学び!とPBL

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コロナ禍でフェスティバルを断行!
2022.11.21
学び!とPBL <Vol.56>
コロナ禍でフェスティバルを断行!
三浦 浩喜(みうら・ひろき)

1.絶体絶命の高校生フェスティバル

図1 半年ぶりの大学生ミーティング 2020年3月の新型コロナウイルスの蔓延による臨時休校は、福島市チームプロジェクトのすべてを直撃しました。台湾の高校との協働プランも中断となり、3回目となる福島市高校生フェスティバル(以下、高フェス)の存続も極めて難しい状況となりました。
 高フェスの2018年、2019年の実績が認められ、福島市施設との共催も決定し、これまでの苦労が報われたと思われた矢先のことでした。前年度まで支えてくれた主力メンバーが大学受験のために引退、サポートに回り、新しい実行委員体制もまだ築けてはいません。私事ですが、この4月から学長の重責を担うこととなり、これまでのようにプロジェクトに関わることもできなくなります。
図2 学生のいないコロナ禍の大学  ほぼ、万策尽きたかと思われたときに、思わぬ力を発揮してくれたのは、福島大学の学生たちでした。過年度の中心メンバーも同大学に入学し、コロナで自分たちの入学式すら中止になったにもかかわらず、学内でサポーターを募り、ZOOMで実行委員を集め、福島市施設とのパイプ役となり、情報を共有しました。一定数の学生を集めることも許可制になっていたので、サポーターグループと最初にミーティングを行ったのは、ほぼコロナ禍が始まって半年経った7月下旬のことでした。このような状況下でも、高校生の活動を支援しようとする姿に心を打たれました。プロジェクトにこうした「遊撃隊」は不可欠です。

2.高校生フェスティバル2020

図3 マスク以外は例年通りの準備光景 この年の高フェスは、計画通り進んでいれば、市内屋外の広場から、共催となった市の施設の屋外ワンフロアーを貸し切って開催することとなっていました。これによって雨天や風の心配もなくなり、閉じられた空間の中でこれまでにない盛り上がりが期待されていました。
 しかし、このコロナ禍での屋内はむしろ感染の危険性が増し、市民や高校生の声援などもリスクとなります。この時点では感染源となった施設や組織は、社会から強いバッシングを受けることとなり、「感染を出さないこと」が絶対条件でした。コロナのリスクを抱えてまで高フェス2020を開催する意味はあるのか、本当に迷いました。しかし、夏の期間を通して、施設側と実行委員会が協議を重ね、コロナの感染対策として施設のガイドラインの順守を徹底し、実行委員会も最大の感染対策をすることで、開催を決定しました。「やれない理由を考えるのではなく、どうしたらやれるか知恵を絞る」という、東北スクールの教訓がここでも生きました。
図4 屋内なら屋外でできないことも  高校生たちは、市の職員に指導を受け、体温測定、アルコール消毒、参加票の記入などのやり方を学び、本番に備えました。ステージは観客席と別室に設定し、ライブ中継することにしました。これにより、演者と観客が直に接することがないため、安全に思い切ったパフォーマンスを行うことができます。
 会場には、ありったけのイルミネーション「希望のヒカリ」を展示することにしました。室内の光をコントロールできるので、昼間からイルミネーションを楽しんでもらうこともできます。以前から課題となっていた、市内高校との連携も2年間の活動によって信頼を得られるようになり、美術作品などの展示物も増えました。

3.新しい高フェスを目指して

図5 実行委員長から檄が飛ぶ 本番を数週間後に控えた土日、前年や前々年とあまり変わりなく──全員がマスクをしていたのと、窓が開放されていたのを除けば──高校生が準備のために大学に集まってきました。高校生や大学生は、コロナ禍の生活にうまく適応していました。むしろ、コロナで直接会えなくなった分、大人や大学生への依存度は減り、自分たちでやらなければという意識の変化も見て取れるほどでした。
 本番の当日を迎えると、高校生たちはコロナ感染防止の最終確認の指導を施設スタッフから受けており、「希望のヒカリ」の組み立てもほぼ終わっていました。
図6 実行委員の決断力に感謝  高フェス2020が始まると、裏のステージでは一つ演目が終わる度に高校生が床をモップがけして念を押します。会場の施設には映画館も入っており、ちょうど大ヒットしたアニメ映画を見終えた若者たちが、続々と高フェス会場に立ち寄っていきます。つくづく、コロナが明けたところでこの光景を見たかった、そして、よくぞこのコロナ禍で開催を決断してくれた、と誇らしげな気持ちにもなりました。

 福島市高校生フェスティバルはコロナ禍でも2021、2022と続き、最近ではプロジェクションマッピングや街のミニチェア模型などのアトラクションも加わり、運営全体からもさらに高校生の自主性が育っているように感じられます。