学び!と美術

学び!と美術

よくある質問~「立体」と「工作」の違いは?
2014.08.11
学び!と美術 <Vol.24>
よくある質問~「立体」と「工作」の違いは?
奥村 高明(おくむら・たかあき)

焼成で粘土とガラス片を一緒に焼くと、ガラス片は溶けて水のようになります。そこから水をテーマにつくりたい形を考えるという高学年の題材です。

 夏、研修会のシーズンです。よくある質問の答えを書いてみましょう。形式上、断定的なQ&Aで書きますが、本来「答え」には、個人、学校、地域、年度、雰囲気等々、その「問い」が生まれた特定の状況が含まれます。オールマイティの「答え」はないことを踏まえて、読んでください。

Q.「立体」と「工作」の違いを教えてください。

A.ねらいと評価が違います。

 「立体」は、「自分の感じたことや思ったことなどを表す」というねらいがあります。自分の思いがふくらんで「船をつくっていたら、お城のようになって…」ということもおこります。一方、「工作」は、使うもの、伝えるもの、遊ぶものなど、意図や用途が明確です。筆立てをつくりながら、思いが広がってロボットのようになったとしても、筆立ての機能は必要です。
 でも、その子が表している瞬間で、両者を毅然と分けるのは難しいでしょう。また「夢を入れる箱」「私の○○な椅子」など、用途と思いが交錯する題材もあります。それもあって「絵や立体、工作に表す」とまとめて示しているわけです。低学年では「絵や立体、工作」と「造形遊び(※1)」が分けにくいことも起きます。実際に、教科書には、工作だけど「造形遊び」の要素がたっぷり入っている題材もあります。だからといって、工作ではなく「造形遊び」で評価するわけではありません。指導者は、題材のねらいを見失わず、評価がぶれないように配慮する必要があるでしょう。

Q.指導案の目標は1つですか?4つですか?

A.どっちでもかまいません。学校で決めましょう。

 指導案の形式は全国いろいろです。地域、市町村、小学校と中学校、附属学校と公立学校などで形式が異なります。題材目標だけ見ても「1つにまとめて書く」「評価規準にそって4つ書く」など様々です。目標の数に決まりはありません。指導案の書き方については、学習指導要領、教育委員会の方針、造形教育研究会の研究主題などをもとにしながら、各学校でしっかり考えてください。その際の協議こそが、貴重な校内研修になるでしょう。
 なお、国立教育政策研究所教育課程研究センターの「評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料(小学校 図画工作)」では、題材目標を包括的に1つにまとめて記述しています。理由は、4つにすることで、「題材で必ず4つ」というメッセージを出したくなかったからです。あの資料では「年間を通して4つ育ててください。そのために題材に軽重をつけてください」と言っています。そこで題材目標を1つにして、「特にこの題材でめざすもの」をはっきりさせました。

Q.子どものイメージを膨らませる方法は?

A.子どもの行為(ながら)が大切です。

 思考だけでイメージを膨らませるというのは相当難しいことです。イメージは、どこかに「あるもの」ではなく「生まれるもの」ととらえた方がよいでしょう。
 低学年であれば、材料にふれる、材料や用具を操作する、やぶる、ならべるなど「行為からイメージを発生させる」ことが大事です。中高学年でも「糸鋸で切りながら」「板を掘りながら」など、行為(ながら)は大切です。その上で「中学年では、想像を楽しむことを大切にする」「高学年では、自分で取捨選択できるようにする」など、発達に応じて考えることが基本です。周りとおしゃべりするとか、向き合って座るなど、学習形態を工夫することもポイントです。
 要はワークシートだけでなんとかしようとしないことです(※2)。子どもの頭の中の操作に閉じ込めるのではなく、動きや行為にイメージ、道具にイメージ、材料にイメージと考えた方がよいでしょう。なお〔共通事項〕で、イメージは「子ども」自身の、という前提がついています。子ども自身が思い描けるような手立てを工夫したいものです。

 

※1:今の指導要領で「造形遊び」は正式な用語となりました。教育課程、授業などに正しく反映してほしいものです。
※2:題材に応じて「マインドマップ」「論理構造をはっきりさせたワークシート」「簡素な画用紙一枚」など、どのような方法が有効か吟味する必要がある。