小学校 社会

小学校 社会

「火事からくらしを守る」(第3学年)
2022.05.13
小学校 社会 <No.034>
「火事からくらしを守る」(第3学年)
東京都足立区立栗原小学校 主幹教諭 髙橋陵

1.単元名

「火事からくらしを守る」(第3学年)

2.目標

 火災から地域の安全を守る働きについて、消防署などの施設や設備の配置、緊急時への備えや対応などに着目して、見学・調査したり地図などの資料で調べたりしてまとめ、関係機関や地域の人々の相互の関連や従事する人々の働きを考え、表現することを通して、関係機関は、地域の安全を守るために、相互に連携して緊急時に対処する体制をとっていることや、関係機関が地域の人々と協力して火災の防止に努めていることを理解できるようにするとともに、主体的に学習問題を追究・解決し、学習したことを基に火災から地域や自分自身の安全を守るために自分たちにできることなどを考えようとする態度を養う。

3.評価規準

○知識・技能

消防施設・消防設備などの配置、緊急時への備えや対応などについて見学・調査したり地図などの資料で調べたりして、必要な情報を集め、読み取り、関係機関や地域の人々の諸活動を理解している。

調べたことを関係図や文などにまとめ、消防署などの関係機関は地域の安全を守るために、相互に連携して緊急時に対処する体制をとっていることや、関係機関が地域の人々と協力して火災の防止に努めていることを理解している。

○思考力・判断力・表現力等

施設・設備などの配置、緊急時への備えや対応などに着目して、問いを見出し、関係機関や地域の人々の諸活動について考え、表現している。

連携・協力している関係機関の働きを比較・分類したり、結び付けたりして、関係機関や地域の人々の相互の関連や従事する人々の働きを考えたり、火災から地域や自分自身の安全を守るために自分たちにできることを選択・判断したりして、適切に表現している。

○主体的に学習に取り組む態度

火災から地域の安全を守るための働きについて、予想や学習計画を立てたり、学習を振り返ったりして、学習問題を追究し、解決しようとしている。

学習したことを基に、火災から地域の安全を守るために自分たちができることなどを考えようとしている。

4.本単元の指導にあたって

①単元の導入の工夫
 児童にとってあまり身近な問題ではない「火災」について関心をもたせるために、実際の火災の動画や火災を経験した人の話を導入で提示する。その後、火災に対する現段階でのイメージを共有するために、Googleフォームに火事に対するイメージや動画を見た感想などを記入させ、スプレッドシートで共有する。その際、児童の記入内容を「AIテキストマイニング」のサイトを活用し、ワードクラウドを作成して児童に提示すると、児童の火災に対する怖さや思いが視覚的に捉えられ効果的である。

実際の授業で児童の書き込みを活用して作成したワードクラウド

②消防署見学活動の記録
 消防署などを見学し、実際に現場で働く消防士の話を聞いたり、消防活動の設備や器具を見学したりすることは、児童にとって重要な学習活動である。コロナ禍で実際の見学が難しい場合は、オンラインでの見学をお願いすることも可能である。
 また、見学の様子を動画で撮影し、Googleクラスルームなどに投稿しておくことで、児童がいつでも見られるように工夫をした。そうすることで、児童が学習問題について調べていく過程で、実際の消防士の話や消防署の様子について、調べた内容を動画でいつでも確認することができ、児童の調べる意欲にもつながる。

5.単元の指導計画

学習のねらい

○学習活動 ◆問い ・児童の反応

①火災から地域の安全を守る活動に関心をもち、学習問題を立てる。

(本時)

○火事の動画や写真、火事にあった人の話から、火災の恐ろしさについて話し合う。
・思い出までも奪ってしまう。こわいものだ。
・火災でこうなるのはこわい。起こしたくない。

○足立区の火災発生件数や全焼件数の経年推移を調べて気付いたことを話し合う。
◆足立区ではどのくらい火災がおきているのだろう。
・火災の発生件数はだんだん減っている。
・どうやって発生件数を減らしているのかな。
・全焼件数が大きく減っているのはなぜだろう。
○火災件数や全焼件数が減少している理由を予想する。
・早く火を消すために、消防士は訓練している。
・地域で防火訓練をしているのを見たことがある。
・消防署では、現場に早く駆けつけるための仕組みや工夫があるのではないか。
○学習問題を立てる。

火事から町や人々を守るために、だれがはたらき、どのようなくふうをしているのだろう。

②学習問題に対する予想から、学習計画を立てる。

○予想に基づいて調べたいことを考え、記述する。
○調べたいことを分類・整理し、学習計画を立てる。
・消防署の人はどうやって火を消すのか。どんな工夫があるのか。
・火を消すために、学校や地域など、私たちの身の回りにどんな施設や設備があるのか。
・火事を防ぐために取り組んでいることはないか。

③消防署の活動について知り、消防署見学で調べたいことをまとめる。

○火災発生時の消防署の活動(出動・消火活動等)について、写真や映像を手がかりに話し合う。
◆消防署では早く消火活動をするためにどんな活動や工夫をしているのだろう。
・出動まで何分かかるのか。
・どんな車両があり、それぞれどんな役割があるのか。
・どのようにして火を消しているのか。
・早く消すために心がけていることは何か。
○見学で知りたいことを出し合い、まとめる。

