高等学校 美術/工芸

高等学校 美術/工芸

ペーパーシューズデザイン(第1学年)
2023.10.27
高等学校 美術/工芸 <No.007>
ペーパーシューズデザイン(第1学年)
大阪府立信太高等学校 中嶋彩

1.題材名

「ペーパーシューズデザイン」

2.目標

【知識及び技能】

 モチーフをよく観察し、構造や特徴を理解する。さらに靴の形やデザインをよく分析する。

【思考力,判断力,表現力等】

 靴の構造を理解し、製品の製作過程を模倣しながら、材料の特性や色や形を創意工夫して立体表現する。

【学びに向かう力,人間性等】

 全工程に計画性をもち、主体的に発想、工夫し、制作を進めようとする。

3.準備(材料・用具)

教師

第1次 課題説明のプリント、ワークシート、スケッチブック、鉛筆、台紙、参考作品
第2次 ワークシート、ダンボール、はさみ、カッターナイフ、カッターマット、ボンド、セロハンテープ、定規、メジャー、ビニール袋、参考作品
第3次 ワークシート、ボール紙、靴の材料、色画用紙、カラー波ダンボール、ハトメパンチ、ハトメ鋲、はさみ、カッターナイフ、ボンド、セロハンテープ、カッターマット、定規、台紙、参考作品
第4次 ふりかえりシート

生徒

第1次 普段使っている靴、教科書、筆記用具
第2次 普段使っている靴、教科書、筆記用具、参考資料
第3次 普段使っている靴、教科書、筆記用具、参考資料、靴の材料
第4次 普段使っている靴、教科書、筆記用具

4.評価規準

【知識及び技能】

 材料の特性を活かして表現の工夫ができている。道具を適切に使用し、素材を活かした表現ができている。

【思考力,判断力,表現力等】

 モチーフをよく観察し形や明暗の変化をとらえることができている。独創的な表現ができている。

【学びに向かう力,人間性等】

 興味関心をもって話を聞き、題材の意図を理解し、計画的、積極的に取り組もうとしている。表現意図に応じて新しい用具や材料の使い方を発見し、積極的に活用している。自己の作品を振り返るとともに、友人の作品の工夫を読み取り、理解しようとしている。

5.本題材の指導にあたって

◆生徒の実態と教材について
 これまでの課題の制作過程を観察してみると、奥行きを捉えた立体物の再現を苦手にする生徒が多く見られたように感じた。ものづくりにおいて、立体造形力は欠かすことのできない力である。今回の課題では、視覚から受ける様々な情報をキャッチする感受性とその情報をまとめて自己表現できる力を養いたい。
 「靴のクロッキー」では、靴の構造と特徴をしっかり観察して次の活動に生かす表現をさせたい。
 さらに「靴底の造形」では、素材を生かした立体的なデザイン、造詣表現を工夫し、レリーフ表現の面白さを感じてほしい。
 最後に「靴本体の制作」では、靴の型紙を取り、製品の製作過程を模倣しながら立体表現を創意工夫することで立体へと変換する技能を習得させたい。
 今回の題材のモチーフとして選んだ靴は、生徒にとっては身近なものであり、靴のもつ立体的構造が造形するときに理解しやすく、ファッションとしてもデザイン性があるため、興味や関心をひくものと考えて選んだ。画用紙やダンボールなどの身近な材料を使って自由に表現することで、表現の面白さ、夢中になってつくる楽しさを味わってほしい。

6.題材の指導計画

学習活動の流れ

指導上の留意点

評価基準,評価方法

第1次
導入
(1時間)

●靴のクロッキー

・クロッキーとはどのような技法か学ぶ

◎興味関心をもって話を聞いている。【授業の様子を観察】

●かたちをとる
・5分×6ポーズ(右側面、左側面、上、下、前、後)

