 日本の西半分。広くは中部地方を含めそれ以西。通常は近畿以西。狭くは中国・四国・九州三地方の総称。

とあります。では、中部地方は東日本・西日本のどちらになるのでしょうね。

そもそも、「東日本」「西日本」という地域分けは、使われる分野によって違っていて、統一見解はないのです。ただし、多くの場合、その分かれ目は中部地方にあるようです。

●地質学の東西

地質学では、糸魚川―静岡構造線をその境目としています。糸魚川-静岡構造線は、いわゆるフォッサマグナの西側境界の大断層で、日本列島を地質学的な東北日本と西南日本に分けています。この大断層の西側には、飛騨山脈・木曽山脈・赤石山脈がそびえているので、子どもにも理解しやすいでしょうね。

●気象庁の東西

また、気象関係では、

  • ・東日本…関東甲信、北陸、東海(三重を含む)
  • ・西日本…近畿(三重を除く)、中国、四国、九州北部、九州南部

とし、さらに北海道、東北地方は「北日本」と呼んでいます。

●電力の東西

電力会社でも、東西で周波数に違いがあります。周波数が50ヘルツなのは、新潟、群馬、埼玉、山梨と、静岡の富士川あたりより東で、それより西は60ヘルツの電気が送られています。しかし、中部電力のエリアでは混合しているエリアもあります。

これらは、明治期に発電機が輸入された際、東日本では50ヘルツのドイツ製が、西日本では60ヘルツのアメリカ製が導入されたことに関係しています。

●味覚の東西

好まれる味にも境界があるようです。日清食品の看板食品、「どん兵衛きつねうどん」の関西版は昆布だし主体の薄味、関東版はかつおだしを効かせた味付けとなっています。見かけは全く同じ商品のようですが、パッケージをよく見ると、ふたの「NISSIN」のロゴ脇に、関西版は「W」、関東版には「E」という小さい印字を見つけることができます。

そして、当時の担当者たちが約1年かけ、新幹線の駅周辺でうどん・そばを食べ比べ、滋賀と岐阜の間付近が好まれる味の境界線という結論に行きついたそうです。

●鉄道の東西

では、鉄道会社ではどうでしょう。JR西日本は、大まかにいうと富山・石川・福井の北陸地方を管轄していて、JR東海が岐阜・三重を管轄しているので、東西の境界はそのラインといえます。

●NTTの東西

次に、NTTを見てみましょう。NTT東日本とNTT西日本は中部地方のあたりで分かれます。大まかにいうと、新潟・長野・山梨・神奈川より東側はNTT東日本の、富山・岐阜・愛知・静岡より西側はNTT西日本の管轄エリアとなっています。ちなみに、市外局番の冒頭の「0」の次の数字が「1」~「4」の地域はNTT東日本の、「6」~「9」の地域はNTT西日本の担当です。「5」の地域は、両方にまたがっています。

その他、何を指標にするかによって「東日本」と「西日本」の境界は違いがありますが、簡単にまとめると、下記の図表のように示すことができます。

日本文教出版 編集部

[参考文献等]

○岩波書店 『広辞苑』第7版

○ジャパンナレッジ 第323回『日本語、どうでしょう?』
https://japanknowledge.com/articles/blognihongo/entry.html?entryid=341

○フォッサマグナミュージアム 「フォッサマグナと日本列島」
https://fmm.geo-itoigawa.com/event-learning/fossamagna_japan-archipelago/

○気象庁 天気予報等で用いる用語
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/tiikimei.html

○関東圏ずらし旅 とらべるじゃーな! ブラタモリ完全掲載より 「SHARP社解説図」
https://service-news.tokyo/wp-content/uploads/2021/11/map.png

○産経WEST 「どん兵衛が東西で味が違う理由」
https://www.sankei.com/article/20180731-43S3PPW3ZBP2FB646ZVJEBUN64/

○日本経済新聞 エンタメ!東京ふしぎ探検隊 「福井や愛知は東日本? 東西境界線の謎」
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO08023480V01C16A0000000

○日経クロステック 「NTTの東と西はどこで分かれているの?」
https://xtech.nikkei.com/it/atcl/column/14/228621/122200010/

Q

水産動物を総称して「魚カイ類」と言いますが、「魚介類」と「魚貝類」どちらを使えばよいのでしょう。

2021.11.19 / 豆知識
回答者:日本文教出版 編集部

A

「ギョカイルイ」を広辞苑で引くと、

【魚介類】 魚・貝など水産動物の総称。水族。魚貝類。

とあり、「介」の字が示され、説明の中に「魚貝類」とも示されています。

さて、この「介」という漢字には、よろい、甲羅、殻などという意味があるため、堅い甲羅を持つ生き物(貝、エビ、カニなど)を指すようになりました。そこから広がって、「魚介類」は魚類および貝類、エビ、カニだけでなく、甲羅のないイカ、タコ、ウニ、ナマコなども含めた水産物全般(ワカメなどの海藻は除く)の「総称」として定着しました。

次に、「貝」という漢字は、貝類そのものをさします。(イカやタコなどは軟体動物として、生物学的には巻き貝や二枚貝などと同じなかまに分類されるのですが、石灰質の外骨格(貝殻)を持たないため貝類とは区別されています。)ですから、「魚貝類」は、魚類と貝類のみを示し、エビやカニ、ウニなどは含まれないことになるので、水産動物の総称とはいえなくなってしまいます。

ちなみに、消費者庁が出している「魚介類の名称のガイドライン」には、魚介類として、魚類(マグロやタイなど)・貝類(アサリやサザエなど)・頭足類(イカやタコなど)・甲殻類(エビやカニなど)・その他(クジラやイルカなど)があげられています。

