小学校 図画工作
小学校 図画工作

1.題材名
「えのぐLABO」
2.目標
絵の具でいろいろな表し方を試しながらつくった紙を組み合わせて「研究レポート」をつくる。
様々な用具を使ったり,色を混ぜたりしながら,形や色の感じを捉えるとともに,試しながら表し方を工夫する。
思いのままに試しながらいろいろな絵の具での表し方を思い付くとともに,できた形や色の組み合わせに名前を付けたり,並べたりすることを考える。また,作品のよさや面白さを感じ取る。
絵の具で表し方をいろいろ試すことを楽しみながら,主体的に考えたことをつくりだし,他者との違いを認め,よさや面白さに気付く。
3.題材設定の理由
本校では,3年生から図画工作室で学習する。その最初の題材が「えのぐLABO」である。「やりたいことを見付ける」「試行錯誤・課題解決」「自分のしたことを振り返る」という,図画工作科での学び方を体感してほしいと考えた。
題材においては,試行錯誤することにポジティブな印象をもってもらうために,研究というキーワードを使った。画用紙の形は4種類を用意し,「長い紙ではローラーや筆の線がのびのびと走る」「真四角の紙にはぐるぐる」「小さい紙には細かい点」というように,紙の形からもやりたいことが広がるようにした。また,つくった紙に「研究結果」として名前を付ける時間を設け,子どもたちが自分で見付けた表現方法を振り返ることができるようにした。いつか他の題材で,「あの時の技,そうだ“夕日まんじゅう”をやろう」と知識や技能を活用できるようになることを願っている。
指導にあたっては,教師は必要最低限の用具の使い方を教え,子どもが表し方を組み合わせたり自分で技を編み出したりして,自分なりの技能を獲得することを大切にした。
4.準備(材料・用具)
画用紙(25×25,14×38,25×38,15×40cm),絵の具,歯ブラシ,網,ローラー,ビー玉,片面波段ボール,発泡スチロールなど
5.資質・能力を育成するための指導の手立て
- 子どもたちが試しながら表し方を工夫できるように,筆の使い方(太い/細い,点/線/面,水加減),混色(パレットの上で/紙の上で),その他の用具(モダンテクニックなど)について,導入で簡潔に説明する。
- 知識や技能の習得につながるように,子どもたちが自由な発想で表す瞬間や用具を工夫して使っている瞬間を教師がICT機器を活用して写真に収め,まとめの時間に全体にフィードバックする。
- つくった色紙に名前を付ける時間をもつことで,形や色の感じを捉えることができるようにする。
- つくった色紙に名前を付ける時間をもつことで,自分の編み出した技(かき方の工夫)を振り返り,その子固有の技能として価値付けることができるようにする。
- 自分なりの表現を見付けられるように,筆やローラー,スポンジなど様々な用具を組み合わせることを促す。
- 形が異なる画用紙を用意し,子どもたちがより様々な表現方法を思い付けるようにする。
- 混色することのよさを示すことで,より一人一人の表現に違いを生み出せるようにする。
- 子どもたち同士が対話できる場,友だちの活動が目に入るような場を設定し,発想を広げることができるようにする。
- 「研究」というキーワードを導入で伝えることで,試しながら発想していくことを促す。
- 自分の研究レポートのよいところや工夫したところなどをワークシートに書かせ,作品の隣に置いておくことで,鑑賞の時間に友だちの作品の意図を理解しながら共感・賞賛し合えるようにする。
- つくった色紙に名前を付ける時間をもつことで,形や色からイメージを広げられるようにする。
- 初めて出合う用具を用意したり,自分自身の表現に没頭できる主題を設定したりし,主体的に学ぶことができるようにする。
- 用具や材料,画用紙の形など,選択肢を増やすことで,主体的に学ぶことができるようにする。
6.指導計画(全6時間)
めあて:「絵の具でどんなかき方ができるかな? 研究しようぜ」
活動:様々な形の画用紙に,絵の具セットを使ってどんなことができるか試す。
めあて:「いろいろな用具を使って自分だけのかき方を研究しようぜ」
活動:ローラー,ビー玉など様々な用具を使って自分だけの表現をつくりだす。
めあて:「研究結果をまとめようぜ」
「みんなの研究レポートを見ていいところを見付けようぜ」
活動:できた色紙の気に入っている部分に名前を付けて,支持体に貼る。その後自他の作品を鑑賞し,いいところを感じ取る。
7.指導のポイント
ドライヤーで乾かしてから色を重ねる方法を教えると,ドライヤーを待つ列ができる。その列では,「これ見て!」「どうやってやったの?」など,作品を見せ合う会話が生まれる。スポンジや片面波段ボール,ローラーなどの用具は教室に点在させ,子どもたちがそれらの用具を取りに行くとき,友だちの活動が目に入るようにしている。自然な対話と,自然な自己決定を実現する図画工作室を目指した。
「研究する」というキーワードで,子どもたちの活動の方向を明確にした。
「研究ってのはね,知っていること・使えるものを使って,試したり,見つめたり,友だちのやり方からひらめいたりして,よい・面白い・すてきな自分のやり方を見付けることだよ。」
こう投げかけることで,子どもたちは「試して失敗してやり直して」ということに意義をもてたのだと思う。その瞬間は失敗したと思った色紙が,次の時間には美しく見えることもある。試行錯誤を「研究」というきらびやかな行動に置き換えることで子どもの意欲を引き出した。
橋田先生の「えのぐLABO」は,forme No.316「学びのフロンティア」に掲載されています。こちらからご覧ください。
https://www.nichibun-g.co.jp/data/education/forme/forme316/