生活&総合navi
(生活・総合)
生活&総合navi
(生活・総合)

い~め~る より
わたしは,ごく普通の小学生だったと思います。その中で印象に残っていることは,夏休みにハワイへ家族旅行をしたことです。わたしにとっては,とても貴重な体験だったと思います。異文化に触れ,言葉の通じない人がいる。そういう国があることを,身をもって知った瞬間でした。わたしの人生における最初の分岐点でした。そのときの旅行で撮った写真を画用紙に貼り,何枚も重ねてノートのようにして夏休みの自由研究の宿題で提出した記憶があります。
その後時が過ぎ,中学生のころ,ふと見ていたテレビで,世界には日本で想像もつかないような貧困や紛争,迫害があることを知り,大きな衝撃を受け,それを解決するような仕事がしたいという夢をもちました。そして大学4年生のときに,1年間アフリカのエリトリアでボランティアをします。その延長でヒューマン・ライツ・ウォッチというNGOを日本に立ち上げたいと思うようになりました。
日々,日本人が何事も当たり前だと思っていることが,世界では当たり前ではないということを感じています。例えば日本だと教育を受ける,学校に行くことは当たり前ですが,学校に行きたくても行けない子どもが世界にはたくさんいるのです。例えば女子なら,10代前半で結婚を余儀なくされる現状があり,家事に追われる毎日で学校に通えず,自分の思うような人生を送るための最初の一歩が踏み出せないでいるのです。
わたしたちは人権のNGOなので,いじめについて考えることが多くあります。性同一性障害や同性愛の子ども,民族的なマイノリティなど,マイノリティのバックグラウンドがあるといじめのターゲットにされやすいのです。いじめから子どもを守れるのはやはり,学校の先生ではないでしょうか。なぜなら,わたしたちと同じように人権を守る最前線にいる大人だからです。子どもの能力を広げてあげたり,あるいは困っている子どもがいたらSOSをキャッチしたりできるのも,家庭や地域,そして最も身近な存在である先生です。本当に貴重な仕事だと思っています。

土井香苗
1975年,神奈川県生まれ。
NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表,弁護士。
1996年,司法試験に合格後,大学4年生のとき,NGOピースボートのボランティアとして,1年間,エリトリア法務省で法律づくりに携わる。
2000年から弁護士。業務の傍ら,日本にいる難民の法的支援や難民認定法改正のキャンペーンにかかわる。
2008年9月から日本代表。
これまでに,テレビ朝日「サンデーフロントライン」のニュース選定委員やCS朝日ニュースター「ニュースの深層」のキャスターを務める。
2010年,エイボン女性賞受賞。2011年,世界経済フォーラムのYoung Global Leader。
ARコンテンツ ※ARについて
■表2「い~め~る 土井香苗さん」
■P.26「ご当地料理紹介 浜松餃子」
■P.27「わが町オススメ行事 せたがやボロ市」