ところで、「貝」という漢字の音読みは「バイ」、訓読みが「かい」ですから、漢字3つとも音読みで統一するとすれば「魚貝類」は「ギョバイルイ」と読むことになります。(なお「魚貝(ギョバイ)」ということばは、昔の史料には出てきます)。「魚貝類」を「ギョかいルイ」とするのは「重箱読み」という変則的な読み方で、手本といえる正しい読み方とはいえません。おそらく「ギョカイルイ」という言葉を漢字に直すときに、「介(カイ)」と「貝(かい)」を混同したからではないかと思われます。

ですから、教室で子どもたちに説明する場合、水産動物の「総称」として使う場合は「魚介(ギョカイ)類」とし、魚類と貝類のみを指す場合には「魚と貝」などとはっきりいったほうがよいでしょう。ただ、「介」は教育漢字には含まれていませんので、日本文教出版発行の教科書「小学社会」では「魚かい類」と表記しています。

また、NHKや共同通信社、時事通信社などのメディアでは、「魚介(類)」を使用しています。したがって、原則として「魚介(類)」を使えばよいといえます。

日本文教出版 編集部

[参考文献]
岩波書店 『広辞苑』第7版
学研 『学研版学習科学図鑑 貝・水の動物』
保育社 『標準原色図鑑全集3 貝』
NHK放送文化研究所 『最近気になる放送用語』
ジャパンナレッジ 『日本語、どうでしょう?』
消費者庁 『食品表示基準Q&A(別添魚介類の名称のガイドライン)』
NHK出版 『ことばのハンドブック』
共同通信社 『記者ハンドブック』
時事通信社 『最新用字用語ブック』

Q

三重県は近畿地方に含まれるのですか。

2021.03.26 / 豆知識
回答者:日本文教出版 編集部

A

日本の地域の分け方の一つとして、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国・四国、九州の七つの地方に分ける7地方区分があります。

昔、古代の行政区分では、山城、大和、河内、和泉、摂津が「畿内」として定められていました。三重県に関係のある伊賀・伊勢・志摩国は東海道、紀伊国は南海道に属しました。

時は過ぎ、明治時代に“畿内に近い”という意味で、現在も使われている「近畿地方」という概念が生まれました。三重県は、伊賀や伊勢が畿内に接しています。そのため、7地方区分では近畿地方に含まれるのです。明治36年発行の国定教科書でも、三重県は近畿地方として扱われています。

一方で三重県は、地形的にも経済的にも中部地方の東海との関係が深く、天気予報や企業の地域区分では、東海として扱われることが多くなっています。三重県は、中部地方と近畿地方の結節点に位置しており、生活や文化、経済などさまざまな面で双方との関わりをもっています。地方の区分は法律に基づいて一律に定められているわけではなく、省庁でも区分は各々異なっています。

弊社の教科書では、本来の「近畿」という意味を考えて、近畿地方に含めています。また、教科書だけでなく、地図帳でも三重県は近畿地方として扱われています。

日本文教出版 編集部

Q

地域学習が中心となる3年、4年では、教科書をどのように活用法すればよいでしょうか。

2019.05.29 / 学習指導要領、授業づくり
回答者:國學院大學 教授 安野 功

A

3年、4年の教科書は、子どもの生活舞台とかけ離れたよそのまちの「もの・人・こと」が事例となっています。だから使いづらい。そんな声をしばしば耳にします。

そこでここでは、教師と子どもが教科書を使いこなす具体的なアイディアを二つ紹介します。

一つ目は、教師が授業プランを考える際に有効な「教材研究の手引書」として活用する方法です。

副読本は、子どもに身近な地域の話題や学習素材が満載されています。料理に例えると、地元でとれた“旬な食材の宝庫”。それが副読本の強みです。いっぽう、教科書には、“今、求められている授業の姿、期待する子どもの学びの姿”が描かれています。それは問題解決的な学習です。その手引書として教科書を活用し、調理の手順(問題解決の流れ)を決め、副読本から最適な食材(事例や学習素材)を選び出し、料理のプラン(授業プラン)を練り上げていくのです。

ここでの具体的なポイントは、大きく五つあります。

  • ①子どもに気づかせた「素朴な問い(?)」に着目する。
  • ②問い(?)の追究・解決に向け、どんな活動でどのように子どもを導いていくのかを考える。
  • ③上記①、②を通して引き出す「深まった問い」(学習問題)とそれを追究・解していくための見通し(問題に対する予想や追究の計画)に着目する。
  • ④学習問題の追究・解決を図る見学・調査や表現などの活動とそれぞれの具体的な進め方に着目する。
  • ⑤学習の振り返りの活動に着目する。

二つ目は、子どもが自ら主体的に問題を追究・解決していくうえで効果を発揮する「学びのガイドブック」として活用する方法です。

社会科では子どもが自分の体と頭をフル回転させ、仲間とともに問題を追究・解決していく協働思考を伴う問題解決を大切にしていきます。問題を発見する力、調べる力(技能)、考え・表現する力などを育てるためです。これらの力は教師の発問や指示だけで展開する教師主導の学習では育てることができないのです。

それでは、子どもが自力で問題を追究・解決できるように支援していくには、どうすればよいのでしょうか。

ここで威力を発揮するのが教科書です。教科書には資料や本文記述に加え、さまざまなコーナーが設けられています。例えば、日本文教出版の『小学社会』では「学び方・調べ方コーナー」、「考えるヒント」などを特設しています。これらは子どもたちの主体的な問題解決を支援する意図で工夫したものです。特に「学び方・調べ方コーナー」では「見る・調べる」「読み取る」「表現する」など見学・調査の方法や資料の特徴に応じた読み取り方、多彩な表現方法などを例示しています。これらのコーナーを子どもが「学びのガイドブック」として使いこなす、学び方の教材としての教科書活用をお薦めします。

