小学校 生活

小学校 生活

「いきものとなかよし~わたしのだんごむし~」(第1学年)
2014.06.23
小学校 生活 <No.007>
「いきものとなかよし~わたしのだんごむし~」(第1学年)
東京都 小学校教諭

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名/時数・実施時期

「いきものとなかよし~わたしのだんごむし~」/全15時間 9月~11月

2.はじめに

 区の名前に植物がつく杉並区は,その名のとおり緑豊かなところである。学区域は,閑静な住宅街で,大きな公園もあるが,整備されているたいへんきれいな公園なので,子どもたちは,自然の中で虫を捕まえたりそれを飼ったりという経験は少ない。それ故に,虫に対しては「嫌い。」「気持ちが悪い。」と苦手意識をもつ子どもが多い。そこで,1年生でも親しみやすく危険性もなく,校庭でも容易に捕まえることができるダンゴムシを教材にして学習を進めることにした。
 単元は,学習指導要領内容(7)「動植物の飼育・栽培」,内容構成の具体的な視点として,「キ:身近な自然との触れ合い」「カ:情報と交流」を位置付け,単元を構成した。子どもたちが自らの手で継続的に生き物を飼うことを通して,生き物を育てることに興味・関心をもち,それらが命をもっていることや成長していることに気付くとともに,生き物を大切にすることができるようにすることを目指した。

3.単元の目標

生活への関心・意欲・態度
○生き物を採集・飼育し,その生き物の生息環境や生態・成長の様子などに関心をもってかかわり,大切にしようとしている。

活動や体験についての思考・表現
○生き物たちが住んでいた環境から飼育環境や世話の仕方を考え,試行している。
○生き物の姿・形やすみか,えさ・世話の仕方などの驚きや気付きなどを自分なりの表現方法で表現している。

身近な環境や自分自身への気付き
○生き物の採集・飼育を通して,生き物たちも自分たちと同じように生命をもっていること・成長していることなど,生き物と自分とのかかわりに気付いている。

4.活動計画

事前準備
●「わたし」のダンゴムシにするために,1人1つずつ飼育箱をもち,教室で飼い,週末には家に持ち帰り,いつでもふれあえるようにした。飼育箱は市販のものでもよいし,ペットボトルでつくったものでもよい。
●土を乾燥させないことを注意すれば,飼育自体はそんなに難しくない。土を多めに入れ,枯れ葉などをしいておくと,そんなに乾燥はしない。霧吹きは教室に用意しておくとよい。
●校内の中で,ダンゴムシが居そうな場所を確認しておくこと。休み時間でも,ダンゴムシさがしができる場所や,校舎の裏など生活科の時間でしか行けない場所も探しておくとよい。校舎の裏を回るときは「多分,この辺にいそうだよね。」と予想しながら探してみると,子どもたちの意欲は一層高まる。

環境設定
●ダンゴムシへの興味関心を高めるために教室に図書スペースをつくって,ダンゴムシに関する図鑑や絵本などを,いつでも読んだり見たりできるようにするとよい。ダンゴムシのおうちをつくるときや,えさについて調べたいときはもちろんのこと,内遊びのときなど何気なく友だちといっしょに読んだり話したりしている姿が見られた。
●図鑑や本を読み始めると,知らなかったことを知り,みんなに伝えたくなるので,「ダンゴムシノート」をつくってそれにメモし,伝え合う場を設定するようにした。また,はじめ知っていたことからどんどんダンゴムシに関する知識が広がっていくのが視覚的にも分かるようにまとめていくとよい。

5.単元の流れ

活動[時数]

対話に見る活動の様子(子どもの思考の流れ)

(1)ダンゴムシとあそぼう
[2時間]
●ダンゴムシについて知っていることを出し合う。
●ダンゴムシさがしをして遊ぶ。
●遊んで気付いたことや感想をカードに書いたり,発表したりする。

(実物を映しながら)『ダンゴムシについて知っていることはありませんか。』
「触ると丸くなります。」
「石とかの陰にいます。」

『遊んでみて気付いたことを発表してください。』
「黄色い点々があるダンゴムシを見つけました。」
「それは,メスだよ。」
「メスとオスがあるんだね。」
「ぼくのは,オスだ。メスをさがそう。」

(2)できたよ,ダンゴムシのおうち
[2時間]
●ダンゴムシを飼うための準備をする。
●死んでしまったダンゴムシをどうするか,どんなおうちにしたらよいか話し合う。(命についても含む)

『○○さんのダンゴムシは死んじゃったんだよ。どうしたらいいと思いますか。』
「うめてあげる。」
「見つけた場所に返してあげる。」
「ふるさとに返すってこと?」

『どうしたら,死なせずにすむかな?』」
「土が乾くとだめだから,毎日霧吹きをしてあげる。」
「土をもっとたくさん入れてあげる。」
「石やはっぱも入れるといいよ。」