④⑤消防署を見学し、火災への備えや対応に着目して調べる。

○通信指令室を中心とするネットワーク、関係機関との相互連携について調べる。
◆消火活動をするために、消防署以外の人たちとは、どのように関わっているのだろう。
・警察署に交通整理をお願いしている。
・水道や電気、ガス会社にも連絡している。
・消防団にも消火活動をお願いしている。
・消火をするために消防署以外にも多くの人が関わり合っている。
○従事する人の勤務体制や待機の仕方、訓練について調べる。
○その他、前時の学習までに出た疑問や調べたいことについて、消防署の人にインタビューをする。
◆消防署の人たちは、どのような願いをもち、どんな工夫や努力をしているのだろう。

⑥校内や地域における施設・設備について調べる。

○校内の防火設備を調べる。
◆学校の中には、どこにどんな消防設備があるのだろう。

○学区地域の施設や設備について調べ、地図にまとめる。
◆学校のまわりには、どこに、どんな消防施設があるのだろう。
・町の中には消火栓がたくさんある。
・学校のプールの水を使うこともある。
・どこで火事になっても困らないように、まちの中に設備が広がっている。
○日頃から消防署がこれらの施設・設備を点検していることについて知る。

⑦関係機関や地域の人々の火災予防活動について調べる。

○地域や関係機関における防火活動を調べる。
○消防署と消防団がどのように連携・協力して、火災の発生に備えたり対応したりしているかを調べる。
◆火災を防ぐために、消防団や地域の人たちは、どのような活動をしているのだろう。
・消防団の人は自分の仕事の合間に訓練などをしている。
・地域でも防災訓練が行われているよ。
・住宅用火災警報器など、身近なところにも火災を防ぐための物があるんだね。
・火事を防ぐために地域の人や消防団の人が協力し合って活動しているんだね。

⑧調べたことを関係図に整理し、学習問題の結論をまとめる。

○消防署・消防団や町会・区役所等の関係機関について、調べてわかったことを関係図にまとめる。
◆火事から私たちを守るために、だれがどのような働きをしているのだろう。
・消防署だけではなく地域のみんなが火災を防ぐために協力している。
・私たちも火事を防ぐために協力したい。
○学習問題についてまとめる。

⑨学習したことをもとに火災予防について自分たちにもできることを考える。

○火災の主な原因を調べる。
・たばこの不始末やガステーブルなどが原因なんだ。
○地域の安全を守るために自分たちができることを考え、伝え合う。
◆火事や火事による被害をもっと少なくするために、自分や家族、地域にできることはどんなことだろう。
・消火器の使い方を知っておくことが大切だ。
・火事が起きないようにみんなに呼びかけたいな。
・地域の消防団に協力できないかな。
○今までの学習を振り返り、地域の安全を守るために自分たちができることを考え、「火事0せんげんポスター」にまとめる。

6.本時の学習

①目標
 火災から地域の安全を守る活動に関心をもち、学習問題を立てる。

②学習展開

○主な学習活動・内容
◆問い ・児童の反応

指導の工夫と教師の支援

資料

○本時のめあてを確認する。

□単元名「火事からくらしを守る」を板書し、児童が学習の方向性をつかめるようにする。

資料をもとに話し合い、学習問題を立てよう。

○火災の動画や被害にあった人の話を読み、火災に対するイメージを共有する。
・火事はこわい。命や大切なものをうばってしまう。
・思い出もなくなってしまう。

□資料から火災によってどのような被害が生じるのかを発問する。
□Googleフォームに投稿された児童の意見をスプレッドシートにして共有できるようにする。
□AIテキストマイニングを使い、児童の考えをワードクラウド化で可視化する。

◎火事の動画や写真
◎火事にあった人の話

○足立区の火災発生件数や全焼件数の経年推移を調べて気付いたことを話し合う。
◆足立区ではどのくらい火災がおきているのだろう。

◎足立区内の火災発生件数
◎足立区内の全焼件数

・火災の発生件数がだんだん減っている。
・どうやって発生件数を減らしているのかな。
・全焼件数も30年前と比べて大きく減った。
・全焼件数が大きく減っているのはどうしてなのだろう。

□「火災件数」も「全焼件数」も減少傾向であることを押さえる。
□「全焼」の言葉の意味を説明する。
□「減っている」のではなく、何らかの努力により「減らしている」ことに気付かせる。
□「火事を減らす工夫」「火事の被害を減らす工夫」に焦点化していくよう板書を工夫する。

○火災件数や全焼件数が減少している理由を予想する。(グループ→全体)

□班ごとにJam boardの付箋に、予想される火事や火事の被害を減らすための取り組みについて書くよう指示する。

◎写真資料(全国火災予防標語ポスター、消防車点検、消防士の訓練、消火器訓練)

◆火事を起こさないためや火事を早く消すために、どんな工夫や取り組みをしているのだろう。
・早く火を消すために、消防署では訓練している。
・地域で防火訓練をしているのを見たことがある。
・現場に早く駆けつけるための仕組みや工夫があるのではないか。

□児童の生活経験だけでは、予想できない場合は、写真資料を読み取らせ、火事に対する様々な備えや取り組みについて考えるよう助言する。
☆Jam boardの記述や発言内容から「火災の際に安全を守るための関係機関や人々の働きに着目して、問いを見出しているか」を評価する。【思-①】

○児童の考えをもとに学習問題を設定する。

□児童が予想した、火災や火災の被害を抑えるための取り組みを確かめるためには、どんな学習問題にしたらよいのかを考えるよう、助言する。

学習問題
火事から町や人々を守るために、だれがはたらき、どのようなくふうをしているのだろう。

○本時の学習を振り返る。

□「ふりかえりシート」の視点に沿って振り返るよう指示する。

振り返りの視点
①内容について(わかったこと、わからなかったことなど)
②今日の学び方について
③次の学習に向けて
④これからの生活に生かしたいこと