小学校 生活
小学校 生活

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。
1.単元名/時数・実施時期
「いきものとなかよし~わたしのだんごむし~」/全15時間 9月~11月
2.はじめに
区の名前に植物がつく杉並区は,その名のとおり緑豊かなところである。学区域は,閑静な住宅街で,大きな公園もあるが,整備されているたいへんきれいな公園なので,子どもたちは,自然の中で虫を捕まえたりそれを飼ったりという経験は少ない。それ故に,虫に対しては「嫌い。」「気持ちが悪い。」と苦手意識をもつ子どもが多い。そこで,1年生でも親しみやすく危険性もなく,校庭でも容易に捕まえることができるダンゴムシを教材にして学習を進めることにした。
単元は,学習指導要領内容(7)「動植物の飼育・栽培」,内容構成の具体的な視点として,「キ:身近な自然との触れ合い」「カ:情報と交流」を位置付け,単元を構成した。子どもたちが自らの手で継続的に生き物を飼うことを通して,生き物を育てることに興味・関心をもち,それらが命をもっていることや成長していることに気付くとともに,生き物を大切にすることができるようにすることを目指した。
3.単元の目標
生活への関心・意欲・態度
○生き物を採集・飼育し,その生き物の生息環境や生態・成長の様子などに関心をもってかかわり,大切にしようとしている。
活動や体験についての思考・表現
○生き物たちが住んでいた環境から飼育環境や世話の仕方を考え,試行している。
○生き物の姿・形やすみか,えさ・世話の仕方などの驚きや気付きなどを自分なりの表現方法で表現している。
身近な環境や自分自身への気付き
○生き物の採集・飼育を通して,生き物たちも自分たちと同じように生命をもっていること・成長していることなど,生き物と自分とのかかわりに気付いている。
4.活動計画
事前準備
●「わたし」のダンゴムシにするために,1人1つずつ飼育箱をもち,教室で飼い,週末には家に持ち帰り,いつでもふれあえるようにした。飼育箱は市販のものでもよいし,ペットボトルでつくったものでもよい。
●土を乾燥させないことを注意すれば,飼育自体はそんなに難しくない。土を多めに入れ,枯れ葉などをしいておくと,そんなに乾燥はしない。霧吹きは教室に用意しておくとよい。
●校内の中で,ダンゴムシが居そうな場所を確認しておくこと。休み時間でも,ダンゴムシさがしができる場所や,校舎の裏など生活科の時間でしか行けない場所も探しておくとよい。校舎の裏を回るときは「多分,この辺にいそうだよね。」と予想しながら探してみると,子どもたちの意欲は一層高まる。
環境設定
●ダンゴムシへの興味関心を高めるために教室に図書スペースをつくって,ダンゴムシに関する図鑑や絵本などを,いつでも読んだり見たりできるようにするとよい。ダンゴムシのおうちをつくるときや,えさについて調べたいときはもちろんのこと,内遊びのときなど何気なく友だちといっしょに読んだり話したりしている姿が見られた。
●図鑑や本を読み始めると,知らなかったことを知り,みんなに伝えたくなるので,「ダンゴムシノート」をつくってそれにメモし,伝え合う場を設定するようにした。また,はじめ知っていたことからどんどんダンゴムシに関する知識が広がっていくのが視覚的にも分かるようにまとめていくとよい。
5.単元の流れ
活動[時数] |
対話に見る活動の様子(子どもの思考の流れ) |
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(1)ダンゴムシとあそぼう |
(実物を映しながら)『ダンゴムシについて知っていることはありませんか。』 『遊んでみて気付いたことを発表してください。』 |
(2)できたよ,ダンゴムシのおうち |
『○○さんのダンゴムシは死んじゃったんだよ。どうしたらいいと思いますか。』 『どうしたら,死なせずにすむかな?』」 |
(3)むしのふしぎを見つけた |
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(4)ダンゴムシランドであそぼう |
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(5)おわかれしきをしよう |
絵本「ぼく、だんごむし」の本を読む。最後のフレーズを読んだとき,クラス中がシーンと静まりかえった。 『どうする? だんごむし,元の場所に返してって言ってるよ?』 |
それから,あきのおわりになったら,きみがぼくをみつけたところにそっとかえしてほしいんだ。ふゆはやっぱり,なかまたちといっしょにすごしたいんだよ。 |
6.評価について
子どもの変容から
●なかなかクラスになじめずにいた子どもが,ダンゴムシを通してかかわり方を学ぶことができた。
「どこでつかまえたの?」
「一緒にダンゴムシを探そう。」
「今度はぼくがつくった迷路で試してみよう。」
このような会話が他の場面でも普通に交わされるようになった。
●虫が大嫌いで,最初ダンゴムシに触ることもできずにいた子どもが,友だちから貸してもらい,ゴム渡りをして遊んでいるうちに,自然に触れるようになった。次のときには,自分でダンゴムシを探して遊ぶ姿が見られた。単元が終わるころには,ダンゴムシを探しているときに別の虫が出てきても,「これは何かなあ。」と平気で拾い上げる姿も見られた。