國學院大學 教授 安野 功

Q

単元を見通した授業づくりを行うには、どのようにすればよいのでしょうか。

2019.05.29 / 学習指導要領、授業づくり
回答者:國學院大學 教授 安野 功

A

単元を見通した授業づくりの進め方のポイントは三つあります。

一つ目は、教師の側に立ち、「授業づくりのねらいや意図」を明らかにしておくことです。具体的には、学習指導要領解説を読み解き、単元の学習を通して子どもに「何を(学習内容)、どのように(学習の方法やプロセス)学ばせるのか」「どんな資質・能力を育てるのか」を明らかにすることです。

二つ目は、子どもの姿をイメージしながら、「問題解決のストーリーを想い描く」ことです。具体的には、取り上げる教材との出会いを通して芽生えるであろう問題意識や問いを思い浮かべること、それをスタートにして、子どもの意識や思考の流れが途切れることなくつながり、しかも深まっていく問題解決の流れが展開できるように教師の出方を柔軟に考えておくことです。

ここで何より大切にしたいのが「子ども理解」です。学習内容や取り上げる教材などについて、子どもがどんな経験や予備知識をもっているのか、それをどう見ているのかなど、いろいろな側面から子どもの実態を把握します。この「子ども理解」と並行して行うのが「教材分析」です。そのはじめの一歩が、主たる教材である教科書の分析です。また、教科書分析をさらに一歩踏みこんで行うために教師用指導書研究編を活用します。教科書に掲載された教材に付随した詳しい説明や参考資料など指導に役だつ様々な情報をチェックしたうえで授業づくりに臨むのです。

三つ目は、「単元の構想図を、教師が自ら作成する」ことです。「単元の構想図」とは、子どもの問題解決のストーリーを記述したものです。特に決まった書式はありません。教材との出会い、そこから生まれる驚きや素朴な問い、その問いを解き明かす過程で芽生えた問題意識、それを受けて教師が提示する教材と子どもから期待する反応、例えば一歩深まった問いや新たな問題意識などを、教師が自分流の方法で構造的に書き示します。これが「単元の構想図」です。

その作成を通して、子どもの意識や思考の流れが途切れず連続的に深まる問題解決の流れとなっているか、単元の学習を通して子どもに学び取らせたい学習内容がおさえられ、育てたい資質・能力を身につけていくことができるのかを教師が事前に吟味しておくのです。

國學院大學 教授 安野 功

Q

子どもが自分たちで活発に意見を出し合い、考えを深め合っていく授業をするためには、どのようにすればよいですか。

2019.05.29 / 学習指導要領、授業づくり
回答者:國學院大學 教授 安野 功

A

子どもが自分たちで活発に意見を出し合い、考えを深め合っていくためのポイントは三つあります。

一つ目が「魅力あふれる教材」、二つ目が「子どもが主役となる学習活動」、三つ目が「子どもと教材、子どもと子どもをつなぐ教師の適切な働きかけ」です。

これら三つは密接に関連しています。インパクトのある教材との出会いで素朴な問いが芽生え、子どもたちはそれを解き明かそうと何度も教材に向かい、事実認識を積み重ねます。そのプロセスを経て、深まった疑問、すなわち「みんなの問題(学習問題)」が生まれ、その追究活動へと学びが深化していきます。

そうした子ども主体の問題解決を支えていくのが資料提示や活動の指示、思考をゆさぶり、より深い思考(吟味)を促す発問など、教師の適切な働きかけです。

それでは、問題解決の流れのなかで、どのような指示、発問を行っていけばよいのでしょうか。そのポイントは三つあります。

一つ目は、指示と発問の違い、基本的な発問の類型など、発問の基礎・基本を教師が正しく理解することです。

指示は、子どもたちの活動を促すときに出します。「写真を見て、『おや?』と思ったことをノートにメモしなさい」「2枚の写真を見比べ、変わっているところは赤丸、同じところは青丸をつけましょう」などが、その一例です。

いっぽう、発問は疑問符を伴う教師から子どもへの問いかけです。発問には大別して五つの類型があります。「どのように」「どのような」などの様子や有り様を問う発問。「なぜ」「どうして」などの意図や理由、背景などを問う発問。「何か」などの物事の本質を問う発問。「どうすればいいか」などの解決策を問う発問。「どっちか」「どれがいいか」などの選択・判断を問う発問。これら五つが、その類型です。

二つ目は、子どもの問題意識や思考の流れに応じて、前述した五つの発問を、教師が適切に使い分けることです。社会的事象の「目に見える事実」をとらえる際は、「どのように」などの発問、それら事実の背後にある「意図や理由、背景など」を推理させる際は、「なぜ」などの発問…といった具合です。

三つ目は、子どもたちが立ち止まって考える発問を行い、「思考の山場」をつくることです。その一例が、「でも…ですね。~のはずなのに~をしています。それはいったい、なぜ?」「Aさん、Bさんの考えを比べてみてください。どちらとも言えそうですが、本当はどっちかな?」など、子どもたちの考えにゆさぶりをかけたり、吟味を促したりする発問です。

國學院大學 教授 安野 功

Q

工場や消防署などの現場での学びにおいて必要となる観察力を育てるには、どのように指導すればよいですか。

2019.05.29 / 授業づくり
回答者:國學院大學 教授 安野 功

A

観察力を育てる指導のポイントは三つあります。

一つ目は、事前の指導を工夫して、どんな目的で、どこに着目し、何を観察したり、見学したりするのかを明らかにすることです。

この観察や見学の目的、視点や着眼点などにかかわる指導では、観察や見学が子どもの問題解決の流れに位置づくよう、学習問題を把握し、追究の見通しを立てる指導を工夫します。農家や工場、消防署などの現場で働く人たちの仕事場や仕事ぶりを自分で見て確かめる活動を行わなければ解決できない問いを引き出し、現場での着眼点や実際に見て確かめたいことをノートにメモし、話し合うなどの活動を通して、観察や見学の計画書を作成するのです。

