教育情報

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年度当初に行いたい生徒指導点検
2014.04.10
教育情報 <日文の教育情報 No.134>
年度当初に行いたい生徒指導点検
東京女子体育大学名誉教授 言語教育文化研究所代表理事 尾木 和英

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■指導点検の基本

 いま、自校の生徒指導における課題は何か。改善が必要なのはどこか。指導点検に関しては、次のことを中心にまずこの確認を大切にしたい。
 ①学校全体の生徒指導の目標・重点が明確になり、全教職員に共有されているかどうか。
 ②指導組織における各担当の役割と、連携・協力して取り組むべき内容。
 ③仮に緊急対応を必要とする事態が発生したような場合、迅速かつ適正に対応できる体制が整えられている
かどうか。
 ④家庭、地域、関係機関等との連携をどう生かし、校内体制のどこにどう位置づけるか。
 最近起こっている子どもの深刻な問題行動には、学校、家庭、地域の対応のあり方や、子どもの成長過程で形成された意識など、様々な要因が内在する。
 困難な問題のほとんどは、個々の教師の力だけでは解決が難しい。効果的な指導・対応には、全教師の共通理解、各担当の連携が欠かせない。さらに、内容に応じて家庭、地域、関係機関等、あるいはスクールカウンセラーなどの専門家との密接な連携の下で対応体制をつくることが重要になる。そうした全校指導体制が整っているかどうかを点検したい。

■子ども理解に基づく指導の点検

 ①実態調査、面談等を通じて、子どもの抱える課題、個々の子どもの悩みや不安を把握する。
 ②把握された子どもの状況に基づき、生徒指導組織、学年・学級における対応内容を確認する。
 ③すべての子どもが自己指導能力、望ましい人間関係づくりの態度を身につけるための、開発的な指導援助体制が整っているかどうかを確認する。
 生徒指導の基盤は子ども理解にある。
 例えば、いじめに関する指導なども、子どもの発する次のようなサインの受け止めが重要な意味を持つ。
 ①諸活動において仲間はずれ、孤立化の感じられる子どもがいないか。
 ②いじめを誘発することば、持ち物隠し、特定の子どもに対する無視やからかいなどが見られないか。
 ③授業中に元気がなく、教師と目をあわそうとしない子どもがいないか。
 ④休みがちな子ども、遅刻や早退が多くなっている子どもがいないか。
 問題があると思われる場合は、把握された状況に応じ、保護者との協力、個別の相談、学級やグループでの話し合いなどを直ちに実施する必要がある。そうした指導を進めることと重ねて、学級等における人間関係づくり、信頼関係の構築を行い、年間を通じて安定した指導が展開できる基盤を構築することが重要である。

■自己指導の力を育てる体制づくり

 子ども一人一人の人間形成の視点を常に大切にしながら生徒指導を進める。その意味からは、全教育活動を通して学校生活が有意義であり、諸活動によって豊かな人間性、自己指導の力を育てるよう配慮されなければならない。その中心に位置づくのが学級である。
 学級は学習のための集団であると同時に、子どもが協働の活動を展開し人間的な発達を遂げる集団でもある。子どもの規範意識を育て、自己指導力を獲得させるために、学級にどのような課題があるか。把握された実態を大事にしながら、指導計画を実行に移すことのできる体制を年度初めに築くことが大切である。
 4月から5月にかけては、学級として、認め合い励ましあう人間関係づくり、よりよい学級づくりに結び付く活動を配慮したい。学級担任教師としては、次のようなことに留意することが求められる。
 ①みんなの相談を受け止め、直ちに親身になっての指導・対応をすることを徹底する。
 ②みんなの力で学級の問題を解決することを徹底する。
 ③友だちを意味ある他者として認め、ともに学び、活動する、協働の学級づくりを徹底する。
 生徒指導体制構築というと、ややもすると問題行動対応が前面に出やすいが、年度当初の取組としては、次のような子どもの自発的、自律的な実践力への働きかけを配慮したい。
 ①子どもに自己存在感を与える。
 ②教師と子ども、子ども同士の人間関係を育てる。
 ③自己決定の場を与え自発性を育てる。

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