(3)むしのふしぎを見つけた
[3時間]
●飼育しながら,発見したことを「ダンゴムシノート」に書きためていく。
●図鑑や絵本を見ながら,興味があるところも「ダンゴムシノート」に書いていく。

(4)ダンゴムシランドであそぼう
[4時間]
●ダンゴムシランドの計画を立てる。
●迷路などをつくって遊ぶ。

「楽しそう。一緒にやってもいい。」
「いいよ。競走しようよ。」

「迷路の途中に,レタスを置いてみたらね,出てこないんだよ。うちの子はレタスが好きなんだ。」

(5)おわかれしきをしよう
[4時間]
●絵本「ぼく、だんごむし」を読み,冬になったら返さなければならないことを知る。
●お別れする前に,何ができるか話し合う。
●おわかれ式の準備をする。
●おわかれ式をする。

絵本「ぼく、だんごむし」の本を読む。最後のフレーズを読んだとき,クラス中がシーンと静まりかえった。

『どうする? だんごむし,元の場所に返してって言ってるよ?』
「いやだけど,返さなくちゃいけないんだね。」
「さみしいなあ。」
「ぼくは,いやだよ。返したくないよ。」
「だって,私たちで,冬を越させてあげられるの。死なせちゃったらもっとかわいそうなんだよ。」
「それなら,返す前に,だんごむしが喜ぶことをしてあげようよ。」
「もう一回,ダンゴムシランドをしようよ。」
「最後にごちそうしてあげたい。」
「思い出のアルバムをつくりたい。」

それから,あきのおわりになったら,きみがぼくをみつけたところにそっとかえしてほしいんだ。ふゆはやっぱり,なかまたちといっしょにすごしたいんだよ。
(出典:「ぼく、だんごむし」得田之久 文、たかはしきよし 絵 福音館書店刊)

6.評価について

子どもの変容から
●なかなかクラスになじめずにいた子どもが,ダンゴムシを通してかかわり方を学ぶことができた。
 「どこでつかまえたの?」
 「一緒にダンゴムシを探そう。」
 「今度はぼくがつくった迷路で試してみよう。」
このような会話が他の場面でも普通に交わされるようになった。

●虫が大嫌いで,最初ダンゴムシに触ることもできずにいた子どもが,友だちから貸してもらい,ゴム渡りをして遊んでいるうちに,自然に触れるようになった。次のときには,自分でダンゴムシを探して遊ぶ姿が見られた。単元が終わるころには,ダンゴムシを探しているときに別の虫が出てきても,「これは何かなあ。」と平気で拾い上げる姿も見られた。

7.教師の手立て

①かかわる場の設定~かかわることで学び合う~

「細いゴムだと落ちちゃうね。」
「太いゴムの上を渡らせてみようよ。」

「ひなたぼっこさせると元気になるんだよ。」
「暖かい方が好きなんだね。」

「迷路の中にレタスを置いてみたよ。」
「みんなレタスの方に行っちゃうね。」
「うちの子。レタスが好きなんだよ。」

●子どもの変容から

 話し合いを通して,自分でダンゴムシのお家をいろいろ工夫することで,「僕のダンゴムシは幸せだよ。だってぼくが大事に育てているから。」と自慢げに話す姿が見られた。

②話し合う場の設定~話し合いで自己決定~

 ダンゴムシを飼うことになって,おうちづくりをした後,どんなことをしていきたいかを話し合った。

 11月になって寒くなってきたころに,「ぼく,だんごむし」の絵本を読み聞かせた。それがきっかけとなり,ダンゴムシを元の場所に返すかどうかについて「だんごむしかいぎ」を開くことになった。

 ダンゴムシとのおわかれ式で,どんな歌を歌ったらいいかを話し合った。各グループから1曲ずつ出し,6曲の中から1曲歌うことにした。それぞれ,思いが強くてなかなか決まらなかったので,三角ツールを使って,選ぶことにした。

●曲を選ぶために,自分のダンゴムシへの思い(「お別れしても元気でいてほしい。」「また,来年会いたい。」「わたしたちのことを忘れないでいてほしい。」など)を再認識している姿が見られた。

●「この枯れ葉の下に返してあげよう。」「日向の方が暖かいね。」「また,来年会おうね。」という声かけをしながら土にそっと返していた。

●ダンゴムシの絵本づくり(アルバムまたは,えにっきなど)では,どの子どももたいへん夢中になって取り組んだ。書くことが苦手な子どもたちも書きたがって,ページを進めていた。出来上がると,「ぼくがつくっただんごむし絵本だよ。一緒に見よう。」と,友だちに見せながら,嬉しそうにダンゴムシの話をしている姿も見られた。