二つ目は、現場でのきめ細かな指導・支援を通して、子どもたちが観察や見学の計画に基づき、各自で学習問題を追究できるようにすることです。

例えば、現場に到着したら、必ず計画書に目を通す時間を取り、目的や着眼点、観察や見学の仕方、メモの取り方、教師へのSOSサインの出し方などを確認します。観察や見学の活動に入ったら、クラス全体の活動状況に目を配りつつ、個々の子どもにきめ細かく関わり、必要に応じて具体的にアドバイスしていきます。この現場での教師の指導が観察力を育てる鍵を握っています。

三つ目は、事後の指導を工夫して、観察や見学で見つけた事実やそれを基に考えたことを言葉で言い表したり、絵図や文章などにまとめたりすることです。

ここでは、観察や見学が正確に行われていたかどうかを子ども自身で確認できるようにするために、実物や教師が現場で撮影しておいた写真などを準備しておき、子どもの発言を裏づける際に提示したり、現場で働く人たちの生の声を映像で伝えたりするなど、子どもの主体的な学びを支える教師の指導が効果的です。

さらに、観察や見学の視点や着眼点、問題追究の過程などを振り返る活動を行い、観察や見学などを実際に行うなかで体験的に身につけた学び方をその後の学習において活用できるようにすることも大切です。

國學院大學 教授 安野 功

Q

子どもの聞く力・話す力をアップするためには、どのように指導すればよいですか。

2019.05.29 / 学習指導要領
回答者:國學院大學 教授 安野 功

A

■社会科で育てる聞く力・話す力

新しい学習指導要領では、聞く力・話す力に関わる資質・能力として「表現力」を掲げ、次のように解説しています。「小学校社会科で養う『表現力』とは,考えたことや選択・判断したことを説明する力や,考えたことや選択・判断したことを基に議論する力などである」(『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説社会編』23頁)

つまり、社会科では「説明する力」と「議論する力」を育てることが求められているのです。

■聞く力・話す力を育てる指導のポイント

聞く力・話す力を両輪とした「対話力」を育てる。それが社会科の役割であると私は考えています。

社会科で養う「聞く力」とは「聴き取る力」、すなわち、相手の説明の根拠や主張に対して「納得できること」と「腑に落ちないこと」を聴き分けるという思考を伴う頭脳の行為です。そのポイントは、次の通りです。

①相手の話に耳を傾ける⇒②相手が言わんとすること(主張や結論)を聴き取る⇒③主張や結論のおおもとにある事実(根拠)を聴き分ける⇒④解釈や説明の道筋(論理)を聴き取る⇒⑤得がいかない、腑に落ちない点があれば、それを相手に伝え、質問する。⑥相手の意見を批判的に受け止め、不十分な点や修正すべき点を相手に提案する。

社会科で養う「話す力」とは「伝える力」、すなわち、聴き手を意識して、自分が伝えたいことを相手に確実に伝える行為です。そのポイントは次の通りです。

①何を話すのか(話題)を伝え、聞き手を惹きつける。⇒②自分が言わんとすること(主張や結論)を簡潔に伝える⇒③主張や結論のおおもとにある事実(根拠)を示しながら、説明を加える。

これらを参考にして、子どもの発達の段階や現状を考慮し、例えば、次のような手立てを用いて、日々の社会科授業のなかで粘り強く指導・支援していくことが大切です。

“相手を意識して話す・聞く”

対話的な学びの目指すゴールは、子どもと子どもの対話です。それを実現するには、教師に向かって発言するのではなく、子どもが子どもに向かって発言するという指導をつねに心がけることが大切です。

“事実(根拠)に基づいて話す・聞く”

社会科に求められている「説明」や「議論」では、どんな事実(根拠)に基づいているのかが常に問われます。そのことを踏まえ、例示のように、「事実(根拠)に基づいて話す・聞く」を徹底し、習慣化を図ることが大切です。

「教科書● ページの資料補◆◆を見てください」「はい」「■■となっていますね。そのことから、私は~だと考えました。みなさん、どうですか」「Aさんに対して違う考えがあります。同じ資料の◇◇を見てください。□□となっていますよね。そのことから、私は…」

“つなぎ言葉を補い、子ども同士の対話を支援する”

子どもから子どもへの発言を促し、話す・聞く活動を円滑に進めていくには、教師がつなぎ言葉をうまく挿入し、対話が途切れないようにしていくことが大切です。

「たとえば」(抽象的な言い方を具体化する)、「そのわけは」(事象の意味を問う)、「つまり」や「まとめると」(複数の意見を簡潔にまとめる)などがその一例です。その他に、「だれか、A(の考え)につなげて」や「Bに対する意見はあるかな」など「つなげて」や「対して」などがあります。

“切り返しの発問で、深く考える場をつくる”

「でも、ですねー」と言って発言を止め、「逆の立場で考えるとどうなるの」「黒板をよく見て。AとBの考え、本当はどっちなの」など、一面的な思考の流れを止めたり、並列しない考えに気づかせたりします。この切り返しの発問により、子どもが立ち止まって深く考える授業の山場をつくるのです。

國學院大學 教授 安野 功

Q

新学習指導要領に対応した社会科地域副読本の改訂をしなければならないのですが、どのように進めていけばよいのでしょうか。

2019.02.19 / 学習指導要領
回答者:國學院大學 教授 安野 功

A

まず、必要なことは、新学習指導要領の改訂の趣旨やポイントを踏まえ、副読本改訂の基本方針を決定することです。第3学年、第4学年の社会科では、どんなねらいで、どんな内容、方法で授業を展開するのが望ましいか、学習指導要領の目標・内容を分析し、検討し合うことが大切です。短い期間の改訂作業となりますが、副読本の性格やその後の活用の仕方を方向づける重要なプロセスです。

