学び!とPBL

1.「フレップ」──学生たちのPBL

 前にも述べたとおり、私がPBLを意識して実践を始めたのはここ数年のことです。けれども、大学ではPBLならぬPBLは10年以上も実践していました。
 「フレンドシップ実習」、後に「自然体験実習」、学生たちの間では「フレップ」という愛称で親しまれていた授業を、1997年から2008年までの12年間、福島大学で担当していました。

図1 セクション会議の様子

 お互いに名前も顔も知らない新入生約80人が実践チームをつくり、夏休みに実施する2泊3日の中高生との交流活動を自分たちで企画し、実践するという授業です。多くの学生たちは「子どもたちとキャンプをして単位がもらえるおいしい授業」といって受講してきましたが、その甘い期待はすぐに裏切られ、たいへんな厳しさを突きつけられることになります。
 学生たちは「リーダー会」「開閉会」「ハイキング」「集団創作活動」「キャンプファイヤー」「文集」のいずれかのセクションに所属し、それぞれに企画をつくります。
 企画を決めるにも話し合いができない、異論が出るとすぐに凹んでしまう、にもかかわらず大学生レベルの企画にしないと通してもらえない。意欲の高い学生とそうでない学生の温度差が、人間関係にひずみをもたらします。やればやるほど混迷の度合いは深まり、ほとんどの学生が一度は「辞めたい」と考えるようになります。

2.もまれながら成長する、居場所をつくる

図2 プラネタリウムの試作

 4月には週1回だった授業が、5月には昼休みの時間を占有するようになり、6月になると夜中まで議論が続くようになり、7月になると土日もなくなり、毎日が「フレップ」を中心に回転するようになります。

図3 ビニールを貼り合わせて巨人をつくる

 7月中旬、ようやく各セクションの企画が固まりだした頃、学生たちは長いトンネルから脱します。この時期になると、学生たちの顔つきも高校生のあどけなさが消え、大学生の顔つきになります。リーダーとしての自覚も強靱になり、一人ひとりの個性が見えてくるようになります。

図4 自然体験学校を終えて 100日間の苦労を吹き飛ばす

 8月上旬に開催する「自然体験学校」の本番は、子どもたちとの時間がまるでジェットコースターのように去って行き、学生たちはとてつもない感動を得て、それぞれの日常に帰っていきます。提出された事後レポートには、これでもかというほど、自分の変化と成長のプロセスが饒舌にしたためられています。
 彼らは大学に入学して3ヶ月で、先輩も含めると約100人の仲間を得ることになり、在学中はもちろん卒業後もネットワークは続きます。100日間に渡る「フレップ」は、コミュニケーション力や協働能力、リーダーシップ、企画・実践力を身に付けさせるに留まらず、様々な課題を抱える学生たちの「居場所」としても機能します。
 12年間続けてきて、ただの一度も安定した路線上で実践したことはなく、毎回毎回新たな問題がもたらされ、スリリングな展開となるのですが、今となってはそうした「問題」こそが学生たちを成長させる要因だということを確信しています。

3.PBLとしての「フレップ」

 さて、ここまで述べると、フレップが熱狂的な「セツルメント」などのサークル活動と変わらないのではないかと思うかも知れません。
 鈴木敏恵氏(2012)(※1)は「プロジェクト」(PBLではない点に留意)を以下のように規定しています。
 ①ヴィジョンや使命感に基づき、ある目的を果たすための構想や計画などを指す。
 ②目標を決め、そこへの到達方法を考え出すもの。
 ③何かを成すこと、夢や願いを成果として目に見えるものにすること。
 ④課題解決をしつつ、ヴィジョンを実現する一連の活動。
 ⑤たった1人で完結するのではなく、チームで目標に向かう。
 「フレップ」は、子どもたちと楽しく学び豊かな交流事業をつくる(ヴィジョン)ために、自分たち(チーム)で議論・企画・実践する一連の活動ですから、プロジェクトとしての条件は満たしていると思います。
 しかしながら、同氏は「プロジェクト学習」は①ヴィジョンとゴールの明確性、②価値の自覚、③プロジェクト学習の基本フェーズの存在、④成果と成長への自己評価、⑤「一人思考」と「思考共有」、⑥他者に役立つ「知の成果物」、⑦ロジカル・シンキング(論理的思考)、⑧Selfコーチングとメタ認知、などの要素を特徴として備えているとしており、これら一つひとつを照らし合わせてみると、この当時の「フレップ」がPBLとしてどうだったのか、反省させられる点が多々あります。

 私がPBLの視点を得たのは、東日本大震災後の取り組みという大きなハードルを越えてからのことでした。

 

※1:鈴木敏恵(2012)『課題解決力と論理的思考力が身につくプロジェクト学習の基本と手法』教育出版