小学校 生活
小学校 生活

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。
1.単元名/時数・実施時期
「なかよく あそぼう」/全25時間 6月~10月
2.単元のねらい
本校は敷地内に子ども園が隣接されており,6~7割の児童が,子ども園から本校に入学する。子ども園とは一部の施設を共有しているが,園児と児童の日常的な交流は多くはない。そこで,1学年では生活科の学習として園児と交流を行い,互いのことを理解し合ったり,心を通わせたりしてかかわることの楽しさを実感させたいと考え,本単元を設定した。
本単元は「1.なつだ いっしょに あそぼうよ」「2.ランド遊びを しよう」の二つの小単元から構成されている。「1.なつだ いっしょに あそぼうよ」では,夏という季節感を最も感じられる水を教材として,身近にあるものを使って簡単な水遊びの道具をつくり,自然の不思議さやおもしろさ,遊びの楽しさに気付くことをねらいとしている。「2.ランド遊びを しよう」では,水遊びの経験を生かして,より工夫した遊び道具や遊び方を考えて,園児を招待して一緒に遊んだ。どちらの単元でも,身近な自然を利用したり身近にある物を使ったりして自分たちの生活を工夫したり楽しんだりできるようになることや,園児や友だちとの交流を通じて,わかりやすく伝えようとする気持ちや相手の気持ちを考えようという心を育て,誰とでも仲良く生活できるようになることを期待している。また,隣接学年ではなく,1学年と年中組の交流を設定したことで,児童は自信をもって園児をリードすることができ,園児も小学生への憧れの気持ちをもつことができる効果を期待した。
3.評価規準
○生活への関心・意欲・態度
友だちや園児とかかわり合いながら,遊びを楽しんだり,交流を喜んだりすることができるようにする。
○活動や体験についての思考・表現
友だちと協力して試行錯誤しながら道具をつくったりルールを考えたりして,園児と一緒に楽しく遊べる方法を工夫することができる。
○身近な環境や自分自身への気付き
交流活動を通じて,言葉や表情,しぐさなど,多様な伝え方があることに気付き,適切に園児とかかわる中で,一緒に遊ぶことの楽しさや自分の成長に気付き,伝えあっている。
4.活動の計画
事前準備
水遊びを行う前に,教師が様々な材料を使って水遊びを行い,子どもの活動がより広がったり,深まったりする素材を探した。重視した点は,子どもが容易に遊べるもの,工夫によって遊びの発展が期待できること,人とのかかわり合いによって遊びが発展することである。
環境設定
教室に生活科コーナーを設定し,単元の活動写真や,活動計画を掲示した。児童の振り返りに利用し,次時の見通しをもたせて児童の意欲を持続させることができた。
活動計画
活動計画を作成する際には,児童が自分で興味・関心をもって,次に行いたい活動を自然に見付けていけるように留意した。例えば,児童が水遊びをしているところに意図的に園児に見学に来てもらい,「次は園児も一緒に遊べたらいいな」という願いを児童がもてるようにした。このため,子ども園の教員との相談や連絡を密に行い,活動の意図やねらいを相互理解したうえで活動に臨んだ。また,小単元1ではグループ単位での交流を行ったが,小単元2では,園児と児童の交流の深まりを図るため,1対1(または2)のペアをつくって活動を行うこととした。
5.単元の流れ
活動[時数] |
対話に見る活動の様子(思考の流れ) |
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1 色々な水遊びをしよう[4時間] |
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●第1時 ●第2,3時 |
『朝顔の水やりの様子です。何か気付くことはありますか?』 『どうしたら水が流れるかな。』 |
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●第4時 |
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2 水遊びランドで遊ぼう[8時間] |
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●第1時 ●第2~5時 ●第6,7時 |
『みんなの水遊びを誰かが見ていますね。誰でしょう。』 『どんなこと言っているのかな。』 |
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●第8時 |
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3 公園や校庭で園児と一緒に遊ぼう[4時間] |
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●第1時 ●第2時 ●第3時 ●第4時 |
『公園で子ども園のみんなに会いましたね。もっとしたかったことはありますか。』 ●校庭遊びにて 『子ども祭り(学校行事)は楽しかったですね。子ども園のみんなもやりたそうでしたね。』 ●遊び道具や遊び方を工夫する際に 『今日は一年生だけで遊んで,楽しいところやもっと工夫するところを見つけましょう。』 |
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『子ども園のみんなと遊ぶときに大事なのはどんなことでしょう。』 |
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4 「遊びランド」で一緒に遊ぼう[9時間] |
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●第1~5時 ●第6,7時 ●第8時 ●第9時 |
●ランド遊びにて 『ビデオレターをもらって,嬉しかったですね。』 |
6.評価について

①「活動→表現(振り返り)→伝え合い」のサイクルで子どもの意欲を高める
活動を行って,楽しかったことや気付いたことを絵と文でカードに書き,学級で伝え合うことで,次の活動への意欲や願いが生まれてくるようにした。また,遊び道具をつくる際には,工夫したことをカードに書くことで,自分の作品に対する気付きや友だち同士の認め合いの気持ちが生まれた。
子どもの意欲関心を高め,自主的に活動に取り組むことができるように,生活科コーナーをつくり,活動のねらいや流れを掲示した。
②ICT機器の効果的な活用
活動の様子を写真に残し,子どもの気付きや思いを振り返りの場で引き出せるようにする。
園児からのお礼の言葉は,視覚・聴覚の両面から情報を得られるビデオを活用し,子どもの関心を高めることができた。
③評価の流れ
毎時間ごとに評価規準を設定し,具体的な児童の活動の姿や反応(つぶやき,発言,カードの記入)などを記録し評価に生かすようにする。
7.教師の手だて

●ねらいに沿って,カードに朱書きを書き加える
各活動の際に必ず振り返りカードを書いたが,活動のねらいに沿って,気付きが生まれているかを特に評価した。ここでは,「園児が楽しめるように工夫したこと」に焦点をあてている。
●記録写真を撮影する
活動の際には必ず写真で記録を残す。T1の教員だけでなく,より多くの教員の協力が得られると良い。その際には,どんな場面のどんな様子の写真が欲しいのか,共通理解しておく必要がある。写真はカラーコピーで引き伸ばしたり,パワーポイントで加工したりして提示し,振り返りの際に使用した。
●お店屋さん遊びには発展性のあるものを
お店屋さん遊びのような活動の際,子どもたちにやりたい遊びを出させると,多様な遊びが出てくるが,自分たちで工夫して発展させる余地がある遊びを考えさせるほうが活動の広がりや深まりが出る(例えば,ゲーム形式や点数を競うような遊びの方が,道具やルールの工夫がしやすい)。子どもから出ない場合には,地域の祭りや学校での縦割り遊びなどの写真を提示したり,体験談を話させたりするとよい。
●交流活動は段階的に複数回行うと効果的
子ども同士が知り合って,名前を覚え,楽しく一緒に遊ぶようになるまでは時間が必要である。最初は少しの時間一緒に過ごすだけでも良く,何度も交流を重ねることで,子どもたちの関係が深まり,より仲良くなって楽しく遊べるようになる。ビデオや手紙での交流,給食時間などの隙間時間を活用しての交流など,より多くの交流活動が行われるよう工夫できると良い。
●イラストカードで気付きの広がりを
目,耳,鼻,手,心のイラストカードを用意し,全身の感覚を使って様々なことに気付くようにする。板書の際もカードごとに板書することで,気付きのバリエーションを児童自身が見つけて,気付きを広げるようになっていく。