それと同時に、第3学年、第4学年それぞれの単元構成と配当時数を検討し、一覧表を作成することが急務です。特に第3学年では、これまでは三つの内容を扱っていましたが、新学習指導要領ではこれまでと同じ70時間で四つの内容を扱うことになります。そのため、時数を縮減して指導することが新たに求められています。

次に必要となるのは、取り上げる事例や事例地域を洗い出し、その中から最適なものを選定することです。特に注意が必要なのは第4学年の事例選びです。これまでと同様に子どもにとって魅力的か、見学などの体験的な活動が可能か等の視点に加えて、“自分の県に対する理解を深める上で適切か”ということにも留意し、広く県全体を見渡して最適な事例を選定する必要があります。

それらをもとに、単元の指導計画と紙面構成のラフスケッチを作成し、分担・協力して各ページの執筆を進めていきます。

國學院大學 教授 安野 功

※詳しくは、日文Webサイトに掲載している「小学校社会科3・4年生用 副読本作成の手引〔新訂版〕」をご覧ください。

Q

新学習指導要領では、「社会に見られる課題を把握して、その解決に向けて社会への関わり方を選択・判断する力」の育成が新たに取り上げられましたが、社会科の限りある時間数の中でどのように指導したらよいのでしょうか。

2019.02.19 / 学習指導要領、授業づくり
回答者:國學院大學 教授 安野 功

A

新学習指導要領では、内容の取扱いや目標の解説において、どの学年のどの内容において、どのような学習を行い、どんな力を育てるのかを明示しています。

つまり、「社会に見られる課題を把握して、その解決に向けて社会への関わり方を選択・判断する力」を育てる学習については、全学年のすべての内容で行うのではなく、学年の目標と関連付けて、指導の効果が期待できる内容(単元)で行うこととしています。

以下、その内容の取扱いを洗い出し、整理して示しました。

〈第3学年〉

○内容(3)「地域の安全を守る働き」

  • *地域や自分自身の安全を守るために自分たちにできることなどを考えたり選択・判断したりできるよう配慮する

○内容(4)「市の様子の移り変わり」

  • *「人口」を取り上げる際には、少子高齢化、国際化などに触れ、これからの市の発展について考えることができるよう配慮する

〈第4学年〉

○内容(2)「人々の健康や生活環境を支える事業」

  • *節水や節電など自分たちにできることを考えたり選択・判断したりできるよう配慮する
  • *ごみの減量や水を汚さない工夫など、自分たちにできることを考えたり選択・判断したりできるよう配慮する

○内容(3)「自然災害から人々を守る活動」

  • *地域で起こり得る災害を想定し、日頃から必要な備えをするなど、自分たちにできることなどを考えたり選択・判断したりできるよう配慮する

○内容(4)「県内の伝統や文化」

  • *地域の伝統や文化の保存や継承に関わって、自分たちにできることなどを考えたり選択・判断したりできるよう配慮する

〈第5学年〉

○内容(2)「我が国の農業や水産業における食料生産」

  • *消費者や生産者の立場などから多角的に考えて、これからの農業などの発展について、自分の考えをまとめることができるよう配慮する

○内容(3)「我が国の工業生産」

  • *消費者や生産者の立場などから多角的に考えて、これからの工業の発展について、自分の考えをまとめることができるよう配慮する

○内容(4)「我が国の産業と情報との関わり」

  • *産業と国民の立場から多角的に考えて、情報化の進展に伴う産業の発展や国民生活の向上について、自分の考えをまとめることができるよう配慮する

○内容(5)「我が国の国土の自然環境と国民生活との関連」

  • *国土の環境保全について、自分たちにできることなどを考えたり選択・判断したりできるよう配慮する

〈第6学年〉

○内容(1)「我が国の政治の働き」

  • *国民としての政治への関わり方について多角的に考えて、自分の考えをまとめることができるよう配慮する

○内容(3)「グローバル化する世界と日本の役割」

  • *世界の人々と共に生きていくために大切なことや、今後、我が国が国際社会において果たすべき役割などを多角的に考えたり選択・判断したりできるよう配慮する

國學院大學 教授 安野 功

Q

新学習指導要領では、3年生から地図帳を活用するとありますが、地図帳をどのように活用すればよいのでしょうか。

2019.02.19 / 学習指導要領、授業づくり
回答者:國學院大學 教授 安野 功

A

新学習指導要領によるこれからの社会科において、これまで4年生で配付されていた地図帳が3年生で配付されることになりました。

その趣旨は、地図帳が、社会的事象の見方・考え方の1つである「空間的な見方・考え方」を育てる必須のアイテムであり教材だからです。

空間的な見方・考え方を育てる初めの一歩は、第3学年の内容(1)「身近な地域や市の様子」の学習です。

ここでは、身近な地域や市という子どもたちの生活舞台が、学習の対象です。その様子について、県内における市の位置、地形や土地利用、交通の広がり、市役所など主な公共施設の場所と働き、古くから残る建造物の分布などに着目し、観察・調査したり地図などの資料で調べたりして、絵地図や白地図などにまとめていきます。それを基にして特徴のある場所を相互に比較し、違いを見つけ出す。そして、なぜ場所による違いが見られるのかを交通などの社会的条件や土地の高低、川辺や海辺などの地形条件と関連付けて考え、身近な地域や市の様子を大まかに理解するとともに、場所の様子を捉える目(着眼点)を育てていきます。

そうした学習にこそ、地図帳の出番があります。

例えば、身近な地域を観察・調査したことを絵地図、そして白地図に表す際、方位や地図記号の有用性に気づかせていきます。また、市の位置を調べる際、県全体のどのあたりにあるのか、周りにはどんな市があるのか、その市との位置関係は・・・、などの問いを解き明かします。この時に、地図帳が手持ちの資料として出番を迎えます。

