高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

鈴木康広展「近所の地球」
2014.10.02
高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.061 特別号 教科書の作品に出会える展覧会>
鈴木康広展「近所の地球」
「ファスナーの船」鈴木康広作「高校美術2」P.02掲載

 鈴木康広(1979-)の大規模な個展である。水戸芸術館の現代美術ギャラリーに、これまでに制作してきた代表作および、本個展のために制作した新作が数多く展示されている。また、中心市街地活性化事業として水戸市街の24の店舗に各2冊ずつパラパラマンガを設置する、「パラパラマンガ商店街in水戸」も同時に開催しており、地域と連動した展覧会にもなっている。
 代表作の展示として「ファスナーの船」の関連資料があった。これは2002年に鈴木が飛行機で移動している際、上空より、水上を進む船の後ろに発生するハ字型の波(引き波、ケルビン波などと呼ばれる)を見て、そこから着想を得た作品である。このハの字に広がる波をファスナーが開かれる様に見立て、船をファスナーの持ち手と考えれば、地球をファスナーで開いているイメージにつながる、と鈴木は発想したのである。2004年にはファスナーの持ち手部分のラジコン船を制作し発表。このときは公園の池で実演した。2010年には実際の漁船を改造し、人間が乗船可能な全長約11mの船舶を現実のものとする。これは第1回瀬戸内国際芸術祭において、来場者を乗せて瀬戸内海を渡った。そのほかにも代表作として「遊具の透視法」(2001)「まばたきの葉」(2003)などが体験型のインスタレーションとして展示されている。
 また「パラパラマンガ商店街in水戸」は水戸市街を散策しながら、多彩なパラパラマンガを鑑賞できるのが特色である。鈴木のパラパラマンガはメタモルフォーゼによる形の変化の不思議さ、単純な動きの面白さ、短時間で完結するシュールな物語性、見たての妙など、さまざまな技法を一冊ずつ端的に凝縮してある。より多くの作品を見るほどに、「この手があったか!」と感心の度合いが深まるので、水戸市街を散策しながら、なるべく多くのパラパラマンガを鑑賞することをお勧めしたい。

(編集部)

 

<展覧会情報>

  • 鈴木康広展「近所の地球」
  • 2014年8月2日(土)~10月19日(日)

展覧会概要

  • 2001年に公園の遊具を用いた映像インスタレーション作品で脚光を浴び、その後、美術館での作品発表のみならず、地域や空間を意識した活動や奇想天外なアイデアを紹介する著作などを発表し続ける鈴木康広の大規模な個展。これまでの代表作と新作を一挙に体験できる内容となっている。

水戸芸術館ico_link

  • 所在地 茨城県水戸市五軒町1-6-8
  • TEL 029‐227-8111
  • 休館日 毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)

<次回展覧会予定>

  • ヂョン・ヨンドゥ 地上の道のように
  • 2014年11月8日(土)~2015年2月1日(日)

その他、詳細は水戸芸術館Webサイトico_linkでご覧ください。