・靴の奥行きの説明で靴箱を用いて靴が立方体に収まる事や側面、前面、上部からどのように見えるかを考えさせる。

▲モチーフをよく観察し形や明暗の変化をとらえることができているか。【クロッキー作品】

第2次
展開
(3時間)

●課題説明
・クロッキーした靴をもう一度立体に造形する


・靴底を型取り、ダンボールを並べて造形する


◆材料の特性を活かして表現の工夫ができているか。【作品靴底の状況】
▲独創的な表現ができているか。【作品靴底の状況】【完成作品】

●靴底のデザインと制作

・机間指導を積極的に行い、工夫している表現を取り上げて紹介し、独創的なデザインを促す。

第3次
展開
(6時間)

●靴本体の制作
・養生テープを用いて自分の靴から型紙を取る


・養生テープを工夫して使えているかを確認する。
・養生テープを靴からはがした後に、開いて型紙を取る作業は難しいので、ゆっくり丁寧に進めるよう心がける。


◎題材の意図を理解し、計画的、積極的に取り組もうとしているか。【観察法】
◆道具を適切に使用し、素材を活かした表現ができているか。【作品の過程】

●型紙で切り取った紙を組み立てる

・貼る順番や接着する場所によっては道具類の選択が必要なことに気付かせる。

第4次
まとめ
(2時間)

●オリジナルの装飾を施す

・素材や道具を使い分けて独創的な表現をする。

◎表現意図に応じて新しい用具や材料の使い方を発見し、積極的に活用している。【完成作品】

●鑑賞
・お互いの作品を鑑賞する
・各作品の工夫した点をふりかえりシートにまとめる

・生徒の作品をお互い鑑賞し、各作品の工夫した点をふりかえりシートにまとめるように指示する。

◎自己の作品を振り返るとともに、友人の作品の工夫を読み取り、理解しようとしている。 【ふりかえりシート】

◆は【創造的に表す技能】 ▲は【発想や構想】 ◎は【学びに向かう力,人間性等】

7.授業を終えて

 「靴のクロッキー」では、集中力を発揮する生徒が多く、自分の靴をよく観察して描くことができた。靴の制作につなげるために、布の縫い目や、パーツごとの形を意識させることに重点をおいたが、生徒は描くことに必死で立体制作に続くことまでは意識させることができなかった。平均的にクロッキーの枚数は4枚までが調度良いように感じた。
 「靴底の造形」では、板ダンボールと巻きダンボールの2種類を用意した。靴底は自由にデザインして良いことにしていたが、自分の靴を見本に制作していた生徒の方が多かった。中には、ダンボールの特徴である波上の模様やダンボールの厚みをうまく生かして靴底をデザインする生徒もいた。
 「靴本体の制作」では、型紙を取る作業に苦労した。今回は養生テープを自分の持ってきた靴に巻きつけ、それに切り目をいれて丁寧にはがし、切り込みをいれて開いて紙に貼り、開いたテープの形に紙を切り取って型紙を作る方法を用いた。養生テープを靴に巻きつける作業に生徒の興味をひきつけることはできたのだが、それが遊びにつながってしまったところもあったので、今度行うときは「テープを使い、型紙をとる」理由や、ねらいを生徒に示したいと思う。そして、型紙を利用しての本体作りでは、生徒によって完成の着地点が大き2つに分かれた。ひとつは自分の靴をそっくり忠実に制作する生徒と、型紙を元にオリジナルの構造を持った靴に変形させる生徒である。これはどちらも、目標である靴の構造を理解し、製品の製作過程を模倣しながら、材料の特性や色や形を創意工夫して立体表現するに当てはまると考え、同等の評価をつけた。
 この「ペーパーシューズデザイン」では、段階的な作業工程があるため生徒にとっては進めやすく、私にとっても教えやすい題材のように感じた。今後も今回の靴作りのような、1つの題材の中に平面・レリーフ・立体など、要素が分かれていて、最終的に総合して1つの題材となるような課題を行い、興味をひきつけながらも生徒の集中力を伸ばせるような授業作りをしていきたい。