地図帳の出番は、第3学年の内容(1)だけではありません。内容(2)では、販売における商品を通して他地域や外国との結び付きを捉えていきます。ここでも地図帳がその威力を発揮します。

このように、地図帳は、第3学年の学習においても欠かすことのできないアイテムであり、資料となります。だからこそ、この度の改訂で地図帳が3年生から配付されることになったのです。

國學院大學 教授 安野 功

Q

新学習指導要領で新しく示された内容や大きく変わった内容の授業づくりはどのように行えばよいのでしょうか。

2019.02.19 / 学習指導要領、授業づくり
回答者:國學院大學 教授 安野 功

A

新しく示された内容や大きく変わった内容については、改善のポイントをヒントに新しい授業の姿をイメージし、素材の発掘や教材化に着手します。

◆「市の様子の移り変わり」

〈第3学年内容(4)〉

■改善のポイント

“生活の道具の移り変わりに伴う人々のくらしの変化”から“市の様子の移り変わりとそれに伴う人々のくらしの変化”を追究する授業へとねらいや学習活動の方向転換が図られた。

■新しい授業のイメージ

  • ○まず、今と昔の同じ場所の写真を見比べる。「今と昔ではこんなに違うの!?」という驚きから素朴な問いを引き出す。
  • ○その解決に向け、当時のまちの様々な写真や地図などを読み取る。
  • ○そこで捉えた交通、土地利用、公共施設、生活の道具、市の人口などの今との違いに着目させ、「どのようにして、今の市やくらしへと変わってきたのだろう?」という問題意識を高めていく。
  • ○市の様子や人々のくらしが大きく変わる「節目の時期」に気づく資料を提示し、「市の様子や人々のくらしが、いつごろ、どのように大きく変化したのだろう」という追究の見通しをもたせる。
  • ○「節目の時期」の前後の市の様子や人々のくらしを、交通、土地利用、公共施設、生活の道具、市の人口などに着目して調べ、年表に整理する。調べる際には、市の博物館や資料館の関係者や地域の人からの聞き取りや資料収集を行う。
  • ○まとめた年表と調べた事実を関連付け、市の様子の移り変わりとそれに伴うくらしの変化を考えたり、市が直面する問題や将来の発展について考え討論したりする。

■授業づくりのポイント

事前の教材研究で、交通、土地利用、公共施設、生活の道具、市の人口の時期による違いを年表に整理し、変化の節目となる時期を見つけ出す。

◆「自然災害から人々を守る活動」

〈第4学年(3)〉

■改善のポイント

自然災害から県民や市民の安全を守る県庁や市役所などの関係機関の働きと地域の人々との協力関係を学ぶ内容として、新設された。

■新しい授業のイメージ

  • ○自然災害に関する身近な話題(ニュースや地域の施設、過去の自然災害による被害の写真)から、過去に発生した県内の自然災害に目を向ける。
  • ○自然災害に関する年表や被害を被った地域が読み取れる地図、被害状況に関する資料などに基づいて、過去に発生した県の被害状況を調べる。
  • ○被害を最小限に食い止める県庁や市役所などの関係機関の取組と地域の人々の協力などを調べ、それらの働きを考え話し合う。
  • ○学び取ったことを活用し、地域で起こり得る災害を想定し、日頃の備えなど、自分たちにできることを考えたり選択・判断したりする。

■授業づくりの着眼点

事前の教材研究で、過去に発生した自然災害とその対策、それと関連した県庁や市役所などの関係機関と地域の人々の活動を調べ、教材化する。

◆「我が国の産業と情報との関わり」

〈第5学年内容(3)〉

■改善のポイント

情報に関する内容のうち、「情報ネットワークの公共利用」の部分が「産業における情報活用」へと大きく改められた。

■新しい授業のイメージ

  • ○日常の生活で「どんな情報をどのように入手し、どう活用しているか」を話し合い、日頃の情報活用と日々の生活との関連に目を向ける。
  • ○既習の食料生産や工業生産における情報活用や今話題となっている情報活用(AIやポスシステム)などについて話し合い、産業における情報活用に対する問題意識を高める。
  • ○情報活用により発展している産業と出合わせ、「どんな情報をどのように入手し、どのように活用しているのか」という問いを引き出し、産業における情報活用の現状や国民生活とのかかわりを調べる。
  • ○調べた事実に基づいて、「情報を生かして発展する産業が、国民の生活にどのような変化をもたらしたか」を話し合い、情報を生かして発展する産業が国民生活果たす役割を考える。
  • ○学び取ったことを活用し、情報化の進展に伴う産業の発展を国民生活の向上と関連付け、自分の考えをまとめる。

■授業づくりの着眼点

事前の教材研究で、情報や情報技術を活用して発展している販売、運輸、観光、医療、福祉などに関わる産業が「どんな情報をどのように集め、どのように活用しているのか」を具体的に調べ、教材化する。

國學院大學 教授 安野 功

Q

新学習指導要領では、小学校から中学校への接続・発展を図るために、どのような改善が加えられているのでしょうか。

2019.02.19 / 学習指導要領
回答者:國學院大學 教授 安野 功

A

この度の改訂では、その基本方針として、新しい時代に求められる資質・能力を育む「社会に開かれた教育課程」の実現を掲げています。これを受け、教育課程の横軸(各教科等の横の関係)と縦軸(小学校・中学校・高等学校の縦の関係)について、「何ができるようになるか」(育成を目指す資質・能力)、「何を学ぶか」(教科等を学ぶ意義と、教科等間・学校段階間のつながりを踏まえた教育課程の編成)、「どのように学ぶか」(指導計画の作成と実施、学習・指導の改善・充実)などの面から、その枠組みを改善することを掲げています。この改善の基本方針に則り、「資質・能力」「見方・考え方」「学習内容」の3点について、小学校から中学校への接続・発展が図られました。

