高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

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ボストン美術館浮世絵名品展 北斎
2014.10.20
高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.062 特別号 教科書に関連する作品に出会える展覧会>
ボストン美術館浮世絵名品展 北斎
関連作品 諸国瀧廻り「下野黒髪山きりふりの滝」葛飾北斎作
「Art and You 創造の世界へ」P.43掲載

諸国瀧廻り「木曽路ノ奥阿弥陀ヶ瀧」/天保4年(1833)頃
William Sturgis Bigelow Collection
Photograph © 2014 Museum of Fine Arts, Boston. All rights reserved.

 葛飾北斎(1760~1849)は、江戸時代後期に活躍した絵師です。20歳前後で浮世絵師としてデビューし、90歳で亡くなるまで浮世絵の範疇にとどまることなく、さまざまな画風に挑戦し作品を描き続け、その作品は世界中で高い評価を得ています。
 生前は勝川春朗(かつかわしゅんろう)、戴斗(たいと)、為一(いいつ)、画狂老人卍などというように、画号を30回以上も変更したことが分かっており、今日、一般的に称される北斎もそのうちの一つなのです。そのほか、生涯で93回も転居を繰り返したという記録も残っており、強い個性の持ち主であったことがうかがわれます。この展覧会は、そんな北斎の作風の変化を年代順に概観できるのが特徴です。
 1820年頃、北斎は為一の号を使い始めます。為一期の北斎は大判錦絵の名作を多数制作しており、ここを北斎の絶頂期とする研究者もいるほどです。その頃の作品といえば、富士山の見える風景を大胆な構図で描いた「冨嶽三十六景」、諸国の橋をさまざまな視点で捉えた「諸国名橋奇覧」などが挙げられます。
 本展覧会ではそういった有名作品に加えて、その時期に描かれた「諸国瀧廻り」シリーズ全8枚も展示しています。日本全国8か所の滝をモチーフに、多彩な水流の描き分けに主題を置いて組まれたシリーズです。白、水色、紺という少ない色数で表現される水の描写は北斎ならではの非常に独創的なものになっています。教科書掲載の「下野黒髪山きりふりの滝」では木の根のように枝分かれしながら滝壺に至る水の流れの表情を、ここで紹介する「木曽路ノ奥阿弥陀ヶ瀧」では、円形の滝口より真っ暗な奈落へと落下していく水の様子を描き出しているのが特徴です。そのほかの作品でも垂直に落下する滝、落下距離の短い滝、岩伝いに滴り落ちる滝などというように、さまざまな滝における水の表情を見事に描き分けています。
 北斎は、それ以前に出版した「北斎漫画」(1814頃)などの絵手本帳や、晩年の傑作、「上町祭屋台天井絵《男浪図》《女浪図》」(1840年代中期)でも水をモチーフにした作品を描いています。水を描くことが北斎にとって大きなテーマであったことは間違いありません。

(編集部)

 

<展覧会情報>

  • ボストン美術館浮世絵名品展 北斎
  • 東京展 2014年9月13日(土)~11月9日(日)

展覧会概要

  • 葛飾北斎の約70年にわたる画業を約140点の作品で紹介する展覧会です。全体は3章構成になっており、第1章では111点の作品を年代順に並べて、北斎の業績全体を概観できるのが特徴。続く、第2章では摺物や版本、第3章では肉筆画および版下絵といった貴重な作品や資料を見ることができます。
  • ボストン美術館の浮世絵コレクションの多くは近年までほとんど公開されたことがなかったため保存状態がきわめて良好です。いま摺り上がったかのような美しい色彩も見どころのひとつです。

上野の森美術館ico_link

  • 所在地 東京都台東区上野公園1-2
  • TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
  • 休館日 10/20(月)、10/27(月)

<次回展覧会予定>

  • 進撃の巨人展
  • 2014年11月28日(金)~2015年1月25日(日)

その他、詳細は上野の森美術館ico_linkでご覧ください。