まず、「資質・能力」については、新学習指導要領では、小学校・中学校から高等学校への縦の接続・発展を考慮し、社会科、地理歴史科、公民科での学びを通して育成する資質・能力を「公民としての資質・能力」としています。

公民としての資質・能力とは、選挙権を有する18歳に求められる「広い視野に立ち、グローバル化する国際社会を主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な資質・能力」であるとされています。

小・中学校社会科では、それぞれがその基礎を育成するという点では共通しています。

次に「見方・考え方」については、新学習指導要領では、小・中学校ともに「社会的な見方・考え方を働かせ、課題(小学校では学習の問題)を追究したり解決したりする活動を通して、公民としての資質・能力の基礎を育てる」ことを求めています。

つまり、公民としての資質・能力を育成するには、「課題(問題)を追究・解決する活動」を通す(必ず行う)こと、その際、「社会的な見方・考え方」を働かせることが教科の目標に明示されたのです。

「課題(問題)を追究・解決する活動」について、小学校ではこれまでも、中学校では次第にその必要性が意識され、授業実践として定着してきています。この現場での優れた実践の成果が教科の目標に反映されたものといえます。

最後に「学習内容」については、新学習指導要領では、小・中学校社会科の内容を次の3つの枠組みに位置付け、小学校から中学校への接続・発展が分かりやすくなるように整理しています。

①地理的環境と人々の生活

②歴史と人々の生活

③現代社会の仕組みや働きと人々の生活

小学校社会科では、社会的事象を総合的に捉えるという内容構成の原理が採られてきました。この総合社会科という小学校社会科の性格は、この度の改訂でも堅持されています。しかし、指導している内容が、小・中学校全体からみて、どのような位置づけにあるのかが意識しづらいという指摘もあり、この度の改訂では上記のような3つの枠組みによる整理が行われたのです。

國學院大學 教授 安野 功

Q

新小学校学習指導要領では、問題解決的な学習の充実を図ることが求められていますが、これまでの問題解決的な学習との違いはあるのでしょうか。

2018.11.26 / 学習指導要領
回答者:國學院大學 教授 安野 功

A

これまでの問題解決的な学習は、社会生活の理解を柱に展開されてきましたが、新小学校学習指導要領のもとでは、「資質・能力」の育成をめざして展開する必要があります。

これまでの問題解決的な学習では、例えば、「たくさんの種類や量のごみは、どのように始末されるのだろう。なぜ、種類ごとに分けて出すのかな。」のように、現状の様子や仕組み、人々の働きとその意味を追究する「疑問符」が主となっていましたが、「資質・能力」の育成をめざすこれからの問題解決的な学習では、これまでの社会生活の現状をとらえ、その意味を理解することに加え、その学びを実社会、実生活に生かすもう一つの問題解決が求められています。なぜならば、「社会に見られる課題を把握して、その解決に向けて社会への関わり方を選択・判断する力」を育成したり「よりよい社会を考え学習したことを社会生活に生かそうとする態度」を養ったりする必要があるからです。

そのことを踏まえ、これからの授業づくりにおいては、「1単元1学習問題」という問題解決のサイクルにとらわれることなく、例えば一つの単元で二つの学習問題を設定するなど、“柔軟な問題解決学習”を工夫することが大切です。

その際、子どもたちの“素朴な問い”や“実社会に結び付く切実な問い”など、子どもが自分ごととして本気で追究したくなるような、“本気の学び”を大事にしていく必要があります。そうすることで、今求められている「主体的な学び」を保証することが可能となります。

國學院大學 教授 安野 功

Q

新小学校学習指導要領では、「社会的事象の見方・考え方」を働かせて、学習問題を追究・解決することが強く求められていますが、この「社会的事象の見方・考え方」を働かせるとは、具体的にどのような学習活動なのでしょうか。

2018.11.26 / 学習指導要領
回答者:國學院大學 教授 安野 功

A

それは、「①位置や空間的な広がり、②時期や時間の経過、③事象や人々の相互関係などに着目して調べ、事実(情報)をとらえる」ことや、それらを「比較・分類したり総合したり、地域の人々や国民の生活と関連付けたりする」ものです。

具体例を挙げると、以下のようになります。

○「①位置や空間的な広がり、②時期や時間の経過、③事象や人々の相互関係などに着目して調べ、事実(情報)をとらえる」とは…
①「位置や空間的な広がりに着目する」
*例えば、「どのような場所にあるのか」「どこに、どのように広がっているのか」など、分布、地域、範囲などに着目する問いを引き出す。
②「時期や時間の経過に着目する」
*例えば、「いつから、なぜ始まったのか」「どう変わってきたのか」「どのように受け継がれてきたのか」など、起こりや成り立ち、変化、継承などに着目する問いを引き出す。
③「事象や人々の相互関係などに着目する」
*例えば、「どのようなつながりがあるのか」「なぜこのような協力が必要か」など、工夫、関わり、協力などに着目する問いを引き出す。
→ ①②③により、「視点を明確にして、社会的事象を調べるように導く」ことである。

○「比較・分類したり総合したり、地域の人々や国民の生活と関連付けたりする」とは…
①②③のいずれか、またはそのすべてを通して、学習問題の追究・解決に必要な事実(情報)をとらえ、「どのような違いや共通点があるか」などと比較・分類したり、「まとめるとどのようなことが言えるか」などと総合したり、「どのような役割を果たしているか」などと地域の人々や国民の生活と関連付けたりする方法で考えたり選択・判断したりすることです。

國學院大學 教授 安野 功

Q

「主体的・対話的で深い学び」へと子どもたちを導くには、どのようにすればよいのでしょうか。

2018.11.26 / 学習指導要領、授業づくり
回答者:國學院大學 教授 安野 功

A

社会科において「主体的・対話的な学び」を実現するためには、事実に基づき、「わたしの考え」をつくり、伝え、聞き合う学習を日常化することが大切です。

子どもの意見が教室中を飛び交い、教師はその聞き役や交通整理に回る。これが、主体的・対話的な学びで求める社会科授業の理想の姿です。

そうした授業が展開されている学級には、授業の進め方にいくつかの共通点が見られます。

その一つが、「自分発→みんな経由→自分行き」の学びを授業づくりの原則としていることです。

「自分発」とは、まず、個々の子どもに自分の考えをもつ学習場面を保証することです。別の言い方をすると、事実に基づく「わたしの考え」をもつ学習場面を大切にするということです。

「みんな経由」とは、ペアやグループ、学級全体での話し合いなどを織り交ぜて、“事実に基づく「わたしの考え」の交流”を指すのですが、その場面での教師の出方に、次のような配慮がなされています。

すなわち、調べた事実を交流し合う場面では、クラス全員の子どもが事実を正確に読み取り、知識(情報)を共有できるよう、きめ細かく丹念に指導に当たっています。その一方で、考えを交流し合う場面では、個々の子どもの言葉一つひとつに耳を傾け、子どもの発言の微妙なニュアンスの違いを大事にしています。言い換えると、教師の解釈を加えながら教師の都合のよい方向に話し合いを誘導したり発言をまとめたりすることは、絶対におこないません。

「自分行き」とは、授業の終末段階で、本時のまとめを必ずノートに自分の言葉で書く場面を設けることです。

このことは、調べた事実やそれに基づく考えを板書で整理して示したり、それをみんなで振り返ったりすることを否定するものではありません。そうしたみんなとの学びを大切にしたうえで、最後に、その学びを主体的に受け止め、自分の言葉で自分の考えをまとめる場面を保証していくものです。

次に、社会科において「深い学び」を実現するためには、社会的事象の見方・考え方を働かせ、社会的事象の特色や意味など社会の中で使うことのできる応用性や汎用性のある概念などに関する知識を獲得できるよう、問題解決的な学習を展開することが大切です。

さらには、自らの学びを振り返り、学んだことの意味を問い直したり新たな問いを見出したりして、学習したことを実生活・実社会に活用できるようにすることも大切です。

國學院大學 教授 安野 功

Q

振り返り活動がうまくできません。どのように指導すればよいのでしょうか。

2018.11.26 / 授業づくり
回答者:日本文教出版 編集部

A

振り返り活動は、学習を通して気づいたこと、追究したことの喜びや自分の考えの変容など、学習成果を確かめ深める場です。

社会科の学習で大切なことの一つは、学習問題の追究を通して事実が明らかになり、その事実を通して自分の考えがゆさぶられ、その結果として、児童のもつ社会認識の変容を期待することにあると思います。そして、いま一つは、「社会に見られる課題を把握して、その解決に向けて社会への関わり方を選択・判断する力」を育てることだと考えます。学習したことをもとに、調べたこと、自分で考えたこと、みんなで話し合ったことなどを表現する時間が、振り返りの活動の時間です。

「振り返り」における児童の表現は、決して同じではありません。例えば、児童の水に対する思いは、児童それぞれに異なります。心を動かされた事実も異なります。そうしたことをみんなで話し合い、相手の考えを共感的に理解し、自らの社会認識を深めていくことが大切なことです。そして、学習の過程を振り返って自己評価をおこなうことも大切です。

「振り返り」の基本は、どんなことを、どのような方法で学習したのかといった問題解決のプロセスと、学習してわかったことや自分やみんなの考えを振り返ることです。

教科書では、①「学習のはじまり、調べる計画、見学や観察、調査、まとめ」の各活動の振り返り、②「学習成果、調べ方、学び方」の振り返り、③「数人の意見の発表、追究したい問題の設定、問題についての話し合い」の振り返りなど、体験的な活動や話し合い活動の振り返りの手順が示されています。

こうした基本的なプロセスをもとにして、体験的な活動や話し合い活動を通した学習の成果などを新聞やまんが、ペープサートなどで表現したり、みんなで考えたい問題をクラスやグループで話し合ったりすることが大切です。

日本文教出版 編集部

Q

現行小学校学習指導要領による小学校社会科の移行措置はどのようにおこなえばよいのでしょうか。

2018.11.26 / 社会科(全般)について、学習指導要領
回答者:日本文教出版 編集部

A

【2018・2019年度の第5学年】

(我が国の国土の様子についての単元)
○日本の位置と範囲を学習する際、「海洋に囲まれた多数の島からなる国土の構成」に着目し、北海道、本州、四国、九州、沖縄島、北方領土などの主な島やその周辺の海洋に加え、6,800 を超える大小多数の島々から成る我が国の国土の構成について指導する。
○「領土の範囲」については、竹島や北方領土、尖閣諸島が我が国固有の領土であることに触れる。

第5学年については、現行版の教科書(『小学社会』5年上)で、大単元「日本の国土と人々のくらし」の8~9ページにおいて日本の領土の範囲を示すとともに、竹島や北方領土、尖閣諸島が我が国固有の領土であることに触れています。現行版教科書をそのままお使いいただくことが可能です。

※展開例は、弊社ホームページに掲載しております。
 (https://www.nichibun-g.co.jp/textbooks/s-shakai/)

【2019年度の第3学年】

○地域の人々が受け継いできた文化財や年中行事(=3・4年上「昔からつたわる行事」)については指導しない。
○地域社会における災害及び事故の防止(=3・4年下「安全なくらしを守る」)について指導する。ただし、災害については「火事」を選択すること。

第3学年については、現行本通りに指導することは困難であり、上記に示した内容を精選し、配当時数の削減をおこなう必要があります。

※年間指導計画案や単元計画例は、弊社ホームページに掲載しております。
 (https://www.nichibun-g.co.jp/data/education/e-other/e-other017/)

日本文教出版 編集部

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